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気候変動、中東の紛争に対応した解決策の提示はCOP28喫緊の課題

ドバイの外交ラボで「適応策を機能させる」というパネルディスカッションに参加した、アンワル・ガルガシュ外交アカデミー外交アカデミーの研究員マヤ・ケント氏、UAEのICRC代表団長であるクレア・ダルトン氏、UAEのCOP28チームに所属するシニアアドバイザーのヘレナ・デ・ジョン氏、および在UAEノルウェー大使館の代理公使であるトロン・H・G・ルディ氏。(ANJP)
ドバイの外交ラボで「適応策を機能させる」というパネルディスカッションに参加した、アンワル・ガルガシュ外交アカデミー外交アカデミーの研究員マヤ・ケント氏、UAEのICRC代表団長であるクレア・ダルトン氏、UAEのCOP28チームに所属するシニアアドバイザーのヘレナ・デ・ジョン氏、および在UAEノルウェー大使館の代理公使であるトロン・H・G・ルディ氏。(ANJP)
2023年1月17日の「アブダビ・サステナビリティ週間」に展示された、UAEで開催されるCOP28のロゴ。(ロイター)
2023年1月17日の「アブダビ・サステナビリティ週間」に展示された、UAEで開催されるCOP28のロゴ。(ロイター)
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24 May 2023 06:05:39 GMT9
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  • 専門家によると、地域の社会政治的、経済的な不安定性に対する地球規模の行動が不可欠
  • 気候変動対策資金は容易に利用できず、開発における最大の障害となっている

ドバイ:気候変動の壊滅的な影響が不気味な影を落とし、地球は危機に瀕しているため、この急速に変化する世界に対応することが急務となっている。アラブ首長国連邦(UAE)が主催する第28回締約国会議「COP28」に向けて国際社会が準備を進める中、気候レジリエンスと紛争の影響を受ける地域との複雑な相互作用に取り組む上で、この国際的な会合の意義を強調することは極めて重要である。

赤十字国際委員会(ICRC)とノルウェー赤十字社が共同で発表した最近の政策報告書は、この地域における人道的ニーズの深刻化を浮き彫りにしている。「適応策を機能させる:中近東における気候変動・環境劣化・紛争の複合的な影響への取り組み」と題するこの報告書は、この地域のコミュニティが直面している悲惨な状況を明らかにしている。

このICRCの報告書は、気候変動が単なる環境問題ではなく、人間の安全保障に対する重大な脅威であり、既存の脆弱性をさらに悪化させていると強調している。また、周縁化されたコミュニティ、武力紛争、人道的危機の間の複雑なつながりを説明し、これら相互に関連する課題に対処する緊急の必要性を強調する。

気候レジリエンス、紛争地域、気候変動対策資金の緊急の必要性の間にある複雑な相互依存関係を掘り下げるため、専門家パネルが最近ドバイに招集され、この多元的危機を調査している。ICRCのUAE代表団長であるクレア・ダルトン氏、在UAEノルウェー大使館の代理公使であるトロン・H・G・ルディ氏、およびUAEのCOP28チームに所属するシニアアドバイザーのヘレナ・デ・ジョン氏などがこのパネルに参加した。

紛争地域への気候変動対策資金

紛争の影響を受けた国々には、気候変動との闘いだけでなく、複雑な社会政治的ダイナミクスの舵取りにも課題がある。ダルトン氏は、気候変動対策資金は紛争に悩まされている国々へ効果的に配分されなければならないと強調した。同氏はUAEで開催されるCOP28で「気候変動対策資金は実際に適用して使用できる方法で、紛争を経験している国々を対象にした方が良い」という結論を得たいと望んでいる。とはいえ、現在の状況は、信頼性の低い銀行システムや、効果的な気候対策資金の調達を妨げる他の多くの要因などが障害となっている。

今回の報告書は、紛争の影響を受ける国々で、国が主導する気候変動適応プロジェクト用の多国間気候資金アクセスにおいて直面する厄介な障壁を浮き彫りにしている。これらの課題は、厳格なガバナンスの前提条件と、不安定な状況への投資に対する嫌悪感を受けて顕現化する。

2022年1月の時点で、資金調達の承認を獲得したのは、イラク、シリア、イエメンの単一国プロジェクト19件のみで、支出額は気候プロジェクト資金の世界配分のうち0.5%未満である。この深刻な格差は、紛争地域における気候対策資金のアクセスと利用の制限に対処する緊急の必要性を明確に示している。

これらの障害を克服するために、ダルトン氏は社会のあらゆる分野の協力を提唱し、具体的で実行可能な解決策を開発するため協調して取り組む必要性を強調している。

ICRCは、気候変動交渉の最前線で活動していることを認識しており、活動する地域に影響を及ぼす気候変動に対処する必要性を理解している。それを達成するためには、気候変動適応の重要性に関して単なる合意を超えた具体的な戦略と具体的な行動が必要である。

「これを行う必要があると皆が同意している事実ではなく、どうやって実現するかが問題になります。COPの後に必要とされるのですから、明日にも実現可能な、非常に具体的な何かでなければなりません。そして、2つのやり方で、単に交渉という形だけでなく、アクターが集まってこれらの問題を検討する場を提供することで実現すると思います。さらに、実行する方法を見出すことが次に期待されます。残りの問題は、誰がその成果を実現する助けになれるかです。つまり、ソマリア、イエメン、イラクなど、支援を必要とするあらゆる場所に資金を届けることです」とダルトン氏は述べた。

ダルトン氏はまた、紛争地域における気候変動活動の優先順位低下に関連する課題の中で、小規模なイニシアチブがコミュニティのレジリエンスを構築する上で重要な役割を果たす方法について触れ、持続可能な農業の実践に関する教育や、食料安全保障を強化しコミュニティのレジリエンスを構築するための気候変動に耐える品種の種子配布などの解決策を挙げた。

武力紛争は環境に対して、直接的また間接的に二重の影響を及ぼし、人の幸福に深刻な影響を与える。このような紛争によって、環境ガバナンスの構造が侵食され、社会秩序は混乱し、環境劣化を助長する状況がいつまでも続く。その結果、紛争の直接的な環境被害とそれに続く生態系の劣化から、天然資源は利用できなくなり、コミュニティは気候変動の影響を受けやすくなる。

今回の報告書は、意図的な環境劣化行為が、大規模な人口集団が直面する差し迫った危機をどのように高めるかを強調する、説得力のある事例を提示している。注目すべき例として、2014年にイラクのモスル・ダムが占領されたため、ダム崩壊の危機が差し迫っていた。これに付随して生じた、ダムを意図的に破壊しバグダッドの下流で洪水を起こすという脅威は、重要なインフラシステムを保護し、脆弱なコミュニティを保護するため、警戒と責任を強化する緊急の必要性を浮き彫りにしている。

ダルトン氏は、紛争地域の住民と関わり、人々の実体験を認識し、その視点を気候レジリエンスのイニシアチブに組み込むことが不可欠であると強調し、次のように述べた。「私たちは、地域の住民がどのような変化を見てきたのか、どのような解決策を考えているのか、その声に耳を傾ける必要があります」

このアプローチは地元の知識の重要性を認識し、適応戦略がその時々の状況に合わせて適切であり、コミュニティが直面する特定の課題に対応できるようにする。地方、国、地域、世界レベルのつながりを育むことにより、気候変動と紛争から生じる多面的な問題に対処するための多様な解決策とアプローチを組み込んだ、包括的で統合された枠組みを確立できる。

「コミュニティは、どのように解決の一端を担えるか、状況を悪化させないために独自の方法で何ができるかを理解する必要があります。これは人道主義者にとっても全く同じことが言えます。『Do No Harm(害悪を及ぼさない)』原則があります。支援提供の観点から、状況を悪化させることなく人々のニーズに応えるにはどうすればよいのでしょうか」と同氏は語った。

気候対策資金における優先事項の再検討

今回の報告書は、気候変動対策資金の流れ、気候変動に対する脆弱性、紛争によって引き裂かれた国々の間の矛盾に注意を喚起している。UAEのCOP28チームに所属するシニアアドバイザーのデ・ジョン氏は、後発開発途上国としてリストに載る46カ国のうち、22カ国が紛争と脆弱性の影響を受けているという悲惨な統計を強調した。

逆説的ではあるが、これらの紛争に悩まされている国々が受け取った気候対策資金は最少額であり、紛争と気候変動の両方に対する脆弱性を悪化させている。この苦境による悪循環がいつまでも続き、絡み合った課題に効果的に対応しようとする行政能力を妨げている。このサイクルを断ち切るために、デ・ジョン氏は紛争の影響を受けている国々を優先することに新たな焦点を当て、気候対策資金のパラダイムシフトを提唱する。同氏は、気候対策資金の提供者、多国間開発銀行、人道支援組織、平和構築団体と協力して解決策を見つける重要性を強調する。

「これは変化して欲しいと願っています。簡単ではありません。かなり複雑な問題です。しかしCOP28の議長国としてこれに焦点を当てる利点は、すべての気候対策資金の供給者、多国間開発銀行、この分野の人道支援団体や平和構築団体と話し合うことができ、その全員を集めて解決策を検討できることです。解決策はそこにあるからです。このような環境で活躍できる多くのアクターがいるのは分かっています」とデ・ジョン氏は語った。

気候変動適応に関する世界協定

この不均衡に対処するために、デ・ジョン氏は、申請手続きの合理化、紛争の影響を受けているアクターに対する適格基準の調整、さらにプロジェクトの場所の柔軟性向上など、実用的な解決策を含む世界協定を提案する。

「COP28ですべてが変わるわけではありませんが、COP28で非常に大きな一歩を踏み出したいと思っています。そして、私の夢が叶うなら、例えば、すべてのアクターが署名するある種の世界協定という形をとるかもしれません。それには全員が合意する原則だけでなく、これらの問題に対する少なくとも2,3の解決策も含まれるでしょう」とデ・ジョン氏は述べた。

「私たちの提案は、主に先ほど申し上げた世界協定です。これは政策のスペクトラムにおける変化に焦点を当てていると思います。しかし、例えば、政府が強力な適応プロジェクトを開発し適用するのに役だつ、地域の能力強化施設のようなものもあるかもしれず、そうすれば長期的に政府を支援する適応プロジェクトのパイプラインが根本的に構築されるため、必ずしも資金を含める必要はありません」とデ・ジョン氏は述べた。

COP28の議長国として、UAEはさまざまなアクターが一堂に会して解決策を探るプラットフォームの構築を目指している。デ・ジョン氏は、COP28がこれらの複雑な問題に包括的に対処するための足がかりであると主張し、既存の勢いを変革のために活用する必要性を強調した。

ドバイの外交ラボで「適応策を機能させる」というパネルディスカッションに参加した、アンワル・ガルガシュ外交アカデミーの研究員マヤ・ケント氏、UAEのICRC代表団長であるクレア・ダルトン氏、UAEのCOP28チームに所属するシニアアドバイザーのヘレナ・デ・ジョン氏、および在UAEノルウェー大使館の代理公使であるトロン・H・G・ルディ氏。

2023年1月17日の「アブダビ・サステナビリティ週間」に展示された、UAEで開催されるCOP28のロゴ。(ロイター)

 

 

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