
ロンドン:21日に発表された英「ガーディアン」紙の調査によると、英軍は、イラクのダーイシュの拠点を標的とした空爆による民間人の死亡に関係があるとされている。
イラクでダーイシュと戦った米国主導の連合軍の部隊は、2014年以降の期間にイラクで数百人の民間人が殺害されたことを認めているが、英国の政府および軍はこれまで、非戦闘員や一般のイラク人が殺害されない「完璧」な戦争が行われたと主張してきた。
しかし、ガーディアンが監視団体「エアウォーズ(Airwars)」と共同で実施した今回の調査では、2016年と2017年にモスル市を攻撃した少なくとも6回の空爆で、英軍が民間人の死亡に関与した可能性があると結論付けている。
調査の対象となったこれらの空爆に関して、連合軍は26人の民間人の死亡を認めており、そのうちの2度の空爆の犠牲者はこの調査で身元が確認された。
続いて2017年1月9日に行われたモスルへの空爆では、連合軍当局が民間人2人の死亡を認めており、爆撃が英国空軍によるものだったことも確認されているが、英国当局は、犠牲者は民間人ではなく、武装勢力に所属する正当な標的であったと主張している。
ダーイシュに対する連合軍の軍事行動「生来の決意作戦(Operation Inherent Resolve)の一環として行われた英国の爆撃はイラクで2014年に、シリアではその翌年に始まり、2カ国で4,000発以上の爆弾が使用されたと調査報告は結論付けた。
英軍の関係者は、2014年から2020年にかけて、イラクで3,052人のダーイシュ過激派が殺害され、民間人の死者はゼロ、シリアでは1,017人の過激派が殺害され、民間人の死者は1人だったと主張している。
「シリアとイラクでの攻撃によって民間人の死傷者が出たという証拠や兆候はない 」と英国防省のスポークスマンはガーディアンに語った。
「英国は常に厳格なプロセスを通じて民間人の犠牲のリスクを最小化し、その実行にあたっては、すべての攻撃のミッションデータの包括的な分析を含む、さまざまな証拠を慎重に調査している」とスポークスマンは強調している。
しかし、批判的な人々は、英国の立場は説得力に欠けると見ている。
とりわけ、2003年のイラク侵攻における英国の役割に関する2016年のチルコット報告書で、負傷者や死亡者を特定するための十分な措置が講じられていなかったことが明らかにされているだけに、元軍関係者はイラクでの民間人の死亡はないという主張を「無理がある」「ナンセンス」と批判している。
英国が民間人死亡の責任を認めざるを得なくなった場合でも、2021年に成立した法律では、生存者の補償請求について6年後の打ち切り期限が設定されており、イラクとシリアの人々は英政府に対して補償の請求をすることはできない。