チュニス:チュニジアはかつて、アラブ世界における民主主義の新時代への希望だったが、現在同国で進行中の選挙は、模範というより恥辱である。
先月行われた議会選挙の第1回投票の投票率はたったの11%であった。野党各派は選挙をボイコットし、多くのチュニジア国民が指導者たちに幻滅し、選挙への関心を失っている。
10人の候補者が議席を確保したが、彼らに投票した者はなく、単に対立候補がいなかったためであった。
7つの選挙区で、候補者は1人も出なかった。
カイス・サイード大統領は1月29日に行われる第2回投票に期待をかけている。この投票をもって、サイード大統領が2021年に前回の議会選挙を中止して以来行ってきた政治システムの全面的再設計が完了することになる。
新議会はこれまでの議会より弱い権限しか持たず、大統領の言いなりになる恐れがある。
大統領および多くの国民は、政治的停滞の責任はアンナハダ政党が主導権を握っていた議会にあると考え、この停滞により長引く経済・社会的危機がさらに悪化すると危惧していた。
アンナハダ党関係者の一部は投獄されており、同党は議会選挙への参加を拒み、抗議を繰り返している。
選挙管理当局によると、先月の第1回投票では、定数161の内、23名の候補者が即時に議席を確保した。内10名には対立候補がおらず、13名は過半数の得票で当選した。
29日の第2回投票では、残る131議席に対して262名いる候補者から、有権者が議員を選ぶことになる。
候補者なしとなった7つの選挙区では、議席を埋めるための特別選挙が後日、おそらくは3月に行われる見込みである。サイード大統領は2019年に72%の得票率で選出されたが、以後国民の支持は鈍化している。
専門家によると、2011年のジャスミン革命以後、市民と政治指導層との信頼関係が危機に瀕し、その結果地域全体に暴動が勃発した。チュニジアの人々は新しい民主主義的政治システムを創り出し、2015年にノーベル平和賞が与えられた。
だが、チュニジア国民の生活は日常レベルでは悪化の一途をたどっている。
チュニスの食料品市場では、商人たちが紐につるしたデーツ、氷の上に積んだ魚、ナスやハーブなどの商品を売りさばくのに苦労し、買い物客は物価の上昇を嘆いていた。
29日の投票でこれらの問題が解決すると信じる人はほとんどいないようだった。
立て続けに行われている選挙は「私には何の益もありません」と、ある私企業の従業員、モハメド・ベン・ムーサ氏はため息をついた。
その間も、経済は低迷し続けている。
国立統計局による最新のデータによると、失業率は18%以上、内陸部の貧しい地域では25%を超えることもある。一方でインフレ率は10.1%である。
チュニジアはここ数年、記録的財政赤字に苦しんでおり、医薬品や食料、燃料等の支払いに問題が生じている。その結果、ミルク、砂糖、植物油その他の必需品が不足している。
チュニジア政府は目下、国際通貨基金と昨年12月に凍結された19億ドルの融資をめぐって交渉中である。
AP