
キーウ:ロシア軍は23日、前日にロシア領内の国境地域を装甲車で攻撃してきた武装集団を撃退したと発表した。70人以上の「ウクライナの民族主義者」を殺害し、残りをウクライナに押し戻したとしている。
ロシアのベルゴロド州におけるこの攻撃は、15ヶ月前の戦争開始以来最大級のウクライナ領内からロシア領内への侵攻と見られるが、国外に住むロシア人を用いている反ロシア政府武装組織とされる2つの組織が実行を主張した。
ロシア国防省は、この攻撃の責任はウクライナ当局にあるとしたうえで、ロシア軍は敵の戦闘員らを包囲して「空爆、砲撃、国境部隊の積極的行動」により撃退したと述べた。
同省の声明は、ウクライナの戦闘員70人以上を殺害し装甲車4台とピックアップトラック5台を破壊したとしている。
さらに、「残りの民族主義者はウクライナ領内まで押し戻したうえで、銃撃を継続して完全に排除した」と続けている。
ベルゴロド州知事は、民間人1人が「ウクライナ軍の手で」殺害されたと述べた。
ロイターはこの主張を検証できなかった。
米国務省報道官は23日、ロシア領内での攻撃に米国が供与した武器が使用されたとの報道については懐疑的だとしたうえで、米国はロシア領内での攻撃を推奨しないし可能にすることもしないと述べた。
今回の攻撃を行った2つの組織のうちの1つである「ロシア義勇軍団(RVC)」はソーシャルメディアに、「我々はいつの日かまたここに戻ってくる」と投稿した。
RVCはその後に出した声明の中で、自分たちの部隊が撃退されたことを否定した。「ロシア義勇軍団は損失を被っていない」
もう1つの組織「自由ロシア軍団」は、ロシアの自動車化狙撃部隊を「非武装化」し装甲車を破壊したとしたうえで、侵攻を阻止したとのロシア側の声明は「想像上の損失」のことを言っていると述べた。
同組織はソーシャルメディアへの投稿の中で、プーチン大統領の軍隊は「過去1日間に何の成功も収めていない」としたうえで、「彼らが臆病に藪の中に隠れている間に、我々はロシアの完全な解放という目標に向かって前進する」と述べた。
ウクライナ政府は、この状況を関心を持って見ているとしながらも、同政府には「何の関係もない」と述べた。同政府は、今回の攻撃を行った2つの組織(ロシア曰くウクライナ情報機関が管理する極右ロシア人過激派で構成される組織)のうちの1つが3月に別の国境地域に侵攻した際にも同様の声明を出していた。
現在はロシア安全保障会議副議長を務めるドミートリー・メドヴェージェフ前大統領は、ウクライナ政府の否定は「嘘」であるとしたうえで、攻撃者は「ネズミのように」駆除されるべきだと述べた。
ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラトコフ知事は23日、22日に導入され当局が移動や通信の自由に多数の制限を課すことを可能にしていた「対テロ作戦」体制を停止したと述べた。
同知事は同日のそれ以前に、軍とその他の治安部隊がまだ掃討作戦を行っているとしたうえで、避難した住民に対しまだ戻らないよう呼びかけていた。
同知事は、避難の際に高齢の女性1人が死亡したほか、3人が負傷し治療を受けていると述べた。その後、民間人1人が死亡したと付け加えたが、詳細は明らかにしなかった。
自由ロシア軍団はウクライナを拠点とするロシア人民兵組織で、ロシア反体制派のイリヤ・ポノマリョフ氏が率いている。ウラジミール・プーチン大統領を打倒するためにロシア領内で活動しているとしている。
ポノマリョフ氏はロシアで指名手配されている。当局は、同氏がロシア軍に関する偽情報を広めたとしてテロリストに指定している。
3月の侵攻の際に実行を主張したRVCは、ウクライナを拠点とするロシア人民族主義者のデニス・カプースチン氏によって昨年8月に結成された。5月17日には自由ロシア軍団と手を組むと発表した。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は、同国がウクライナにおいて「特別軍事作戦」を実施している理由の一つは今回のような事件が繰り返されないようにすることだと述べた。
「今回の件は、ウクライナの過激派が我が国に対する活動を継続していることを改めて裏付けるものだ。これは我々に多大な努力を要求するが、その努力は続いている」
ウクライナとそれを支援する欧米諸国は、ロシアの軍事作戦は1991年のソ連崩壊以来独立国であるウクライナから領土を奪うための、挑発によらない侵略だと非難している。ロシアは、曰く拡大を続けるNATOから自国の安全を守るための作戦だとしている。
攻撃者がウクライナ人ではなくロシア人であるとの報道について質問されたペスコフ報道官は次のように答えた。「彼らはウクライナから来たウクライナの戦闘員だ。ウクライナには多くのロシア人が住んでいる。だが彼らがウクライナの過激派であることに変わりはない」
AP