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NATO首脳会議閉幕後、注目されるトルコとロシアの関係

トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。(ファイル/AFP)
トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。(ファイル/AFP)
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14 Jul 2023 06:07:44 GMT9
14 Jul 2023 06:07:44 GMT9
  • トルコ政府によるNATO拡大支持と捕虜交換合意の破棄でロシアが激怒。
  • しかし、貿易への依存を理由にプーチン政権に報復の余地はない、とアナリストがアラブニュースに語る。

メネクセ・トキャイ

アンカラ:多国籍集団防衛機構である北多大西洋条約機構(NATO)首脳会議の閉幕後、トルコとロシアの微妙な関係が注目されている。特に、トルコ政府によるスウェーデンのNATO加盟に対する反対の取り下げは、ロシアのプロパガンダ報道機関から厳しい批判を招いている。

トルコのこの動きは、とりわけロシアのウクライナに対する不当な侵略をふまえると、これまでの西側とロシアの間でバランスを取ってきた振る舞いとは一線を画している。しかし、アナリストらは、両国には相互に有益な経済的結びつきがあるため、この変化が両国関係に大きな影響を与えることはないだろうと考えている。

7月11日以来、ロシアのメディアは直ちにトルコとレジェプ・タイップ・エルドアン大統領の指導力を批判し、トルコ政府との友好関係の信頼性にさえ疑問を呈してきた。

ロシア上院国防・安全保障委員会のヴィクトル・ボンダレフ委員長は、トルコが中立国から非友好国へと徐々に変貌しているとし、トルコの振る舞いは裏切り行為に等しいと非難した。

ボンダレフ氏はロシアの国営タス通信に対し、「残念ながら、ここ数週間の出来事は、トルコが中立国から非友好的な国へと徐々に、そして着実に変わり続けていることを明確に示しています」と語った。そして、トルコの行動は「裏切り行為」に等しいと付け加えた。

モスクワの最近の怒りに拍車をかけているのは、アゾフ海沿岸地域でロシアに投降し、捕虜となったウクライナ兵の送還をトルコが決定したことだ。当初、トルコは戦争が終わるまでは送還しないと約束していた。

このウクライナ兵の解放は、今月初めのウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領とエルドアン大統領との会談を受けて実現した。

マリウポリのアゾフスタリ製鉄所の防衛に参加していたこの5人のウクライナ人兵士は、マリウポリ市陥落後に投降し、捕虜交換協定の一環としてトルコに連行された。協定によれば、5人は戦争が終わるまでトルコに留まることになっていた。

プーチン政権を支持するテレビ司会者のオルガ・スカベーエワ氏は、エルドアン大統領がこのアゾフ連隊兵士の解放についてロシアに事前に通知しなかったことを批判した。

専門家らは、トルコ政府とロシアの間の意見の相違の主な原因として、ウクライナのNATO加盟に対するトルコ政府の継続的な支援と、ウクライナでのドローン製造工場建設を挙げている。ウクライナはドローン「バイラクタルTB2」製造工場の建設を開始した。これは、ウクライナ政府によるロシアの侵略に対するの戦いを強化するための重要な一歩である。この工場建設は、2月にトルコとウクライナの間で結ばれたハイテク産業および航空産業における協力合意を受けたものだ。

ロシアのプロパガンダ報道記者セルゲイ・マルダン氏はトルコの地政学的影響力を否定し、同国の経済の弱体化を強調した。

同氏は、トルコがロシアを強力な同盟国とみなしていると主張し、ロシア政府がエルドアン大統領の再選を支持したことに遺憾の意を表明した。

7月12日、エルドアン大統領は記者会見を開き、スウェーデンのNATO加盟批准は10月かそれより早く行われる可能性があると発表した。

また、アゾフ連隊の司令官らの解放決定には理由があると述べた。

エルドアン大統領は、8月にロシアのプーチン大統領と直接会談し、これらの問題について話し合うことを期待している。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は7月11日、スウェーデンのNATO加盟反対を取り下げたトルコの決定に関する質問に答え、トルコ政府はいつの日か欧州連合(EU)への加盟が許可されるかもしれないという幻想を抱くべきではないと述べた。

「誰も、ヨーロッパ人の誰も、トルコが欧州に加わることを望んでいません。そして、トルコの私たちのパートナーは、楽観視すべきではありません」と述べた。

しかしペスコフ氏は、NATO拡大をめぐる意見などの相違にもかかわらず、ロシアはトルコ政府との友好関係を維持することを望んでいることを強調した。

トルコの元外交官で、イスタンブールを拠点とするシンクタンクEDAMの会長であるシナン・ウルゲン氏によると、トルコの親欧米的な動きは確かにロシアに影響を与えているという。

「このことは、ロシアがNATO加盟国の中で唯一、ハイレベルの対話を行い、制裁を課していない国であるトルコに、ロシアがどれほど依存しているかを示しています」と同氏はアラブニュースに語った。

「トルコは依然としてロシアにとって重要な販路です。トルコとロシアの間には非対称的な関係があり、それはウクライナ戦争が始まって以来、トルコ側に大きな利益をもたらしてきました。その部分を計算に入れると、ロシアから対抗する動きがないことが説明できます」とウルゲン氏は語った。

ロシアはまた、ロシアのエネルギーへの依存を減らすという欧州のプロジェクトに対応するため、ガス輸出を促進する新しいエネルギー拠点をトルコに建設しようとしている。

ウルゲン氏は、ウクライナが黒海経由で穀物を輸出できるようにする合意に関与する船舶を保護するなど、トルコがさらに親欧米的なジェスチャーをすると予想している。

そして、「ロシアがこの黒海経由のウクライナ産穀物輸出合意から離脱すれば、強いメッセージを送ることになるでしょう」と語った。

トルコ政府とロシア政府はさまざまな政策分野で意見が相違しているが、専門家らは両国の利害が一致するところでは今後も協力が続くだろうと予測している。

ワシントン研究所の上級研究員であるソナー・カガプタイ氏は、トルコの外交政策は大きく転換するのではなく、取引的かつ現実的なものにとどまるだろうと指摘する。

「エルドアン大統領はこの機会を利用してジョー・バイデン米大統領とより緊密な関係を築く可能性が高く、ワシントン訪問を視野に入れているようです」とカガプタイ氏はアラブニュースに語った。

そして、「これは、欧州連合関税同盟との関与を深め、近代化し、トルコ経済に対する市場の信頼を回復するといった利益を確保するためのチャームオフェンシブ(魅力攻勢)です」との見方を示した。

「結局のところ、これは外交政策の方針転換ではありません。トルコ経済をより自立させるために経済の現状を再考するものです。トルコとロシアの関係は今後も経済的な現実と戦略的な考慮事項の影響を受けることになるでしょう」とカガプタイ氏は付け加えた。

トルコによるバイデン大統領とプーチン大統領との関係のバランス取りがどの程度まで可能かは、まだ不透明だ。7月12日の夜、バイデン大統領は突然のツイートで、エルドアン大統領の「勇気、リーダーシップ、外交」に感謝した。

さらに、「今回の首脳会議は、NATO防衛に対する我々のコミットメントを再確認するものであり、我々がそのコミットメントをさらに強化し続けることができることを願っています」と付け加えた。

 

 

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