
ナジャ・フーサリ
ベイルート:米国は、レバノン企業の太陽光発電システム導入を支援するための2000万ドルの基金を設立した。同国の電力部門が崩壊する中で企業経営者が生き残りに苦労していることが背景にある。
ドロシー・シェイ駐レバノン米大使は17日、「太陽光・再生可能エネルギー基金」を設立した。国内企業の運営コスト削減、事業の継続、雇用レベルの維持を支援するものだとしている。
同大使は、「この基金は少なくとも25社を対象に太陽光発電システムの購入・設置を支援するものだ」と述べた。
レバノンの電力部門の崩壊により、企業や家庭は自家用ディーゼル発電機に大きく依存することを余儀なくされている。
現在、電力は1日4時間しか使用できない。それでも電気が使えるのは、内閣がレバノン電力公社(EDL)のためにデイル・アンマル発電所とザハラニ発電所を稼働させる燃料を供給するための資金6000万ドルの前払いを承認したおかげだ。
しかし、国の突然の気前の良い行いを信用している人はほとんどいない。弁護士のジャマルさんは語る。「電力供給時間を4時間に増やしたのは、納税者に新たな価格を課すための一時的な罠かもしれません。そうなったら灯りなしで過ごす生活に逆戻りです」
シェイ大使は次のように述べた。「レバノン企業は現在の経済危機の中で苦労している。融資へのアクセスは限られ、全ての預金者と同様に資金はレバノンの銀行に閉じ込められている。レバノン企業は何年も、環境に有害で持続不可能かつ高価なエネルギー源に頼っている」
「米国際開発庁は太陽光・再生可能エネルギー基金に着手資金として400万ドルを拠出した。現在、個人投資家やその他の資金提供者からさらに1600万ドルを確保しようと努めている」
「この基金は企業に、2~3年以内の返済を見込んで商業レートで資金を融資する。ディーゼル発電機への依存低下による節約で返済できるだろう」
「これらの企業は電力への支出が減ることで少なくとも20%は運営コストを削減できると見込んでいる。そうなれば生産性が上がり、国内の雇用を守れるだろう」
レバノンの電力部門は何十年も改革されておらず、有効な解決策がないまま国に数十億ドルの負担をかけ続けている。
年間約25億ドルに上るEDLの損失は国庫が補填している。レバノンの電力部門が生み出すこの赤字は国の赤字総額の約45%を占めている。
2019年には電力供給の減少に抗議する座り込みがEDL本部で行われた。危機以前のレバノンでは1日12時間の電力が国から供給されていた。しかし、供給時間は8時間、そして4時間へと徐々に短縮され、ついには発電所が一時的に閉鎖されるに至った。
世界銀行のファリド・ベルハジ中東・北アフリカ担当バイスプレジデントは今週、レバノンのナジーブ・ミカティ暫定首相と会談し、同銀行の資金によりヨルダンからシリア経由でエネルギー供給を受ける計画の実施条件である電力部門の改革を政府が行っていないことに失望を表明した。
為替レートの持続的な変動に基づいてレバノンのエネルギー省が電気料金引き上げを決定したことで、国民の多くにとって負担がさらに増した。
毎月の請求額が数百万レバノンポンドになったため、多くの人が電力契約を解約している。国の電気料金と自家用発電機の料金の両方は払えなくなったという声が上がっている。特に後者はドルで価格設定されているため負担が大きいのだ。
レバノンポンドの価値は下落の一途をたどり、自家用発電機を動かすためのディーゼル価格が上がっているため、多くの人が太陽光発電を選択している。
住宅や地方の田園地帯の土地には数千枚の太陽光パネルが設置されており、地域の日用品を生産する工場に電力を供給している。
レバノンに住むアフメド・アル・ラビフさんは語る。「電力契約を解約することに決めました。負担に耐えられないからです。100キロワット未満は10セント、100キロワット以上は27セントなので、請求額は少なくとも150万レバノンポンドになります」
あるEDL社員はアラブニュースに対し次のように語る。「レバノンから国外に移住した人々の多くは電力契約の解約申請を身内に頼んでいます。電気を使ってもいないのに無駄に料金を払うことになるからです。自家用発電機や建物に設置されている太陽光パネルがあるから、それ以外に電気料金を払う必要がないという理由で契約をやめる人もいます」
代替手段があるわけではないが単に料金を払えなくなったという理由で契約をやめる第三のタイプの人々もいるという。
活動家らは「私たちは払わない」というスローガンのもと、国の新たな電力料金に反対しEDLから請求される料金の支払いをボイコットするオンラインキャンペーンを立ち上げた。