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インタビュー:サウジアラビアはパンデミックであってもビジネスに門戸を開いている

ルイス・グラニェナによるイラスト
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04 May 2020 12:05:32 GMT9
04 May 2020 12:05:32 GMT9

フランク・ケイン

  • サウジアラビア投資省の投資家サービス局副長官は、サウジアラムコの新規株式公開は機会のほんのひとつに過ぎないと述べた。
  • サウジアラビアは投資基盤の大改革に乗り出した。

ドバイ:サウジアラビアへの外国投資の誘致は、石油依存から脱却して非石油経済を促進させる「ビジョン2030」戦略の主要な構成要素である。しかしこれは様々な理由から難題でもある。

新型コロナウイルスでさらに不安定になった世界の現実の変革、そして国際資本を流入させる手法の変革に取り組むことが、サウジアラビア投資省の投資家サービス局副長官イブラヒム・アル・スワイル氏の職務だ。

「政府は外国直接投資(FDI)の重要性を戦略の大きな柱のひとつと捉えています」とアル・スワイル氏はアラブニュースに語った。「新型コロナウイルスはサウジアラビアにとって非常に困難な時期に発生しましたが、我々は『将来的にも有効な』経済を迅速に設計すべく動員されたのです」

世界の金融や経済がこれほど急激に変化する状況において、いかなる経済も完璧に「将来的にも有効」であるようにするのは困難なことではあるが、それはサウジアラビアだけでなく世界中の政策決定者たちが直面する課題だ。

ここ100年近くで最大の世界不況となり得る出来事への備えができていることで言えば、ある意味、サウジアラビアの国外投資を誘致する能力はパンデミック問題に対して効力があったといえる。

パンデミックの真の意味合いが本当に理解される前の2月に、サウジアラビアは投資基盤の大改革に乗り出した。外国直接投資(FDI)誘致の役割を果たす政府機関であったサウジアラビア総合投資庁(SAGIA)の任務が、サウジアラビア投資省(MISA)という省レベルの機関の新たな創設で強化された。

政府は同省を率いる人物として、世界的に著名な政策決定者、元エネルギー相でありサウジアラムコ会長でもあるハリド・アル・ファリハ氏を選出した。ニュース解説者たちは当時、そのような大物であり、国際投資コミュニティーで名の知られた人物を指名するということは、外国直接投資(FDI)の誘致が政府の戦略課題の優先事項であることを意味していると述べた。

「外国直接投資(FDI)は『ビジョン2030』の目標達成に向けた主要な柱のひとつです。サウジアラビアは、観光、『紅海開発』のような巨大プロジェクト、採掘や。鉱物など、多くのセクターで直接投資の大きな可能性を秘めています。また、アジア、アフリカ、ヨーロッパというそれほど離れていない3大陸を結ぶ物流拠点にもなります」とアル・スワイル氏は述べた。「国際投資家コミュニティーの関心を集めるという意味では、これまでのサウジアラビア総合投資庁(SAGIA)の仕事を足場として事を進めるのは良いさい先となりました。我々はサウジアラビアの投資全体のエコシステムを管理・保護する責任を負っています」と彼は語った。

それがどれほど困難なことであるかは、国連貿易開発会議の公式数値に示されている。2008年の世界金融危機の直前にはサウジアラビアは、年間約400憶ドルの外国直接投資(FDI)を誘致していたが、それ以降はそのレベルに回復させることに苦慮している。昨年は約460憶ドルに達した。それはその前2年間の改善によるものだ。

サウジアラビア総合投資庁は外国投資を評価するのに別の指標を使っていたが、それが期待の持てる結果を示した。2019年に国内に設立された外国企業の数は前年の736社から54%増え、1131社の外国企業がサウジアラビアを事業地として選択した。これは記録的な年だった。

2020年第1四半期の数値は現在まとめている最中だ。アル・スワイル氏は、3月にパンデミックの深刻な経済的影響を受けたにも拘わらず、2019年最終四半期からの「堅調な伸び」を発表できるだろうと述べた。

ウイルスの勃発により、新たに開設された省のギアチェンジが促進された。大きな世界金融センターのいくつかでこの先年内に予定されていた外国向け会議、セミナー、プレゼンテーションの計画を、世界保健機関が新型コロナウイルスを世界的パンデミックに宣言した数日後、「サウジアラビア投資省新型コロナウイルス対応センター(MCRC)」を創設してオンラインに移行させたのだ。

「世界的健康危機のために世界じゅう多くの国が国内を向いていますが、我々はできる限り、外国を向き続けていきたいと思っています」とアル・スワイル氏は述べた。

サウジアラビア投資省新型コロナウイルス対応センター(MCRC)は、他の政府機関と連携してウイルス危機がビジネスに及ぼす影響についての中心的な情報拠点として活動し、投資家たちに緊急事態中に可能な構想やサービスを知らせたり、外出禁止規制や必要不可欠ビジネスの適用除外などを案内したり、24時間対応でビジネスサポートを提供したりしている。

また、パンデミック中に外国直接投資(FDI)の勢いを中断させないために、既存投資家や潜在的投資家のための一連の国際ウェビナーも企画してきた。直近では先週に開催し、米国の企業や団体が参加している。

一連のウェビナーは今後2、3カ月にわたって続けられ、地理やセクター別となる。「投資家たちの現在のニーズを探り、パンデミック中に政府が提供している様々な奨励策パッケージを周知させるべく、我々は投資家たちに連絡をとっています」と彼は述べた。

潜在的外国投資家たちが最も熱く目を向けているサウジアラビアのセクターはどこだろうか?「何かひとつの業種というものはありません。我々の発するメッセージは、サウジアラビアはビジネスにたいして門戸を開いているということ、そして投資機会の数を増やしているということです」とアル・スワイル氏は述べた。

「もはや石油だけではありません。2017年から大きく多様化しており、我が国には他にも資源や機会が満ちています。」

「ビジョン2030」改革計画の一環として打ち出される大規模プロジェクトは、外国直接投資(FDI)の明確な対象となっており、パンデミック危機の前には当局が、建設、インフラ、公共施設、接客、その他大規模プロジェクトに必要となる領域に投資してくれる投資家たちとの話し合いを持っていた。

アル・スワイル氏は、サウジの医療セクターにおける新たな機会を強調した。医療セクターでは最近、非サウジ企業に事業の完全所有を許可する法改正があったばかりだ。また、情報テクノロジーや、観光・レジャーにも大きな機会があると彼は見ている。新たな観光ビザがかつてないレベルで国内への旅行を促進させているのだ。

従来は米国からの貿易や投資がサウジ経済を支配していたのが特徴であったが、アジア諸国の経済的な急成長でそれが変化している。近々発表する2020年第1四半期の数値は、英国や欧州といった従来地域のパートナーに加え、中国とインドからの大きな投資を示すことになるとアル・スワイル氏は述べた。

外国直接投資(FDI)構想の目玉は、サウジの政策決定者たちが外国投資家たちを誘致するために宣伝した新規公開株(IPO)の民営化プログラムや仲間取引だったが、これは実現が遅れている。昨年末に株式を公開したサウジアラムコの史上最大のIPOは、主にサウジや他の湾岸協力会議諸国の投資家たちに重点を置いたものとなり、他の投資家たちには向けられなかった。

「民営化は『ビジョン2030』の中心であり、我々は目を見張るべき進展を遂げています。さらなるIPOが予定されているはずです。アラムコはそのうちのひとつに過ぎなかったことが分るでしょう」とアル・スワイル氏は述べた。

新たな投資省が開設されたとき、ニュース解説者のなかには、国内の大規模政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンドと同省との関係について混乱があった。パンデミックによる景気後退で世界的に資産価値が下落して以降、パブリック・インベストメント・ファンドは、世界的クルーズ産業、レジャーや娯楽、西側諸国の石油会社などにおいて、過小評価されていると思われる機会を精力的に追い求めている。

サウジアラビア投資省の焦点は、国外投資よりも国内への投資であり、アル・スワイル氏が説明するように、それ自体が投資をするのではない。「サウジアラビア投資省は、それ自体が投資家であるというよりも、投資のまとめ役です。我々はサウジアラビアへの国内投資をエンド・ツー・エンドでまとめるのです。しかしもちろん我々はパブリック・インベストメント・ファンドと常に話し合って密接に協力しながら仕事を進めます」と彼は言った。
ビジョン2030戦略の包括的な目標は、サウジ経済における民間セクターの役割と重要度を増すことであり、それがアル・スワイル氏の取り組み方と非常に調和するのだ。「私は民間セクターの出身であり、そこでの考え方は、会社が設定した目標を達成するというものでした。現在、私の目標はこの国の目標でもあります」と彼は言った。

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