
アラブニュース
ロンドン:英国とイランの二重国籍を持っていた元高官の処刑への対応として、英国政府はイランの外交官を追放すべき、と元高官の近親者がデイリー・テレグラフ紙に語った。
イランの国防副大臣を務めていたアリレザ・アクバリ氏には生前、英国のためにスパイ行為を働いた容疑がかけられていた。
元大臣は3500時間の暴力的な拷問の後に自白させられたと語っており、最終的に14日に処刑された。
61歳だったアクバリ氏は1997~2005年まで、モハンマド・ハータミー元大統領の改革政権で大臣を務めた。
その後、マフムード・アフマディーネジャード氏率いる強硬政権からの嫌がらせに会い、2008年に英国へ出国した。そして2009年、イラン訪問中にスパイ行為の容疑で拘束された。
アクバリ氏の甥のラミン・フォルハニ氏はテレグラフ紙に対し、おじの処刑を「そのまま見過ごすことはできない」と語り、英国は最低でもイランの外交官を追放すべきだと述べている。英国政府は処刑を思いとどまるようイランに求めたが、無駄だった。
「朝起きてすぐに処刑のことを知りました。言葉になりません。恐ろしく、大きな衝撃を受けています」とフォルハニ氏は語る。
「今の政権ならやりかねないとは思っていましたが、私たちは皆、ナザニン・ザガリ・ラトクリフ氏の場合のように、考えを変えてくれることを期待していたと思います。でも、それは叶いませんでした」
「外交面においては、英国政府の解放の呼びかけにもかかわらず市民が処刑されたのですから、最低でも外交官を追放し、英国側(の職員)も呼び戻すべきでしょう」
「英国政府がしてくれたことには感謝しています。しかし相手は、人の命を何とも思っていない反道徳的な政権なのです」
「英国政府から外交面での対応があることを期待し、問題が放置されないことを願っています」
英国政府は14日、イランの検事総長に制裁を課す一方で、サイモン・シャークリフ駐イラン大使を一時的に呼び戻すと発表した。だがロンドンにいるイランの外交官については、まだ決定が下されていない。
フォルハニ氏はアクバリ氏に対する容疑を否定し、おじは「イランを助けるために全力を尽くしていた愛国者」だったと述べた。アクバリ氏はイラン・イラク戦争を終結させるうえで重要な役割を果たしたが、それも一例だという。
「いかなるかたちでも、おじが国や政権を危機に晒すようなことをするとは考えられません」とフォルハニ氏はスカイ・ニュースに語っている。
「祖国に反することをするような人物だとは思えません。そのようなことは理解しがたいです」
「私が思うに、これは政治ゲームなのでしょう。残念ながら、今の政権は人民を抑圧するためにどんなことでもします。しかし、国民に起こっていることから国際社会の目をそらす意図もあると思います」
フォルハニ氏はテレグラフ紙に以下のように語っている。「おじは家族思いのいい人でした。残酷な政権はこうしたことを善良な人々に行っています。残念ながら、おじもその1人に過ぎません」
「仕事がどんなに忙しくても、おじはイランの新年にいつも欠かさず私たちのところに来てくれました。いい思い出です。私が子供のときから優しくしてくれました。おじの笑顔を思い出します」
「私が大きくなるにつれ、おじは私がイランの政権を支持していないことを理解しました。それにもかかわらず、家族としていつも優しく接してくれまました」
「おじは笑顔を絶やしませんでした。いつも、家族であろうが友人であろうができるだけ誰でも助けようとしていました。私はそのことをいつまでも忘れません」
英国のリシ・スナク首相は、アクバリ氏の処刑は「野蛮な行為」だと述べた。その一方でジェイムズ・クレバリー外相は、英国政府は「嫌悪感」を覚えており、そのためにイランの代理大使を外務省に呼び戻したと述べた。