ナジャ・フーサリ
ベイルート:レバノンの夏の暑さの中で何週間もくすぶり続けている火災により、ベイルート港にある数千トンの穀物を蓄える巨大なサイロが崩壊の危機にある。
金曜日に火災が発生した後、サイロから炎と濃い黒煙が上がるのが見えた。
この火災を受け、レバノンのナジブ・ミカティ首相は「安全を守り命の危険を避けるため、作業員や民間防衛隊員・消防隊員は現場に近づかないように」と警告した。
最近の高気温によりサイロ内の小麦が発酵したことで数千トンの穀物が発火したものとみられる。このサイロは、大きな被害を出した2年前のベイルート港爆発事件に耐えた二つの巨大建造物のうちの一つだ。
内務省・経済省・公共事業省・環境省による報告は、「サイロの左側の一部に崩壊の危険性がある」と警告している。
サイロの危機に、港湾労働者や施設管理者の間で危機感が高まっている。
現場の煙と炎は、2020年8月4日にこの港を襲い大きな被害を出した爆発の痛ましい記憶も呼び起こす。
バッサム・マウラウィ暫定内務相は消防隊と民間防衛隊に対し、この小麦サイロの「冷却」をただちに開始するよう求めた。
サイロに蓄えられた最後の小麦が燃えるのをレバノン国民が為す術もなく眺めている間、国中の製粉所やパン屋はレバノンピタパンを作るのに使われる助成付き小麦粉の深刻な不足に悩まされている。
アミン・サラム暫定経済相によると、今後10日以内に5万トンの小麦がレバノンに到着し、6週間分の供給が確保されるという。
パン屋経営者連合によると、11ヶ所ある製粉所のうち7ヶ所が、助成付き小麦が尽きたため閉鎖している。
また、レバノンには50万人以上の観光客が来ており、パン供給に対する負担を増やしているという。
一方、今回のサイロ火災は、ベイルート港爆発事件の被害者家族と政府機関の間の一触即発の緊張を復活させた。
政府機関は今年4月、サイロが周辺地域に与える危険性を理由に取り壊しを勧告した。
ところが、技術者組合によると、被害者家族や活動家が「レバノン史上最大の爆発事故の主要なランドマークの一つ」を破壊することになるとして取り壊しに反対した。
サイロは「国民全員に影響を与えた犯罪の証人として立っている」という。
技術者組合は「被害を受けたサイロの補強」作業を呼びかけた。
専門家は、火はやがて消えるが、水を使って消火しようとすると発酵反応を加速する恐れがあると警告している。
政治・治安・司法・軍の当局者らは、ベイルート港爆発事件について互いに非難を続けている。
この事件の司法調査は、政治介入や、調査を率いるタレク・ビタル判事に対する訴訟のため、昨年11月以来停止している。
元国会議員や閣僚を含む被告側は、ビタル判事を裁判から外すよう求めている。
木曜日に安全保障理事会に提出された報告の中で、ジョアンナ・ヴロネツカ国連レバノン特別調整官は、「ベイルート港爆発事件に関連した司法措置が進展しておらず、被害者家族をさらに悲しませている」ことを強調している。
同調整官は、「司法措置の進展を妨げている障害を取り除き、包括的かつ透明な事件調査を実行すること」を求めている。