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断食明けのイード・アル=フィトル、24時間の外出禁止でもサウジの人々は新たな祝い方を模索

22日、リヤドのショッピングモールにある店舗。新型コロナ感染症の蔓延阻止のため取られた予防措置により、商店街も今年は例年の喧騒が見られない。(AFP)
22日、リヤドのショッピングモールにある店舗。新型コロナ感染症の蔓延阻止のため取られた予防措置により、商店街も今年は例年の喧騒が見られない。(AFP)
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24 May 2020 08:05:52 GMT9
24 May 2020 08:05:52 GMT9

ルバー・ウバイド&アミーラ・アービド

  • 今年のイードは、ひっそりとした街の中で、美容院も営業を停止したまま、チョコレートショップに並ぶ長蛇の列もなく迎えられる

【ジッダ】サウジアラビアではどこの家庭でも、断食明けを祝う祝祭イード・アル=フィトル(以下イード)を巣ごもり状態で迎える。サウジは目下24時間の外出禁止となっているため、例年なら1年でいちばんにぎやかな夜となるはずが、ひっそり閑としている。

今年のイードは、静まり返った街の中で、理美容店も営業を停止したまま、チョコレートショップに並ぶ長蛇の列もなく迎えられる。

数週間前にサウジ政府は、5月23日から27日までの祝日期間中、全土を24時間の外出禁止とすると発表した。新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑えることが目的だ。

例年、イードの祝祭はイスラム暦第9月のラマダーンが終わり、第10月のシャウワールが始まる目安となる新月が初めて確認されると開始される。

その夜は一年で最もにぎやかだ。通りは人であふれ、ショッピング街はドレスや靴やアクセサリーを閉店ぎりぎりまで探し求める買い物客で埋まる。スイーツ店はすし詰め状態となり、美容院や理容店は終夜営業をしてイード初日をめかしこみたい顧客の要望に応える。

今年は、新型コロナ感染拡大のためサウジ国内のモスクが閉鎖されているため、イードの礼拝集会もない。最近の発表で、イードの歌唱については近隣のモスクより伝えることが許可される見込み。またサウジの大ムフティー(イスラム法学者)は、イスラム教徒はイードの祝祭を家でおこなえる、とした。

19歳の大学生、ジャナー・バーシュラーヒールさんも、母親のすすめもあって、家族といっしょに近くのモスクから聞こえてくるイードの歌唱に耳を傾け、唱和するつもりだ。

通例、イード中の一日は次のような経緯をたどる。まず沐浴し、新しい清潔な服装に着替え、断食月が明けたことのあかしとして軽食を口にし、家族とともにモスクへ礼拝に連れ立つ。そこで近隣の人たちや親族友人と顔を合わせ、「イードおめでとう」のあいさつを交わす。

イード・アル=フィトルは、「断食明けの祝祭」の意だ。断食明けの朝食を初日に摂るのは不可欠だ。この日は一族の中で最も高齢の者のいる家に家族みなで集い、家族全員が一堂に会するにはうってつけの日となるわけなのだ。

バーシュラーヒールさんは言う。「友だちや家族といっしょにイード初日の朝食を摂れないのは残念です」

家同士で訪問しあうのが一般で、各家庭の子供たちはチョコレートと、お年玉に相当する「イーディヤ」をたんまりともらっておニューの服を着て駆け回る。

レストランに繰り出す家庭もあるし、ジッダのような海沿いの街ではまず人は海へ出かける。

パンデミックが続く間、こうした祝い方は一切できなくなってしまった。ウイルスのためイードも形なしなのだ。

このため、今年のイードが残念なかたちで過ぎてしまわぬよう、各自で新案をめぐらせている。

ソーシャルメディア上では、いかに創意工夫をこらして「巣ごもりイード」を過ごすかについて、いくつもの投稿やメッセージがここのところ引きも切らず拡散している。自家製の贈り物セットやら、飾りつけ、ゲームからホームメードのおもちゃにいたるまで、さまざまな提案がなされているところだ。

とはいえ、今年のイードは例年のお祭り以上の興趣に富んだまたとない体験となりそうな家庭もある。

ジッダ在住のアーマール・アッ=シュバイティーさんは言う。「イードのことでこれほど頭を使ったのは初めてです。こんなに没頭したこともないですが、今は新型コロナで暗い雰囲気ですからこれ以上の気鬱はごめんなんです」

シュバイティーさんは家族といっしょにイードの飾り付けを手作りし、とりどりの朝食メニューも用意した。イード用のチョコレートはネットで発注した。

「家族への贈り物もネットで注文しました。自分用には新しいパジャマ。こんなことは初めてのことですし、今までにないイードの気分です。いつものように海にも行けないし、レストランでのディナーもお預けですから、せめてもの埋め合わせがしたかったんです」

シャイマー・アッ=シャイフさんもプランを立てている。ボードゲームをしたり、映画を何本も観たり、昔の家族写真をひっくり返したり。

シャイマーさんはあくまで楽観的だ。「私のいちばん大切なものは家族。家族といっしょにいられさえすれば、何の問題もないんです」

リヤド出身のマラクさんも、きょうだいたちと簡素な祝いのしたくをするといったように、似たような計画だ。

「家族の一員として、今年のイードはいつになくわくわくする感じがしています。例年ですと見た目をよくしたり着飾ったりといった方向に注意が向いていたのですが、ロックダウンの今年のイードは、家庭でほんもののイードらしいムード作りに専念できているからです」。マラクさんは本紙にそう語る。

「私のきょうだいたちは親類に贈るギフトを手作りしました。ロックダウン中で訪ねて行けませんから」

ロックダウン中だからといってマラクさんの日常に大きな変化があったわけでもないが、退屈しのぎには苦慮しているとし、頭の中はともかく清潔を心がけることでいっぱいだという。「ほんとに憂鬱な気分になります」

アブドゥッラー・アル=ムフスィン氏が立てているプランは、新しいイード用品一式を堪能し記録することのみだ。「友人と僕とでイード用に着飾って、屋上で撮影会としゃれこむつもりです」と本紙に語る。

花卉販売店を営むハディール・イズミルリーさん(30)は、イードの際には新しい衣装を買いそろえるという伝統にのっとり、ネット購入したという。

「新しいものを買うと気持ちもいい方向に変わるように思います。家から出られなくてもイードの気分だけは感じていたいですからね」

「ロックダウン中だからってイードを祝っちゃだめだとは思いません。ふだんとは違う方法でイードを祝おうと思っているだけなんです」

サウジ国内の外国人居住者も、今回のロックダウンと航空便の休便のあおりを受けている。従来なら、イードのような大事な機会には帰国して家族らと過ごすのが習いだったからだ。

リヤドに単身赴任しているバーレーン人のハムザ・アル=キンディー氏は、仕事の都合でサウジに留まらざるをえなかった。

しかしそのキンディー氏も、イードを楽しむプランは温めている。「いま観ているアニメシリーズは、イードまで観終えるのをお預けにしています。もう待ち遠しいったらないですよ」

アル=ホバル在住のヨルダン人、ムジャーヒド・ジュバーラート氏も言う。「妻と、2歳になる娘と私とで自宅でイードを祝います。カアク(パレスチナ地方のデーツの入ったリング状のクッキー)も作るつもりです」

移動禁止が発令される以前に家族の待つナジュラーンの家に戻ることのできたムフスィン氏は語る。「ふだん通りのイードというわけにはいかないでしょうが、家族が一堂に集まるいつも通りのイードにはなるはずですよ」

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