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トルコが難民に新たな制限を導入

トルコが本国送還した難民の数は今年70%増加した。最新のデータによると、約3万人の非正規移民が送還された。(ロイター/ファイル)
トルコが本国送還した難民の数は今年70%増加した。最新のデータによると、約3万人の非正規移民が送還された。(ロイター/ファイル)
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13 Jun 2022 08:06:50 GMT9
13 Jun 2022 08:06:50 GMT9
  • トルコは、イード・アル・アドハー期間中にシリア人が本国に行くことを禁止し、地域に住む外国人の人数に制限を導入した

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコは、社会的不満が高まる中、シリア人の国内移動を制限し、もうすぐ始まるイード・アル・アドハー休暇中に彼らが本国に行くことを禁止する新たな施策を導入した。

トルコのスレイマン・ソイル内相は、土曜日に首都アンカラで行われた記者会見において、移動制限に関する新たな注意事項を発表した。

7月1日から、各地域に居住できる外国人の割合は25%から20%に引き下げられ、1200地区では居住ができなくなる。

アンカラの難民・移民研究センターのメティン・コラバティル所長によると、シリア人は工業地帯に近い地区に住むことを好み、そこで生活のために低賃金で大半は違法に働いている。

「もし当局が彼らの居住に上限を設定したら、人権侵害であるだけでなく、彼らが重要な労働力として現在働いている工業拠点に影響を与えることになる」と、同所長はアラブニュースに語る。

トルコは400万人以上の難民を受け入れており、そのうち370万人がシリア人だ。

ベルリンのハーティースクール基本的権利センターに所属する研究者ベグム・バスダス氏は、これらの施策はいずれも移動管理とは認めることができないと考える。

「当局が導入した新たな制限は、状況がコントロール下にあると国民を欺くためのその場しのぎの対応であることに変わりはない」と、彼女はアラブニュースに対し語る。

「シリア人にいずれは帰って欲しいのであれば、政府と野党は国境を越えた関係を禁止するのではなく促進すべきだ。トルコにいるシリア人の半数は若者で、その多くはトルコ生まれだ。トルコで育った彼らにはシリアとの実際のつながりや記憶はない」とバスダス氏は言う。

「当局が『自主帰還』を真剣に考えているのであれば、シリアが安全に帰還できる場所になるまでは、人々が本国に行ってトルコでの生活に戻ることができるルートを確保するはずだ。トルコにいるシリア人の大多数は帰る場所がないと繰り返し言っており、今回の禁止はさらに可能性を制限してしまう」

国内で経済問題が高まり選挙が近づく中、シリア難民に対する暴力事件がエスカレートしている。最近、難民が子供を誘拐したという地元の噂をめぐり、70才のシリア人女性がトルコ人男性に顔を蹴られた。

難民たちは、過熱した国内政治のスケープゴートにされることが多くなり、トラブルを避けるために大抵は目立たないようにしている。

政府は非正規移民を管理する独占権を持つが、コラバティル所長によると、新たな難民申請者がトルコ当局による登録で問題に直面しているという報告が増えている。当局は、彼らが子供を学校に通わせることや保健サービスを利用することを認めないのだ。

「彼らは目立たないように努めている。難民が商品のように扱われるのなら、一部の地区で人数の上限を引き下げたところで、統合の問題をある地区から他の地区に移すだけだ。国内での強制移住のようなものだ」と同所長は言う。

シリア人が仕事を奪い賃料を上げていると非難するトルコ人もいる中、選挙を前にした一部の極右政治家は、扇動的な反難民レトリックを駆使して人々の鬱憤を利用することで政治的利益を得ようとしている。

トルコが本国送還した難民の数は今年70%増加した。最新のデータによると、約3万人の非正規移民が送還された。しかし政府は難民に対してよりソフトなアプローチを選択し、100万人のシリア人の自主帰還のための基盤を準備している。

これまで、50万3150人ものトルコ在住シリア人が、シリアの安全が確保された地域に自主帰還した。トルコは、帰還のための条件整備の目的でシリアのイドリブ県に家を建設しており、その数は5万9000戸に達した。

イスタンブール政策センターに所属する研究者フリードリヒ・プットマン氏は、難民を様々な地域に分散させることには何の問題もないと考える。

「実際、各地方の社会サービス負担を地方当局の能力に応じて調整できるようになり、社会的・経済的統合を促進するかもしれない。例えばドイツでは、難民申請者を到着した時点で各地域の人口規模や税収に応じて国内に分散させるという政府の公式計画がある」と、同氏はアラブニュースに語る。

「トルコでは対照的に、シリア難民は既に知り合いがいる地域か、就業機会や手頃な住宅を見つけられる地域に移住する。そのためシリア人がかたまって住むことになり、実のところ、国によって見捨てられたと感じている地元のトルコ人たちの気に障っていることも多い」と同氏は語る。

しかし、この状態を解消するために、トルコに10年間暮らした難民たちを家や仕事や社会的環境から強制的に追い出すことは道徳的にも実際的にも賢明ではないことにも同氏は同意する。

「出て行けと言いつつ、代わりに行く場所の選択肢は与えない。多くのシリア難民はトルコ人が住みたがらない老朽化した建物に住んでいるため、国から追加の支援を受けない限り他の場所には住めないかもしれない。シリア人たちは現在の職場を離れ新しい地域で新しい仕事を探さなければならない。それはシリア人たちの生活条件だけでなく各地域の経済に負の影響を与え、結果としてトルコ人との社会的緊張を低減するどころか高めてしまう」

プットマン氏は、今回の新しい施策のもとでは、シリア難民は時間をかけて築いてきたトルコ人との重要な社会的つながりを失ってしまうということも強調する。特に、最も地域に溶け込んでいる、学校に通う子供たちはそうだ。

「最後に、それは難民たち自身の権利を完全に無視することになる。要するに、ソイル内相が取り組もうとしている社会問題は現実のものだが、彼が提案した解決策は社会的統合を促進するどころか阻害する可能性が高く、難民の権利を侵害することになる」と同氏は語る。

バスダス氏の考えでは、今回の施策は、移動管理についての誤った理解を生み出すことで、国民の緊張を緩和し、難民や移民を脅して彼らの弱さをさらに利用しようとしている。

「しかし、強制的にシリアに帰還させられた人々の多くは非正規ルートでトルコに戻り登録されないため、非公式経済の搾取がさらに深まるということも、国は知らなければならない」と彼女は言う。

新たな施策のもとでは、タクシー運転手は異なる都市に移動する際に乗客に公的書類の提示を求めることが許可される。最近、不法移民がトラックから飛び降りて異なる都市で地元の人々に紛れ込んでいる動画が公開され国民の非難の声が高まっているのだ。

「書類を確認する治安部隊としてふるまう権限をタクシー運転手に与えることは許容できない。移動の自由は望ましいが、当局は『安全』を確保する権利を一般市民に移譲することはできない。そんなことをしたら、難民にとってだけでなくトルコの全国民にとっても壊滅的な結果を招く可能性がある」とバスダス氏は言う。

イード・アル・アドハー期間中に家族に会うためにシリアに行くことの禁止は、専門家からも批判されている。

「シリア人が数日間安全にそこへ行けるとしても、そこに安全に住むことができるとは限らない。アサド体制のせいで、彼らの大半にとってそれはまだ無理だ。だから、移動制限と人口操作ではなく、現実に実行可能な政策を考える方が賢明だ。それは、トルコ人との社会的つながりを強化し、全員に職を確保することで、シリア人たちが今いる場所での統合を促進することだ」とプットマン氏は言う。

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