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戴冠式で注目を集める、国王チャールズ3世とアラブ・イスラム世界の強い絆

チャールズ新国王は、これまで英国を代表して中東諸国の歴訪を重ねてきた。
チャールズ新国王は、これまで英国を代表して中東諸国の歴訪を重ねてきた。
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06 May 2023 07:05:35 GMT9
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  • チャールズ新国王は、ウェールズ公時代に、サウジアラビアやUAE、カタール、エジプト、ヨルダンを数十回公式訪問している
  • チャールズ新国王には、英国と世界のイスラム教徒のコミュニティの支えとなってきた実績がある

ナディア・アルフォー

ドバイ:英国では5月6日の国王チャールズ3世の戴冠式の準備が進み、世界中の王族は英国の新君主の宣誓式に出席する用意をしている。

伝統を踏襲し、戴冠式はウェストミンスター寺院で行われる。チャールズ新国王は聖油を塗られ、17世紀に製作され新国王の頭部に適合するよう調整された聖エドワード王冠をいただくことになる。

この歴史的なイベントとその華やかな式典に立ち合い、新国王への忠誠を誓うために、ロンドンのウェストミンスター寺院やその周囲の街路には数千人の人々が参集するものと予想されている。

その中には、アラブの王族も含まれている。故エリザベス2世の治世下、アラブ王族は英国ウィンザー朝の王家と70年以上にわたって強い絆で結ばれており、英国の新国王はアラブ王族に親しい知己が多い。

チャールズ新国王は、アラブ世界、さらにはもっと広範に中東そのものに親しみを持っており、この地域との絆を深めてきた。また、新国王はイスラム教への関心も高く、実際にイスラム信仰を深く研究し、その教義の多くを受け入れるに至っている。

英国王室の宮殿の多くはイスラム美術で飾られている。チャールズ新国王は、一神教信仰の指導者による異宗教間の対話に熱心であり、また、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館でイスラム美術展を企画したサウジアラビア人のモハメド・アブドゥル・ラティフ・ジャミルにOBEの栄誉を授与した。

かつて予言者たちが彷徨し、またこの地域の歴史と偉大な信仰の礎が構築されたヒジャーズ地方の砂漠で過ごしたことが人生で最も深遠な体験だったと湾岸地域の王族の友人たちに語るほど、チャールズ新国王は中東に傾倒している。

英国はもとより、サウジアラビア、ヨルダン、クウェートを初め世界各国の首脳や王族、またはその代理人が、この戴冠式に出席する予定である。

亡き母エリザベス2世女王が築いた中東との関係を反映し、自身の治世下においても中東との強い絆を保ち続けることがチャールズ新国王には期待されているが、この点についての懸念は不要だ。

例を挙げると、チャールズ新国王にとって、サウジアラビアの故アブドゥラー国王は個人的な友人だった、そのため、2015年1月のアブドゥラー国王の逝去の際、チャールズ新国王はリヤドを訪れ、後継となるサルマン国王に直接弔意を伝え、友人への最後の敬意を表した。

チャールズ新国王は直近では2021年11月にカミラ王妃を伴って中東地域を訪れている。その際は、エジプトとヨルダンに赴いて宗教間の対話の促進を目的とした会談を行った。

ヨルダンでは、サウジアラビアと英国の寄付がその運営に大きな役割を果たしている、シリア難民とパレスチナ難民のキャンプも訪問した。

合計すると、チャールズ新国王は、サウジアラビアを12回、UAE とクウェートをそれぞれ7回、カタールを6回、ヨルダンを5回公式訪問している。

チャールズ新国王の中東への憧れと愛は、彼の水彩画作品にも表れている。サウジアラビアのワディ・アーカムやディルイーヤ、ヨルダンのアカバから着想を得た水彩画を新国王は頻繁に創作している。

当時ウェールズ公だった新国王は、中東に多くの慈善財団を設立した。そうした財団の中でも、特に重要なのは、「より持続可能な世界のためのコミュニティの創出という(当時の)ウェールズ公の構想の実現」を目指すプリンスズ・ファウンデーションである。

プリンスズ・ファウンデーションの目的は、英国内外の青少年のための教育、文化・歴史遺産の理解、機会平等の実現である。同財団は、センターを設けたサウジアラビアやエジプトを初めとする20ヶ国向けの衛星放送プログラムを運営している。

ジェッダ旧市街のアルバラッドにプリンスズ・ファウンデーションは美術工芸センターを設置しており、サウジアラビア文化庁の同地区での修復プロジェクトへの学生の参加を支援している。

2021年の1月10日から3月21日までの冬季にアルウラーで開催されたタントラ・フェスティバルで、プリンスズ・ファウンデーションは、「コスモス、カラー、工芸:アルウラーの自然秩序のアート」と題した展覧会を開いた。また、同財団は、アルウラー王立委員会と共同で一連の体験型ワークショップを行った。

行政執行権は持たないものの、新国王は、信仰の守護者と英国国教会の最高ガバナーという称号を有する。数多くの人々にとって、彼のイスラム教に対する親愛の念は希望の兆しである。

9.11の米国同時テロ事件以降、イスラム関連の織物や庭園、建築を研究しイスラム世界に没頭していたチャールズ新国王は、イスラム恐怖症への批判的な見解を強めた。

チャールズ新国王は、2006年のパキスタン訪問では聖なるコーランを引用し、「心を持つものだけが注意を払い、心を持つものだけが信じ兆しを見る」と述べた。

オックスフォード大学中東研究センターのパトロンも務めるチャールズ新国王は、2016年の湾岸地域歴訪に先立って6ヶ月間にわたってアラビア語を学んだ。

2020年に、初めてパレスチナ自治区を訪れたチャールズ新国王は、パレスチナ人の「自由、正義、平等」を願う一方、パレスチナ人の境遇と生活水準の改善へのさらなる取り組みを英国政府に対して呼びかけた。

チャールズ新国王は、王位に就いたことで、自らの見解を自由に表すことが出来なくなるものの、既にこれまでに中東やイスラム教に対する明快な意見を公にしている。

300万人以上のイスラム教徒が英国で暮らしており、イスラム教は同国で2番目に教徒の多い宗教である。そして、新国王のイスラム教に対する見解はよく知られている。

9月8日のエリザベス2世女王の訃報の後、女王に敬意を表した祈りと礼拝が英国中で行われた。金曜日の礼拝が行われたケンブリッジセントラルモスクでは、イスラム学者のアブドゥル・ハキム・ムラド氏がチャールズ新国王のスピーチの数行を繰り返し読み上げた。新国王は、「私たちが君主主義者であろうとなかろうと、あるいはそうしたことに関心があろうとなかろうと、イスラム恐怖症が蔓延する現在、私たちと共に立ち上がりたいと考える人々がいることには大きな意味があります」と述べたのだ。

チャールズ新国王は、かつて、「キリスト教自体が貧しくなり把握できなくなってしまったこの世界の理解の仕方と生き方を、現在、私たちはイスラム教から学ぶことが出来ます。イスラム教の核心は、宇宙の全体像の護持なのです」と述べたと言われている。

2006年、エジプトにある、イスラム教の教育を学ぶ代表的な大学であるアルアズハル大学において、当時ウェールズ公だった新国王は、「西欧社会の私たちは、イスラムの学者たちに大きな借りがあります。中世ヨーロッパが暗黒時代だった期間、古典学という宝はイスラムの学者たちのあかげで生き延びられました」と述べた。

2010年、オックスフォード大学での講演で、チャールズ新国王は、「イスラム世界は、人類が利用可能な蓄積された叡智と精神的知識の最大の宝庫の1つの番人です」と語った。

イスラム恐怖症と外国人恐怖症が西欧社会で高まりを見せる現在、英国の新たな君主はイスラム教徒のコミュニティを支えようとしている。彼のこの姿勢は、欧米の他のいかなる政治家とも異なる、際立ったものである。

チャールズ新国王は、欧州のブルカ禁止令に公然と反対し、予言者ムハンマドを侮辱したデンマークの漫画を非難したほんの数名の人々の内の1人だ。

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