
アンマン: 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の蔓延は、アラブ社会での女性の失業者を増大させている。一方で、デジタルスキルに対する需要の急増は、そもそも女性の4人に1人しか仕事を持たない地域で、多くの女性が仕事を見つけることに貢献する可能性がある。
新型コロナウィルス感染症のパンデミックは、伝統的に女性が就いていた小売、観光、ホスピタリティなどの仕事に特に大きな打撃を与えている。専門家は、しかし、再訓練を受けることができる人は、デジタルマーケティング、eコマース、オンラインカスタマーサポートなどの成長分野への転職機会をつかむことができると述べる。
「これは大きなチャンスです。eコマースなどの分野は、比較的迅速にスキルを新たに獲得できる分野です」と、中東および北アフリカで若者向けに職業訓練を提供する非営利の機関、Education for Employment(EFE)の上級副社長であるジャスミン・ディ・フロリオは述べる。
「私たちは若い女性に多くのデジタルスキルを教える必要がありますが、同時に人間の技能も教え続ける必要があります。共感、チームワーク、リーダーシップなどです。デジタル化が急速に進んでいるため、対人スキルの高い人には、今ではさらに大きな需要があります」
2020年のマッキンゼーの調査によると、第4次産業革命(人々の生活や働き方を変えるデジタル社会深化の新時代を指す用語)によって、2030年までにこの地域の女性の雇用機会は倍増すると予想されている。
多くの女性はすでに新しい職業機会を見つけている。彼女たちが新しく身に着けた技術スキルを活かすことで、時には彼女たち、女性の方が、男性よりも生来の優位性を持っている仕事で働くことができている。
EFEの研修生の1人であるワラー・シャハッデは、スマートフォンの修理という個人事業を営んでいるが、保守的なヨルダンのコミュニティで、男性に自分のスマホの個人的な写真を見られたくない女性の間で、彼女のサービスに対する需要は高いと述べる。
「テクノロジーは常に進化しています。新しいデバイスも次々と登場してきて、その修理に対する需要も常にあるので、自らの技術スキルも最新の状態に保つ必要があります」と、ヨルダン中南部のタフィラ県出身のシャハッデさん(30歳)は言う。
「コロナウィルスの蔓延による遠隔学習や在宅勤務の増加で、電子デバイスの使用率が高くなっているため、そうしたデバイスの故障が頻繁に発生し、修理依頼の電話が増えています」
オックスファム(Oxfam)によると、今回のパンデミックにより、2020年には70万人の中東の女性が失業すると予想されている。これは、総雇用者数170万人の約40パーセントの雇用が失われる計算になる。
中東と北アフリカの女性の労働力は全体の4分の1しか占めていないにもかかわらず。この地域の労働市場への女性の参加率は世界で最も低い状況にある。
国連女性機関(UN Women)によると、レバノンのように経済的打撃が大きい国では、2020年6月時点の女性の失業者数は2018年、2019年と比較して63%跳ね上がっている。
育児や子供の遠隔教育の見守りなど、いわゆる無給労働の追加負担によって、アラブ諸国の男性と女性の間のデジタル格差が拡大する可能性があるが、デジタル社会での新しい仕事の見通しは、ある程度女性の失業問題の救済となる可能性がある。
ただ、この地域のデジタルトランスフォーメーションの研究者であるマヌエル・レンゲンドーフによれば、現在の状況は、再訓練を女性が受講することを更に困難にしている可能性があると述べる。
「多くの人々はインターネットへのアクセスはできるかもしれませんが、そもそも複数のラップトップやデスクトップコンピューターを持っていない家庭が地域全体に多くいます」と、彼は述べる。
「デバイスの少なさがまた、女性のスキルアップまたは新しいスキル獲得への現在の障害でもあり、今後の課題ともなっています」
国際電気通信連合(International Telecommunication Union)によると、アラブ諸国の男性と女性の間のデジタル格差は、2013年から2019年の間にすでに19%から24%に拡大している。
ロイター