
ハゼム・バロウシャ
ガザ市:ガザのシェイク・ラドワン地区にある野菜市場に荷馬車が到着すると、行商人や買い物客がどっと押し寄せる。イスラエルに包囲されたガザ地区では数年来馴染みのの光景だ。
だが、この光景も過去のものになるかもしれない。
ガザのロバ商人によると、イスラエルは昨年12月から、ガザ地区の人々がロバを輸入することを禁じている。
40歳のロバ商人、ハニ・アル・ナディ氏は、イスラエルが彼や他の商人がガザへ動物を輸入することを禁じていると語った。
「12月に、エレズ検問所のイスラエル当局から、ロバの輸入許可証を発行しないという通達を受けました」とアル・ナディ氏はアラブニュースの取材に答えて話した。
アル・ナディ氏によると、イスラエルの非政府組織がガザではロバが虐待されており、イスラエルから輸入された後にロバは殺され、皮はエジプト経由で中国に売られている、と主張している。
イスラエルの非営利動物保護団体、Starting Overのオフェル・ストリッチ氏は次のように述べた。「ガザ地区の複数の情報源から、イスラエルから入ってくるロバはエジプトに送られ、そこで殺されて皮は中国に売られていると聞いています」
「ガザを経由して、イスラエルからエジプトへ輸出されるロバの頭数が突然増えたことに気づきました」
アル・ナディ氏はこの話を否定して、以下のように話した。
「私たちにはエジプト経由で何かを輸出するなどということはできませんし、ガザではロバを殺してもいません。このような主張がなぜ出てくるのか、理解に苦しみます」
アル・ナディ氏によると、ガザ地区へ輸入されるロバの唯一の供給元はイスラエルで、高騰する燃料価格を背景に、ロバは安価な輸送手段として利用されている。
パレスチナの人々は、ロバに引かせた荷車で農作物を市場まで運んだり、通りで売ったりしている。
33歳のマフムード・アル・ライ氏は話す。
「15年間、ガザの通りでロバに荷車を引かせて野菜を売ってきました。今のロバはこの仕事を始めてから買った2頭目です」
アル・ライ氏は1か月前に新しいロバを買いたいと思ったが、イスラエルが動物の輸入を禁止した結果、ロバが値上がりしていると聞いて断念した。
ガザ地区でのロバ1頭の値段は平均約200ドルだったが、価格は今では約800ドルに跳ね上がっている。
ガザでは、仕事用にトラック、自動三輪車などの昔ながらの交通手段が用いられてきたが、燃料価格が1リットル当たり2ドルまで上昇したことで、一部のドライバーはロバや馬を使うようになっている。
47歳のラミ・アル・シャンダグリ氏は以下のように話した。
「ガザでは燃料価格が高く、経済状況も悪いため、得られる利益はごくわずかになってしまいます。その点、ロバは餌や世話にかかるコストも非常に低いため、最良の輸送手段なのです」
「ロバの餌代は1日当たり5シェケル(1.5ドル)以下で、怪我をしても海で泳げば治ってしまいます。しかも、平均すると20才まで生きるのです」とアル・シャンダグリ氏は説明した。
ガザ地区の輸入品はイスラエルが管轄するケレム・シャローム検問所を通るため、イスラエル当局は品目の大半を管理することができる。
エジプトも、一部の商品がサラエルディン検問所を通過してガザ地区に入ることを許可している。
アル・ナディ氏によれば、以前はガザ地区へ年間500から600頭のロバが輸入されていたが、今年の初め以来、新しくガザに入ったロバはいない。
「今は、ロバに関連する仕事はありません。この件が解決するまで、父が牝牛を育てるのを手伝おうと思っています。イスラエルは、私の入国許可証も一時停止してしまったので」と彼は話した。