
カリーン・マレック
ドバイ:オランダの大学と国連食糧農業機関(FAO)は、ナイル川流域の魚種と資源の識別と測定を改善するために、最先端の人工知能技術を使用する重要な新プロジェクトを開始した。
プロジェクトは、この地域における漁業コミュニティからの貴重なデータ収集を強化することで、持続可能性と食料安全保障の探求における重要なツールをもたらす可能性がある。
オランダのヴァーヘニンゲン大学・研究所(WUR)の支援によるこのプロジェクトは、1970年代にFAOが開始した数十年にわたる取り組みの最新版である。各国が漁業目的のために魚種をよりよく識別し、漁獲に関するデータ収集を強化し、漁業を改善できるように支援するものである。
FAOのシニア漁業資源オフィサーであるキム・フリードマン氏は、「プロジェクトは、漁業に何が起こっているかという長期的な傾向を時系列で理解するのに役立つ」と述べている。「当初は、世界の博物館の協力を仰ぎ、主に種の同定ガイドを作成していた。その後、ポスターやポケットガイドも作成し、人々が船に持ち運べるようにした」
このガイドは、人工知能に支えられた重要な新しい研究のおかげで進化した。世界の魚種の多くが減少していることから、この取り組みは海洋保全の取り組みに大きな変化をもたらす可能性がある。
魚種の特定は、かつては船舶の監視員によって行われ、非常に費用と時間のかかる作業であった。高度な技術を用いた種の追跡は、今や魚の鮮度さえも特定できるほど詳細なデータを提供できるようになっている。
WUR傘下のヴァーヘニンゲン海洋科学研究所の水産学者エドウィン・ファン・ヘルモンド氏は、漁業管理支援におけるAIなどの技術活用の可能性は非常に大きいと語る。
「専門家がいなくても、アルゴリズムによって詳細な漁獲情報を収集できるため、遠隔地でもデータ収集が可能になる」と、彼はアラブニュースに語る。「データは後から送信または収集するか、直接データクラウドに保存し、専門家が遠隔地から利用することが可能だ」
彼は、このような技術は、湾岸地域が直面している大きな課題である長期的な食糧安全保障や、十分なデータの収集から始まる天然資源の持続可能な管理にも大きく貢献すると考えている。
「利用可能な資源、この場合は地元の魚の資源について良い評価を行えるようにするには、良いデータが必要だ」と彼はいう。「これには、魚種ごとの詳細な漁獲情報、漁獲重量、体長頻度などが含まれる」
「これらの変数が、資源評価モデルのインプットとなる。これらのモデルによって、過剰漁獲の危険のない、持続可能な漁獲量を計算することができるのだ」
FAOは現在、より多くの業界関係者がこの技術の恩恵を受けられるよう、よりアクセスしやすくしようとしている。それは、ひいては同組織のデータセットを拡大することにつながるだろう。それぞれの種に関する包括的な情報は、種とその場所を特定し、変化を認識できるアルゴリズムを構築するために使用されるだろう。
このようなアルゴリズムを開発した後は、ユーザーは特定の種を検索できるアプリを利用できるようになる予定だ。アプリでは、画像から、種の特徴や食料価値、その他の漁業関連データなどの情報を引き出すことが可能になる。
「将来的には、誰でも、たとえ漁師でも、魚の写真を撮って送信し、種の同定や、潜在的には魚の大きさなどを含めた指標を得ることができるようになるだろう」と、ヘルモンド氏は述べている。
ナイル側流域における同プロジェクトは3年から5年間継続される予定である。言語、レポート形式、データセットが望ましいセキュリティレベルを満たすかどうかなど、各国の要件も検討する予定だ。
このシステムは、ヨーロッパの川や湖で行われているレクリエーション用の釣魚識別の取り組みを反映している。これらのコミュニティが釣果を識別できるシステムに出資し、コミュニティ間で適切な行動規範を策定している。
「これは、さまざまな川や湖の水系がどの程度良好で、どの水系にふ化場の魚を増やす必要があるのかを理解するためにフィードバックされる」と、フリードマン氏は語る。
「システムにより、過去に連携できなかった人たちが、連携できるようになる」
成功の鍵は、できるだけ多くの関係者によるデータ収集である、とフリードマン氏は言う。その結果、関係者全員が最高のアルゴリズムを手にすることが可能になる。
「また、ナイル川周辺の写真を集めて、特定の場所で、特定の魚が良いサイズと状態で釣れることを伝えることもできるようになるだろう」と、彼は付け加えた。「これは、持続可能性の問題や市場機会を探すことにもつながっている」
Google、非営利の環境デジタルマッピング団体スカイトゥルース(SkyTruth)、自然保護団体オーシャナ(Oceana)のコラボレーションによるグローバル・フィッシング・ウォッチ(GFW)プラットフォームは、AIと衛星データを組み合わせて漁業活動を観測する最初の試みの1つだった。
また、この技術は、淡水資源の減少に対処する取り組みにも希望をもたらす。この地域の淡水資源は世界でも最も少ない水準にあり、それら主に地下の再生不可能な貯水という形で存在している。FAOによると、淡水資源は過去40年間で60%減少しており、2050年には50%減少すると予想されている。
持続可能な漁業・養殖業を推進し、その成長を確保するための国際的な政策づくりに、テクノロジーの進歩が主導的な役割を果たすことが期待されており、人工知能は、今や地球規模の環境問題であるこの問題の解決に役立っているのである。収集されたデータにより、魚介類の小売業者や顧客は、自分たちが販売・消費しているものが持続可能かどうかをより意識することができるようになる。
イノベーションはまた、農業と農業食品のバリューチェーン全体をより魅力的なものにし、ビジネスと雇用機会を創出し、この地域が食糧安全保障、持続可能な農業、国連による持続可能な開発目標(SDGs)の目標を達成するのを助ける鍵となる。
FAOのク・ドンユ事務局長は、今回の共同プロジェクトが、その実現に向けた重要な一歩になると信じている。
「FAOとWURの間の集中的かつ強化された枠組みにより、我々のパートナーシップは、持続可能な開発目標のための2030アジェンダの達成に向けて、より大きな影響を与えるための努力と資源をよりよく調整することが可能になる」
このナイルプロジェクトに加え、FAOとWURは漁業・養殖業のバリューチェーンの持続的発展に関連する他のいくつかのイニシアティブでも協力している。
例えばアフリカ、カリブ海、太平洋諸国では、FISH4ACPと呼ばれる共同プロジェクトがマルチステークホルダー・パートナーシップ(MSP)に専門知識を提供し、食糧安全保障と栄養増産、繁栄、雇用創出に貢献している。
先月には、湾岸諸国の養殖業の49%を担うサウジアラビア当局が、国家経済の多様化と食糧安全保障への対応という幅広い目標の一環として、漁業のための地域センターの設立に取り組んでいることを発表した。
フリードマン氏は、このような取り組みが地域内外に急速に広がる可能性があると指摘する。
「過去を振り返ってみると、漁業を理解するためにまとめられた地域別ガイドはすべて、特定の地域から始まり、今では世界的なものとなっている」
「ナイル川だけでなく、近海漁業や遠洋漁業などでも、AIが提供してくれる機会をもとに、同じようなことが起こるのではないだろうか」