
ジョナサン・ゴーナル
ロンドン:9月13日、22歳のイラン人女性マフサ・アミニさんが、イスラム共和国が課す女性の厳格な服装規定に違反したとしてテヘランで逮捕された。ガシュテ・エルシャド(「ガイダンス・パトロール」、道徳警察)に拘束された彼女は頭部に致命傷を負って昏睡状態に陥り、3日後に病院で死亡した。
彼女の死をきっかけにイラン全国で何百ものデモが発生し、多くの男女が街頭に繰り出した。女性たちは着用を義務付けられているヒジャブを公然と外し、抵抗の意志を示すために公衆の面前で自分の髪を切った。
先日発表されたトニー・ブレア・グローバル・チェンジ研究所(TBI)の新たなレポートは、数万人のイラン国民を対象とした2回の連続した世論調査の結果から、ヒジャブ拒否の広範な広がりは体制転換を切望する全国的な声の象徴に他ならないと結論している。
イランでは「前例のない世俗化」が広がっており、TBIは「イラン社会はもはや宗教的ではない」と結論している。
「現在我々が目にしているデモは、その持続期間と規模において前例のないものだ。しかし、2017年に現れた騒乱の傾向からの連続性もある。2017年以降、イラン国民は一貫して街頭に繰り出してきたのだ」
ワシントンの中東研究所の在外研究員でありペルシア語を母国語とするアーラビ氏は、近代化を進めるシャー体制に1978年の革命が取って代わって以降の体制にとって最悪のものとなっている現在のデモは、イランの転換点だと語る。
「これはイスラム共和国の終わりの始まりだ」
「イラン国民が望むのは改革ではなく体制転換であり、イスラム共和国の完全な打倒と世俗的民主主義の確立であることは何年も前から明らかだった」
イランの若者たちは、アブラハム合意による国交回復やサウジアラビアの大規模な現代化改革など、地域の他の国で起こりつつある大きな変化を目の当たりにしており、「『なぜイランではこのような変化が起きないのだろうか』と思っている」と同氏は言う。
TBIのレポートが利用している、数万人のイラン国民を対象に実施された2回の世論調査の結果は、40年以上にわたって強硬派のシーア派神政体制に支配されているにもかかわらずイランがいかに世俗的な社会になったかを示している。
主な発見の一つは、イランでは男性と女性がほぼ同程度にヒジャブ着用義務に反対していることだ(男性70%、女性74%)。
人々がより保守的な物の見方をすると従来から考えられている農村部は、都市部とは異なる回答結果を示すと思われるかもしれない。ところが、都市部の人々と農村部の人々は同程度にヒジャブ着用に反対している。
ヒジャブ着用に賛成する人の割合は都市部の21%に対し、農村部では28%と、あまり差がなかった。
予想通りだが、ヒジャブ着用義務に対する反対は若い世代で最も強い。20~29歳の回答者の78%が反対している。
ただ、30~49歳の68%、50歳以上(いわゆる革命世代)の74%もヒジャブ着用に反対しているのだ。
ヒジャブ着用に賛成しているのはイランではごく少数派だ。女性の13%、男性の17%に過ぎない。
ヒジャブデモは明らかに体制転換を求めているとTBIは述べている。ヒジャブ着用に反対する人の84%はイスラム共和国の終焉を望んでいるのだ。
さらに、「イランの反体制デモは根底から世俗的なものだ」とレポートは述べており、「体制転換を求める人のうち76%は、自分の生活にとって宗教が重要でないと考えている」と付け加えている。
実際、イランでは「前例のない世俗化」が広がっており、TBIは「イラン社会はもはや宗教的ではない」と結論している。
イランは神政の共和国だが、イスラムの義務である1日5回の礼拝に従っている人は、農村部では33%、都市部では26%と少数派であり、また減少傾向にある。
教育レベル別に見ると、大学の学位を持つ人のうち1日5回の礼拝を実施しているのは26%に過ぎず、高校卒業かそれ以下の教育レベルの人の場合もほぼ同じ28%だ。
「イランの街頭デモと世論調査から見えること:ヒジャブ拒否はいかに体制転換の象徴となったか」と題したこのレポートは22日に発表されたものだが、2020年と2022年にイランで実施された2回の調査からの未発表データを含んでいる。
このデータはヒジャブ問題やイラン社会の世俗化を求める声が数年にわたって沸き立ってきたことを示しているとTBIは述べている。「現在のデモは、体制とイラン国民との間の大きな溝の結果である」
「強硬派イスラム主義神政のもとで暮らしているにもかかわらず、イラン国民は中東で最も世俗的な国民だ。1990年代初頭から世俗化・自由化が徐々に進んでおり、過去5年で前例のないレベルに達している」
今回のレポートが利用している世論調査は、オランダを拠点とする独立非営利研究機関「イランにおける意識分析・測定グループ(GAMAAN)」2020年6月と2022年2月に実施したものだ。
従来的な対面あるいは電話による調査方法の代わりに「イラン国民の本当の意見を捉えるためのデジタルツールや代替的方法を用いることで(…)デリケートなテーマに関する質問にも回答者が身の安全を心配することなく正直に答えることが可能になった」とGAMAANは述べている。
GAMAANが2020年6月に実施した調査では、3万9981人が宗教に関する質問に回答した。2022年2月の調査では、1万6850人が政治体制に関する質問に答えている。
回答者層別に分析した「結果からは、ヒジャブ着用義務反対や反体制を中心とするコンセンサスが国民の間に着実に定着しつつあることが分かる」とTBIは述べている。
デモに対する体制の弾圧により数千人が逮捕されている。「神への敵意」や「地上の腐敗」などの死刑に相当する罪に問われている人もいる。
今月には、少なくとも5人のデモ参加者の処刑が実行されたことを国が認めており、人数は不明だが子供を含む多くの人々がデモの際に殺害された。
イランにおける人権侵害を監視するために2005年に設立された通信社「HRANA」によると、これまでに400人以上のデモ参加者が死亡しており、少なくとも1万7250人が逮捕されている。
国連児童基金(ユニセフ)の先週の報告によると、「9月下旬以降、イランのデモで推定50人の子供の命が失われたと伝えられている」
直近に亡くなった子供は、10歳の少年、キアン・ピルファラク君だ。イラン西部の都市イゼで16日にデモに参加したりその近くにいたりして銃撃され死亡した人々の一人だった。父親と一緒に車で帰宅中に銃弾を受け亡くなったのだ。
イランのデモは欧米でも広く報道されているが、今週イランのサッカー代表チームがカタールワールドカップ初戦の対イングランド戦開始前に国歌斉唱をあからさまに拒否したことでますます注目された。
キャプテンのエフサン・ハジサフィ選手は試合前、チームはデモで亡くなった人たちを支持すると述べ、「我が国の状況は正しくないということ、国民が幸せではないことを認めなければならない」と付け加えた。
TBIのアーラビ氏は、欧米がイラン社会に起きている変革を認識していないのは、「専ら2015年の核合意やその後のトランプ政権の合意離脱といったレンズを通してイランやそのデモを見ているからだ」と指摘した。
「しかし、今のデモは核合意や制裁再発動をめぐって行われているわけではない。イラン国民の利益よりも強硬派イスラム主義イデオロギーにとっての利益を一貫して優先してきた全体主義的で女性差別的でイデオロギー的な体制の下で生きることが問題となっているのだ」
イギリスの元首相で2016年にTBIを設立したトニー・ブレア氏は、今回のレポートに次のようにコメントしている。「この2ヶ月、イラン国民は並外れた勇敢さと勇気を示してきた。世界中の何百万人もの人々が、彼らが自由のために取ってきた姿勢を称賛し支持していることを、彼らは知るべきだ」
「常々言ってきたことだが、今このことをさらに強調したい。イラン国民が最終的に自由を勝ち取った時、それは中東にとって最大の解放となるだろう」
「イランの普通の人々にとって、多くの人が『欧米のもの』と思っている価値観は実は彼ら自身のものだ。また、彼らも彼らの国もイスラム共和国によって規定されるべきではない。彼ら自身の未来を規定すべきなのは、豊かで多様な歴史と文明を持つ偉大な国民である彼らだけだ」
「だから私は、我々がしばしば当然と見なしているもののために命を危険に晒している抗議者たちに深い連帯を示すことが我々欧米諸国の利益となると固く信じている」
「今こそ、我々欧米諸国は政策を再修正して、イラン国民とイスラム共和国とを明確に区別すべきだ。そして前者に我々の努力を捧げよう」