
ハルツーム、スーダン:スーダンの首都ハルツームやその他の都市の住民らは、外で爆発音や銃声が鳴り響く中、自宅で身を寄せ合っている。国軍と強力な敵対勢力が国の支配権をめぐって市街地で戦闘を繰り広げたのだ。
国連のフォルカー・ペルテス特別代表が記者団に伝えたところによると、戦闘が勃発してから少なくとも185人が死亡、1800人以上が負傷した。人口密集地で両陣営が戦車や迫撃砲などの重火器を使用している。戦闘機が頭上から襲いかかり、対空砲撃が暗くなっていく空を照らした。
ハルツーム中心部周辺の路上には多くの遺体が横たわっており、死者数はさらに増える可能性がある。衝突が続いているため遺体には誰も近づけない。民間人や戦闘員の死者数については公式に発表されていない。医師団体はこれより前に、民間人の死者は97人だとしていた。
週末、それぞれが重武装戦闘員数万人を従えるスーダンのトップの将軍2人の間で突如として戦闘が勃発したことで、何百万人もの人々が自宅や避難先に閉じ込められており、生活必需品が残り少なくなりつつある。いくつかの病院は閉鎖を余儀なくされた。
四大陸の外交トップらは停戦の仲介を急いでいる。国連安全保障理事会はこの危機について話し合うこととなった。
G7外相会合が軽井沢で行われている中、日本の林芳正外相は、G7はスーダンにおける暴力を即時に停止しなければならないとの認識で一致したと述べた。
米国務省関係者が18日に明らかにしたところによると、米国のアントニー・ブリンケン国務長官はスーダン国軍と敵対軍事組織「即応支援部隊(RSF)」のそれぞれのトップと個別に電話会談し、民間人に死傷者が出ていることについて「深い懸念」を表明した。
ブリンケン国務長官は、アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍とモハメド・ハムダン・ダガロ将軍には外交官や人道支援従事者を含む非戦闘員の安全を確保する責任があることを強調したという。
茶商人などの食品労働者数千人の組合の代表を務めるアワデヤ・マフムード・ココさんは、「いたるところで銃撃や爆撃が行われています」と話した。
彼女の話では、16日に近所の家に砲弾が直撃し少なくとも3人が死亡したという。「病院に運ぶことも埋葬することもできませんでした」
ハルツーム中心部では、主な前線となった軍司令部付近で銃撃が長時間続き、白煙が立ち上った。その近くのハルツーム大学では戦闘が始まってから少なくとも88人の学生と職員が工学部図書館に閉じ込められたと、それらの学生の1人が17日にオンラインに投稿した動画の中で話した。外での衝突で学生1人が死亡、1人が負傷したという。この動画投稿者は、食料や水がないと言いながら、床で寝る人々で溢れた部屋を撮影した。
軍事クーデターが行われてきた長い歴史を持つスーダンにおいても、ハルツーム、およびナイル川を挟んで隣接するオムドゥルマンにおける戦闘の光景は前代未聞のものだった。この騒乱は、国民がイード・アル・フィトル(イスラム教の断食月ラマダンの終わりを祝う祝日)を迎えるわずか数日前というタイミングで起こった。
権力をめぐって戦っているのは、国軍司令官のアブドゥルファッターフ・ブルハン将軍と、準軍事組織RSFトップのモハメド・ハムダン・ダガロ将軍だ。かつて同盟関係にあった両者は、2021年10月の軍事クーデターを共同で指揮した。スーダン国民が数十年にわたる軍の支配に代わる民主的な文民政府の樹立に向けた機運を復活させようと努めていた矢先に今回の戦闘が勃発し、内戦の恐れが高まっている。
国際的な圧力を受けたブルハン将軍とダガロ将軍は最近、諸政党や民主化団体との包括協定に合意していた。しかし、RSFの国軍への統合や将来的な指揮系統をめぐって緊張が高まり、署名は繰り返し延期された。
エジプトのアブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は17日遅く、同国はスーダン国軍とRSFの両方と「接触を続けている」としたうえで、戦闘を停止し交渉に戻るよう双方に求めた。
しかし、両将軍はこれまでのところ頑なに互いの降伏を要求している。
EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表は、EUのスーダン大使が「自宅で襲撃された」とツイートしたが、詳細は明らかにしなかった。EU関係者はコメントの要請に今のところ応じていない。
スーダンのダルフール地方の悪名高い民兵組織「ジャンジャウィード」から発展的に結成されたRSFを率いるダガロ将軍は、自分自身を民主主義の擁護者と呼び、ブルハン将軍には侵略者で「過激なイスラム主義者」というレッテルを貼っている。両将軍には人権侵害を長年行ってきた過去があり、彼らの軍隊は民主化活動家を弾圧してきた。
ハルツームとオムドゥルマンでは両陣営が数万人の軍隊をほぼ全ての地区に配備し、各所で激しい銃撃戦を繰り広げた。
スーダン医師会は17日遅くに声明を出し、ハルツームに約20ヶ所ある病院のうち12ヶ所が攻撃や停電により「人々が避難を余儀なくされた」ため「閉鎖している」ことを明らかにした。
ハルツーム以外の都市の病院4ヶ所も閉鎖しているという。
ハルツーム北部のバフリ地区に住むハディア・サイードさんは、銃撃や爆撃を恐れて3人の子供たちと一緒に自宅1階の一室に避難していると話した。あと数日分の食料はあるが、「その後はどうすればいいのか分からない」という。
住民らの話では、ハルツーム南西部ガブラ地区で17日午後、迫撃砲などの重火器による激しい戦闘が発生した。自宅に閉じ込められた人々が叫んでいると、同地区に住む医師のアスマー・アル・トゥームさんは話した。
戦闘が特に激しいのは両陣営の主要基地や戦略的な政府ビルの周辺だが、それらは全て住宅地にある。
国軍は17日、数日間にわたる戦闘の末にRSFを退けオムドゥルマンの主要テレビ局ビルを確保したと主張した。国営の「スーダンTV」は放送を再開した。
RSFは16日、国軍から空爆を受けていたオムドゥルマンの主要な兵舎や基地を放棄したと発表した。17日には、その基地でRSF戦闘員とされる数十人の男たちの遺体がベッド、診療所の床、外の庭に散乱している様子を撮影したものだと主張するオンライン動画が公開された。この動画の真偽については独自に検証できなかった。
国軍とRSFは、西部ダルフール地方や北部・東部の一部(エジプトおよびエチオピアとの国境近く)など、国内各地の主要な中心地の大半で戦闘を行った。
17日、ハルツームから約350キロメートル(215マイル)北西にあるメロウェの戦略的空軍基地の支配権を双方が主張し、周辺で戦闘が勃発した。
スーダンで民衆蜂起をきっかけに長年独裁を振るった指導者オマル・アル・バシール大統領(当時)が退陣したことで人々に希望がもたらされたのは僅か4年前のことだ。
しかし、それ以降の、特に2021年のクーデター以降の混乱により、民主化の機運は挫かれ、経済は崩壊している。アフリカで3番目に国土が広く、資源が豊富なこの国において、今や人口の3分の1(約1600万人)が人道支援に依存している。
国際慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」は、スーダンでの活動の大半を一時的に停止したと発表した。ダルフールの事務所が略奪者に襲撃され、医療用品、ノートパソコン、自動車、冷蔵庫などを盗まれたという。「世界食糧計画」は、ダルフールで職員3人が死亡したため週末の間活動を停止した。「国際救済委員会」も活動の大半を停止している。
米国、EU、アフリカ諸国、アラブ諸国が戦闘の停止を呼びかける中、国連安全保障理事会はスーダンの状況について話し合うことになった。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、アラブ連盟、アフリカ連合、地域の指導者らと協議中だとしたうえで、影響力のある人々に対し和平を迫るよう呼びかけた。
17日に日本で開かれたG7会合において、米国のアントニー・ブリンケン国務長官は次のように述べた。「スーダン国民は軍隊が兵舎に戻ることを望んでいる。民主化を、文民主導の政府を望んでいるのだ。スーダンはその道に立ち戻る必要がある」
AP/ロイター