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チュニジアで悲惨を味わう移民たち

2023年4月18日、チュニジアのスファックス沿岸近くにて、イタリアへの渡航を試みている際に、チュニジア国家海上警備隊によって海上で制止される主にサブサハラアフリカの移民たち。(AP通信/資料写真)
2023年4月18日、チュニジアのスファックス沿岸近くにて、イタリアへの渡航を試みている際に、チュニジア国家海上警備隊によって海上で制止される主にサブサハラアフリカの移民たち。(AP通信/資料写真)
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23 Jul 2023 09:07:49 GMT9
23 Jul 2023 09:07:49 GMT9
  • 欧州の指導者たちは侵害のさなか、チュニジアに数百万ユーロを提供している
  • ローマで23日に開かれる、反移民ビジョンを追求する移民サミットを活動家は恐れており、そのビジョンではアフリカ人を欧州へ来させないことはアフリカの義務だとしている。

チュニス:チュニジアの港町スファックスにいる、欧州を新天地としたい移民たちは現在、人種差別に色濃く染まった緊張の高まりの中、その共同責任を果たしつつ、沿岸に辿り着く人数を絞ろうとしている欧州の指導者たちに怯えている。

ここ数週間のうちにスファックスで爆発的に高まった、チュニジア人と主にサブサハラ黒人移民との間の敵対心は、この北アフリカの国がいかにして移民に取り組むかの分岐点として広く捉えられている。

欧州の指導者たちは侵害のさなか、チュニジアに数百万ユーロを提供している。ローマで23日に開かれる、反移民ビジョンを追求する移民サミットを活動家は恐れており、そのビジョンではアフリカ人を欧州へ来させないことはアフリカの義務だとしている。

不安定なボートでイタリア渡航を目指した数百人の移民たちが海で溺死しているが、今でも移民たちは恐怖にすくみながらも地中海を渡る機会を待っている。移民たちの中には、当局者によって殴打されたり、バスで新たな行き先へと連れて行かれたり、砂漠に置き去りにされた者もいる。

コンゴのムサ ハーリドさんはチュニジアから追い出された移民集団にいた一人で、リビアの国境警備隊によって先週末、不毛地帯で身を寄せ合っていたところを発見された。ハーリドさんによると、チュニジア当局によって所有物やお金を奪われた後で、チュニジアの港町スファックスから移送され、食料や水もないまま下車させられたという。

「再度チュニジアに入ろうとしたところ、ひどく殴られました。手の骨が折られ、頭を殴られました」と、リビアのアル・アッサ国境地点にて、ハーリドさんは布を巻いた手首を上げながらAP通信に語った。「この砂漠に数日間滞在しています。お願いです」。

北アフリカ、西アフリカ、欧州の人権活動家らは今週チュニスで会談し、ローマで近々行われる会合を非難して、結局は金銭的インセンティブの価値と欧州沿岸からの移民排斥の価値を交換することになるだろうと予測した。

「現在、地中海が希望するのは二大陸の架け橋をやめることですが、欧州全域とアフリカ大陸全域を壁が隔てています」と、20日の会合を組織したチュニジア社会的・経済的権利フォーラムは述べた。

イタリアは到達する移民数を減少させて、今世代で最もひどい経済危機にあるチュニジアを安定させようとしている。今年のスファックスには数千人の移民が到着しているが、市内に何人いるかについて、そして反移民運動が始まってから何人が出ていったかについて、信頼できる数字はない。

移民への広範囲にわたる侵害が報じられているリビアに代わって、チュニジアは欧州の入り口であるイタリアへの主な足がかりの役割を果たしている。国連難民高等弁務官事務所によると、今年が始まってから先週の日曜日までにイタリアに到着した76,325人の移民のうち、チュニジアから海路で来たのは44,151人で、一方リビアからは28,842人だったという。

イタリア最南端のランペドゥーザ島の一時収容施設を訪れる移民数は増加しており、当局によると、日曜日に施設にいたのは2,500人で、それに加えて一晩で266人が到着したという。

ますます独裁色を強めているチュニジアのカイス・サイード大統領は2月、移民への人種差別的反応を煽って、大規模なサブサハラアフリカ人の到来はチュニジアのイスラム的アイデンティティを消し去ろうとする筋書きの一部であると述べた。その後サイード大統領は発言を撤回しようと、人種差別的見解を否定して、移民問題はその原因を扱わなければならないと述べた。

移民問題の原因はローマにおける会議の一つの目的となっている。会議には、中東からサヘル地域や北アフリカに至るまでの、国や自治体の長や大臣ら20人近くと、欧州委員会委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエン氏、居並ぶ金融機関が集結する。

一日サミットの開催は、地中海に大きな影響を与える論点の中央にイタリアを位置付けたいとする、イタリアのジョルジャ・メローニ首相の尽力によるところもある。会議の目的は、移民発生の根本原因に取り組むことで移民数を減少させるための具体的な提案をしつつ、移民の密輸を防止することにある。エネルギー源の多様化策などのエネルギー政策や、気候変動についても議論されることになっている。

会議は多くの人権擁護派から、今後のロードマップと見なされている。

ローマでのサミット開催は、サイード氏が「包括的戦略パートナーシップ」の覚書に署名した会議から1週間後のことで、メローニ氏とフォン・デア・ライエン氏も出席していた。財政上の詳細は公開されていないが、チュニジアの苦しい経済の再始動に手を貸すため、EUは10億ユーロ(11億ドル)近くの約束を提示した。それに加えて、国境管理、海上での捜索救助活動、居住許可証なしでの移民の本国送還に1億ユーロ(1.11億ドル)を約束した。

チュニジアの大統領は取り決めに署名したものの、過去には、チュニジアは欧州の国境警備になるつもりはなく、移住地を提供するつもりもないと強く主張していた。

お金と命の交換は、価値観への裏切りであると人権団体は言う。一部の反対者にとっては、このような取り決めは新植民地主義の新形態なのである。

「EUはあえて(人権侵害の)恒久化を試みるだけにとどまらず、欧州のパートナーとの温かい関係を誇示する可能性があり、後退しつつある経済の財政的支援の取り付けを自らの功績だと主張する可能性がある、抑圧的な統治者の奮励すらしています」とニューヨークに拠点を置くヒューマン・ライツ・ウォッチはローマでのサミットを前に述べた。

大きな期待を砕かれた移民たちは、多くの移民たちをスファックスのシェルターから見知らぬ土地へと強制的にバス移送させた、反移民への巻き返しの恐怖に身をすくめる。

赤新月社によると、チュニジアの治安部隊は砂漠にあるリビアとの国境地帯に今月、少なくとも500人の移民を置き去りにしたが、7月10日にはチュニジアの他地域へ移送したという。

忘れられた者もいた。

リビアの国境警備隊が6月16日に述べたところでは、ここ数日のうちに、気温40℃(104℉)の中で立ち往生していた、少なくとも6人の男女および子どもを見つけたという。その日見つかったグループの他にも、アル・アッサ国境地点近くの熱い砂漠の中で、数日間身を寄せ合っていた移民たちが国境警備隊によって救助された。その光景はAP通信が映像に収めている。

「虐待や殴打を受けて被害に遭った人がいます…チュニジアの国境警備隊によってです」と、移民の証言を引用したのだと言葉を選ぶように言い添えながら、アル・アッサ砂漠国境警備隊のアイマン アル カドリ少佐は言った。

AP

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