
イスラエル・テルアビブ:ロシアがウクライナとの戦争を始めた時期に一時的に仲介役だったイスラエルの元首相が、ウクライナ大統領を殺害しない約束をプーチン氏から取り付けたと語っている。
ナフタリ・ベネット元首相は、侵攻開始後の最初の週に思いがけず仲介役を買って出ることになった。そして昨年3月にモスクワを電撃訪問し、侵攻中にウラジーミル・プーチン大統領と面会した数少ない西側諸国の指導者の1人となった。
ベネット氏の仲介努力は、今日まで続く虐殺を止めるうえで効果はなかったようだ。しかし、4日にインターネットに掲載されたインタビューの発言からは、早期の対立解決を目指すために舞台裏で展開された外交活動が見えてくる。
5時間に及ぶインタビューでは他の話題も多く取り上げられた。ベネット氏は、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を殺害するつもりなのかどうかプーチン氏に尋ねたという。.
「私は『それでは、ゼレンスキーを殺すつもりなのか?』と尋ねました。彼は『ゼレンスキーは殺さない』と答えました。そこで私は『あなたがゼレンスキーを殺さないという確約を得たと理解しなければならない』と言いました。彼は『ゼレンスキーは殺さない』と言いました」
ベネット氏はその後ゼレンスキー氏に電話し、プーチン氏の約束を伝えたという。
「『今、面会を終えたところだ。彼はあなたを殺すつもりはない』と伝えると、彼は『確かなのか?』と尋ねた。私は『彼は100%あなたを殺すことはない』と言った」
そして、自分が仲介した際、プーチン氏はウクライナの非武装化を目指すのをやめ、ゼレンスキー氏もNATOに加盟しないと約束したという。
ロシア政府は以前、「ロシアがゼレンスキー殺害を目論んでいる」とのウクライナ側の主張を否定していたが、今のところ反応は伝わってきていない。
元首相のインタビューは広く報じられた。その発言に対し、ウクライナのドミトロ・クレバ外務大臣は5日に以下のようにツイートした。「騙されてはいけない。彼は一流の嘘つきだ。何かしないと約束しても、それはまさに彼の計画の一部に過ぎない」
ベネット氏が首相に就いてから6か月あまりで侵攻が開始され、当時は指導者としての経験が圧倒的に不足していた。イスラエルはロシアとウクライナの間で板挟みとなり、元首相は予期せぬかたちで国際外交の舞台に押し上げられた。イスラエルは、イランの脅威に直面する中でロシア政府との良好な関係が戦略的に重要だと考えているが、西側諸国とも連携しており、ウクライナへの支援も表明しようとしている。
敬虔なユダヤ教徒で国際的な知名度のなかった元首相は、ユダヤ教の安息日にモスクワへ飛んでプーチン氏と面会した。宗教的な伝統を破り、戦争を止める世界的な努力の最前線に立つことになったのだ。
しかし、彼の仲裁努力が実を結ぶことはなかったようで、首相生命も短かった。ベネット政権はイデオロギー的に多様な連合勢力で、その間、ベンヤミン・ネタニヤフ氏(現首相)は一時的に政界から追放されたが、夏に内紛が起こって倒れた。ベネット氏は政界を引退し、今は市民として生活している。
AP