
エルサレム:イスラエルは9日、北東の隣国シリアから異例のロケット弾攻撃を受けたことへの報復として、シリア領内の標的を戦闘機と迫撃砲で攻撃した。同日、エルサレムの不安定な聖地ではユダヤ教とイスラム教の儀式が同時に行われ、両信徒間の緊張が最高潮に達した。
ユダヤ人が礼拝可能な最も神聖な場所であるエルサレムの「嘆きの壁」には、過越の祭に行われる祭司の祝福の祈りのためにユダヤ人礼拝者数千人が集まった。嘆きの壁の上、壁に囲まれたアル・アクサモスクの敷地では、イスラム教の聖なる月ラマダンの儀式の一環として数百人のパレスチナ人が礼拝を行った。
9日、数百人のユダヤ人は警察による厳重な警備のもとでアル・アクサの敷地内にも訪れた。パレスチナ人は彼らの存在に抗議して口笛を吹いたり宗教的なチャントを唱えたりした。
宗教右派やナショナリストのユダヤ人によるこういった訪問は年々その規模と頻度を増している。パレスチナ人の多くは、イスラエルはいつの日かアル・アクサを乗っ取るか分割することを計画しているのではと疑いの目で見ている。
イスラエル当局は、イスラム教徒が管理するこの敷地にユダヤ人は訪問できるがそこで礼拝はできないという長年の取り決めを変更しようという意図はないとしている。しかし、同国は今や史上最も右寄りの政権によって統治されており、超国家主義者が要職に就いている。
イスラエル警察がアル・アクサモスクに突入してからのこの一週間、衝突が多発するこの聖地における緊張が高まっている。パレスチナ人がバリケードを築いてモスク内に石や爆竹を持って立て籠もり、夜通し礼拝する権利を要求する場面が何度かあった。夜通しの礼拝についてイスラエルはこれまで、イスラム教の聖なる月の最後の10日間に限って認めてきた。イスラエル警察はパレスチナ人を力づくで排除し、数百人を拘束し数十人を負傷させた。
アル・アクサにおけるこの暴力事件をきっかけに、ガザ地区とレバノン南部のパレスチナ過激派によるロケット弾発射が5日から始まった。イスラエルは報復として両地域を空爆した。
7日遅くと8日未明の2回、シリア領内の過激派組織がイスラエルおよび同国が併合したゴラン高原にむけてロケット弾を一斉発射した。最初の一斉発射については、シリア政府に忠実なダマスカスを拠点とするパレスチナ組織がアル・アクサ突入への報復だとして犯行声明を出した。
最初に一斉発射されたロケット弾のうちの1発はゴラン高原の野原に着弾した。ヨルダン軍によると、別のロケット弾が破壊された際の破片がヨルダン領内のシリアとの国境近くに落下した。イスラエル軍によると、2回目に一斉発射されたロケット弾のうち2発は国境を越えてイスラエルに入ったが、1発は迎撃され、もう1発は空き地に着弾した。
イスラエルは報復として、ロケット弾が発射されたシリア領内の地域を迫撃砲で攻撃した。イスラエル軍によると、その後に同軍の戦闘機が、シリアの第4機甲師団の施設、レーダー設備、ロケット弾発射台などのシリア軍の拠点を空爆した。
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は8日遅く、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領と電話会談し、一連の暴力について話し合った。エルドアン大統領はヘルツォグ大統領に、アル・アクサモスクに対する「挑発と脅威」に関してイスラム教徒は黙っていられないと伝えたうえで、ガザ地区とレバノンに広がっている敵対行為をこれ以上エスカレートさせてはならないと述べた。
国境越しの戦闘以外にも暴力事件が起こっている。週末の間、イスラエルおよびヨルダン川西岸地区におけるパレスチナ人による襲撃で3人が死亡した。
銃撃され死亡したイギリスとイスラエルの二重国籍を持つマイア・ディーさんとリナ・ディーさんの姉妹2人の葬儀は、ヨルダン川西岸地区のクファール・エツィオンのユダヤ人入植地にある墓地で執り行われることとなった。
イタリア人でローマの弁護士だったアレッサンドロ・パリーニさん(35)は、短いイースター休暇を過ごすために友人数人と共に数時間前にテルアビブに到着したばかりだった。彼は7日、同市の海岸沿いの歩道に突っ込んできた車によって殺害された。車両暴走攻撃と思われる。
AP通信の集計によると、今年に入ってイスラエル軍に殺害されたパレスチナ人は90人以上に上り、その少なくとも半数は過激派組織に所属していた。同期間でパレスチナ人の攻撃によって殺害されたイスラエル人は19人で、1人を除いて全て民間人だった。
AP