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イラン、またしても金融汚職の悲惨な結果に直面

金融汚職はイラン経済に莫大な損害をもたらしている。(AFP)
金融汚職はイラン経済に莫大な損害をもたらしている。(AFP)
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12 Dec 2023 01:12:59 GMT9

イランで、茶の輸入に関連した20億ドルの新たな贈賄事件が表面化した。イランの現政権は、この事件について、むしろ自分たちは暴露した側であると称し、改革派の前政権に責任があると示唆している様子だ。実際に、茶輸入贈賄事件は、イスラム共和国が成立してから数十年間に行われた数十億ドルにのぼる多くの腐敗した金融取引の一つに過ぎない。

例えば、強硬派でポピュリストのマフムード・アフマディネジャード前大統領の政権時代には、実業家のババク・ザンジャニ氏に支払われた数十億ドル相当の手数料をめぐる贈賄事件が報告されている。これに加えて、パディデ・シャンディズ不動産汚職事件や、イスラム革命防衛隊が税関や貿易関税の脱税に関与する動きが強まっており、アフマディネジャード氏は国内の重要な港や空港を支配しているイスラム革命防衛隊を「密輸兄弟」と表現したほどだ。

さらに、ハッサン・ローハニ政権下で報じられた天文学的な額の給与事件など、多くの事件が存在している。これらの事件は全て、イランの民間ビジネス環境と投資に悪影響を及ぼしており、その結果、同国は莫大な経済的損失を被っている。

最近の茶輸入贈賄事件に関して言えば、デブシュ・ティー社は海外から茶を輸入しており、そこで20億ドルの不正に関与していた。同社は、通貨の不正使用に関与し、闇市場よりも安い価格で政府から外貨を受け取っていた。安く手に入れたドルをインド産茶の輸入に充てる代わりに、同社はその大部分を闇市場で売却することで莫大な利益を得て、残りの外貨でケニアから低品質の茶を輸入していた。

同社は、2018年からこうした取引に関与していたという。2019年から2022年の間、同社が得た外貨の総額は23億7000万ドル。茶はコーヒーと並びイラン国民の生活に必需な人気の品の一つである。この重要な製品を独占していることに加え、同社はイラン国内の茶輸入に割り当てられる補助付き通貨の80%近くを獲得している。イランの新聞報道によると、過去2年間に同社に割り当てられた金額は、医薬品や粉ミルクの輸入に割り当てられた額に匹敵するという。このため、その後援者や受益者の身元について疑問の声が上がっている。

ローハニ前大統領の政権に近い関係者は、輸入茶の補助金の80%がなぜ特に同社に割り当てられ、同じ分野に従事する他の数十社よりも同社が優先されるのか疑問を呈している。イラン商工会議所の元会員であるペドラム・ソルタニ氏はラジオ・ファーダに対し「このような巨額の資金割り当ては、広範な調整と協力、特別な許可、高官の承認、自由市場での通貨売却を容易にする大規模な共謀ネットワークが不可欠だ」と語る。これらの発言は、同事件が単に外国から茶を輸入するというより大きな事件であるという事実を示唆している。

汚職は、イラン経済とイラン国民の生活環境に莫大な損害をもたらしている

モハメド・アル・スラミ博士

ここ数十年間、金融汚職がイラン経済とイラン国民の生活環境に莫大な損害をもたらしてきたことは明らかだ。こうした損害には、外国投資、国内投資、資本の逃避、自由競争の欠如、生産的資産の流動化、投資や生産よりも迅速に得られる利益や投機を優先する傾向などが含まれる。ここ数年には、イラン市場からの資本逃避が急増し、投資は近隣諸国やトルコの不動産セクターへと向かっている。

国連貿易開発会議によれば、イランへの海外直接投資は2017年の50億ドルに対し、2022年には15億ドルに減少したが、これは驚くべきことではない。2017年の数字でさえ(2015年の核合意調印後にあたる)、国家間の海外投資フロー全体のわずか0.5%を占めるに過ぎず、著しく低い水準だ。また、自動車、民間航空、農業分野など、2018年以降の対イラン制裁のためにダメージを受けた他の分野は言うに及ばず、石油などの単一セクターでも20億ドルの投資を必要としていることも書き添えておく価値があるだろう。

金融汚職は、関税、税金、補助金配分のいずれに関わるかを問わず、イランの国庫と開発割り当てから巨額の資金を奪っている。その上、特権階級で権力の中枢に近い一部の人々の元に富が集中している。その一方で、大多数の国民は、ごく基本的な利益やニーズを満たすために賄賂の支払いを余儀なくされている。

カイハン紙の元編集長メフディ・ナシリ氏は、最近の茶輸入汚職事件に関連して、「最高機関」に非難の矛先を向けた。彼は自身のテレグラム・チャンネルにおいて、「茶輸入に関連した最近の大規模な汚職事件は、(こうした機関で全権力を握る最高指導部によって任命された、あるいはその傘下にある)情報機関や司法機関による、直接的であれ間接的であれ、大規模な介入・圧力・影響力なしには発生しなかっただろう」と発言した。

このような認識をもっともらしくするのは、トランスペアレンシー・インターナショナルが今年初めに発表した報告書である。その中で、イランは腐敗認知指数で180位中147位と、アフガニスタンより上だがウガンダより下という低順位に甘んじた。20年前の順位はもっと高く、78位だった。

注目すべきは、投資や大規模プロジェクトの大半の進捗は、石油、ガス、石油化学、自動車、請負、対外貿易、鉱業などの分野で活動するイラン革命防衛隊と、同組織の巨大な経済コングロマリットにかかっていることだ。この事実は、イランにおける民間セクターの発展と、将来制裁が解除された場合の外国人投資家の自由な事業活動にとっての、正真正銘の障害となっている。

  • モハメド・アル・スラミ博士は、国際イラン研究所(ラサナー)の創始者であり所長である。 X:@mohalsulami
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