
ミクダディヤ:フセイン・メイサムさんとその家族は、彼の年下のいとこたちのためにおもちゃを買いに出かけて静かな夜を過ごした後、車で自宅近くの椰子の木林を通り過ぎようとしていた。その時、彼らの車は月に照らされた道路に仕掛けられていた爆弾に接触した。
「爆発があったことしか覚えていません」と弱々しく話す16歳のメイサムさんは、病院のベッドに横たわり、青ざめた腕には茶色の爆弾の破片がたくさん刺さっていた。この攻撃はシーア派が多数を占めるハザニエ村で今月発生したものだ。爆発の威力で彼は車の外に投げ出されたが、彼の両親、おば、3人のいとこはこの激しい虐殺により亡くなった。住民の話では、近くの用水路の中に隠れていた武装集団が発砲し他に2人を殺害した。
これは、イラク中部、バグダッドの北東に位置するディヤーラー県でこの1ヶ月間に起こった一連の攻撃の最新の例となった。治安当局によると、少なくとも19人の民間人が正体不明の襲撃者によって殺害され、そのうち2件の襲撃は特定の標的を狙ったものだった。
一連の暴力は、民族的・宗教的に多様なこの県においてコミュニティー同士を対立させている。このような状況から、ダーイシュ打倒以降の数年間でイラクの大部分に広がった比較的平穏で安定した状態を維持できるのか疑問の声が上がっている。
政治アナリストで「ロヤ開発グループ」のパートナーであるモハナド・アドナン氏によると、イラクは全体としては、20年前の米国主導の侵略の後に発生したダーイシュの台頭や宗派間の大規模な流血を許した状態からは脱している。
しかし、ディヤーラー県を含む国内の一部では緊張が続いており、時に暴力の波が発生して古傷を開いているという。
アドナン氏は、「特にディヤーラー県には、過去の出来事から立ち直っていない村がいくつかある」と語る。
当局者、住民、アナリストは口々に、ディヤーラー県で起こった暴力事件の少なくとも一つは、ダーイシュが犯行声明を出した攻撃をめぐるシーア派からスンニ派への宗派的報復のようだと話す。
しかし、それ以外の殺害事件はシーア派がシーア派に対して行ったものだと彼らは言う。この県を支配する、対立し合う民兵組織とその部族的・政治的同盟勢力が、影響力と金になる闇商売ネットワークをめぐって争う中で起こっているというのだ。イランおよびイラクのクルディスタン自治地域と境界を接するディヤーラー県は麻薬などの密輸の主要ルートとなっている。
ハイライト
一連の暴力は、民族的・宗教的に多様なこの県においてコミュニティー同士を対立させている。このような状況から、ダーイシュ打倒以降の数年間でイラクの大部分に広がった比較的平穏で安定した状態を維持できるのか疑問の声が上がっている。
政治部門を持つ「民衆動員部隊」内のイランの支援を受けた国家公認民兵組織「バドル軍団」は、2015年にこの県の支配権をダーイシュから奪った。それ以来、この組織はいくつかのシーア派政党と関連の準軍事組織、およびスンニ派組織に支配を及ぼしている。
ダーイシュとの戦争中に避難していたスンニ派住民の大半はこの県に戻ってきているが、ダーイシュと関係しているのではと当局や近隣住民から疑いの目で見られることが多いという。
ダーイシュの残党が民間人や治安部隊を攻撃すると、しばしば報復の負の連鎖が始まる。
スンニ派が多数を占めるジャライラ村では2月下旬、陰惨な攻撃で女性や子供を含む9人が殺害された。治安当局によると、彼らはその2ヶ月前、隣村でのダーイシュの攻撃を容認したと非難されていた。
襲撃犯らは地区内を公然と移動していたと、この村に住むアワド・アル・アザウィさんは話す。「彼らはマスクを着けていなかったので顔がはっきりと見えました」
近くにあるシーア派が多数を占めるアルブ・バリ村では昨年12月、ダーイシュが9人を殺害する事件が発生した。ジャライラ村の住民らは、2月の事件はアルブ・バリ村の者たちによる報復であり、国から与えられた武器を使用している地元の民兵組織のメンバーらが犯人だと言っている。
この武装組織と関係のある治安当局はコメントの要請に応じなかった。
AP