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トルコはNATOの北方拡大に反対 6月の首脳会談を前に対立深まる

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20 May 2022 03:05:25 GMT9
20 May 2022 03:05:25 GMT9
  • トルコはフィンランドとスウェーデンがテロ集団をかくまっていると非難。
  • アナリストによると、エルドアン大統領の個人的な懸念は、経済が悪化する中で2023年に迫った選挙を前に権力を維持することだ。

メネクセ・トキャイ

アンカラ:フィンランドとスウェーデンの加盟交渉を開始するというNATOの決定はヨーロッパの安全保障構造における過去数十年で最大の変化であるが、それに対してトルコが反対したことで、北欧2カ国の加盟を承認するためにトルコが引き出そうとすると考えられる譲歩について議論が巻き起こっている。

NATOに加盟しようとする国は加盟国30カ国の総意による承認が必要であり、次回のNATO首脳会議は、6月下旬にマドリード開催される予定だ。

トルコのエルドアン大統領は、1952年以来NATOに加盟し、同盟第二位の軍事力を持つトルコは、フィンランドとスウェーデンの加盟を支持しないと主張し、両国がテロ集団をかくまっていると非難している。

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟申請について、トルコは同盟国に対しノーと言うつもりだと、大統領が木曜日に自身のツイッターアカウントに投稿したビデオで述べた。

ストックホルム大学トルコ研究所のポール・レビン所長は、「フィンランドとスウェーデンの『歴史的』軍事同盟加盟への期待に冷水を浴びせたこの動きは、実は驚くべきことではない」と指摘する。

トルコは以前から、米国やEUからテロリスト集団に分類されているにもかかわらず、非合法組織であるクルディスタン労働者党の存在に目をつぶっているスウェーデンの政策を批判してきた。

しかしレビン氏は、エルドアン大統領の求める見返りには複数の解釈が可能とみている。

「スウェーデンの対PKK政策とシリア北部のクルド人YPG分派は、トルコの与党政府だけでなく、国家安全保障体制にとっても長い間懸案事項であった。その点で、この重要な問題をめぐる意見の相違は、予想できることだった」と彼はアラブニュースに述べている。

フィンランドとスウェーデンは、シリア・クルド人武装勢力に対するシリアへのトルコによる越境作戦をめぐり、2019年から武器禁輸を課している。スウェーデンの高官とYPG指導者の接触をトルコは以前から非難している。

しかし、レビン氏は、トルコのこうした決定の背後には、常に国内政治的な側面があるという。

「エルドアン大統領の個人的な関心は、経済が悪化する中で、2023年に迫った選挙を前に権力を維持することだ」と彼は言う。

「西側に強い姿勢を示すことは、国民にアピールする効果があると考えられ、民族主義的動機を必要とする国民の支持をさらに強固にする可能性がある」

しかし、レビン氏は、トルコがNATO拡大に反対することで、10月にトルコが要求したロッキード・マーチン社のF16戦闘機40機と、戦闘機用の近代化キット約80機の購入を、アメリカは引き続き承認しないことになるだろうとみている。

「トルコ国内に(ロシア製の)S-400防衛システムが存在するため、相互運用性の問題からF-35機の取得は不可能だ。他の近代化キットの売却も、トルコの脅迫に対する譲歩と見られてしまうので、米国議会が承認できるかどうかわからない」と彼は述べた。

水曜日、スウェーデンのピーター・フルトクヴィスト国防相はワシントンで米国のロイド・オースティン外相と会談し、トルコのメヴルット・カヴソグル外相はニューヨークで米国のアントニー・ブリンケン外相と会談した。

また、カヴソグル外相は最近ベルリンでスウェーデンおよびフィンランドの外相と会談した。

「外交的解決に向けた交渉は進んでいる」とレビン氏は言う。

「しかし、9月の議会選挙を前に与党社会民主党を窮地に追い込むような人権に関する何らかの公的譲歩をスウェーデンが(するとは)思わない」と彼は述べた。

スウェーデンには現在6人のクルド人国会議員がいる。

「トルコでテロ罪に問われた33人の身柄引き渡しによってクルド人の大義をあきらめることは、クルド人ディアスポラを多く抱えるスウェーデン政府にとって好ましい事ではない」とレビン氏は付け加えた。 

トルコは、北欧2国が自国内のクルド人武装勢力への支援をやめ、PKKメンバーと接触することを控え、トルコへの武器売却の禁止を解除するよう求めている。 

ワルシャワの機関NEOŚwiatの行動分析ディレクターであるカロル・ワシレフスキー氏は、トルコは、自国の安全保障上の利益、特にPKKとYPG問題に関して、真剣にトルコ側の言い分を尊重すべきであることをNATO同盟国に示したいのだと言う。

「トルコは長い間、そこにはある程度一理あるのだが、同盟国の安全保障上の利益に対するアプローチが、同盟国の安全保障に対するトルコの貢献と呼応していないという感覚を持っていた」と彼はアラブニュースに語った。

 

しかし、ワシレフスキー氏は、米国とNATOのストルテンベルグ事務総長の支援のもと、トルコ、スウェーデン、フィンランドが交渉すれば、この問題は解決すると考えている。

「トルコを制裁する国の加盟には同意できない というエルドアン大統領の発言は、妥協できる領域がそこであることを示しているのかもしれない」と彼は話した。

「トルコは間違いなく強硬な交渉に出るだろうが、それが強硬な拒否権発動につながるとは考えにくい。トルコは、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟がもたらす利益をよく理解しており、拡大を阻止すれば、他の加盟国から甚大な圧力がかかることを承知している。そして、トルコは西側諸国から強い反発を受けることは避けたいのだ」

ワシントン研究所のトルコ研究プログラムのディレクターであるソナー・カガプタイ氏は、北欧のNATO拡大に対するトルコの主な反対意見は、スウェーデンの既存のPKK資金調達ネットワークと、スウェーデンのYPG関係者との公的繋がりに根ざしていると考えている。

「非公開の話し合いの後、スウェーデンはトルコ側の懸念に配慮した措置を取ることができるだろう」と彼はアラブニュースに語った。

ストルテンベルグ氏はまた、トルコの懸念は加盟プロセスを遅らせない方法で対処されるだろうと話した。

エルドアン大統領のNATO拡大に関する強硬なレトリックには、いくつかの理由があるとカガプタイ氏は考えている。

「彼は、具体的な成果を得るために、スウェーデンを公然と困惑させようとハードルを高くした」とカガプタイ氏は言った。

「北欧の拡大に対してNATO内部で拒否権を発動すれば、ロシアのプーチン大統領は大喜びするだろうというロシア側からの見方もある。

「米国に対しては、エルドアン大統領は、バイデンがトルコの防衛輸出に対する異議を解除するようにボブ・メネンデス上院議員を説得すれば、NATO拡大に対する異議を解除する可能性があると示唆している」とカガプタイ氏は付け加えた。

米国は、トルコの反対に対応するため積極的な外交を続けていると、サリバン米国国家安全保障顧問は水曜日に述べた。

「トルコの懸念は解決できる。フィンランドとスウェーデンは、トルコと直接交渉している。しかし、私たちもトルコと話し合って手助けしている」と彼は述べた。

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