
ナタリー・グーレ
パリはUAEのシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領の訪問でまだ賑わっている中、今はジョー・バイデン米国大統領との会談の直後にフランスの首都に向かうサウジアラビアのモハメド・ビン・サルマン皇太子を待ち望んでいる。
この7月、パリはアラビア半島の2大勢力であるUAEとサウジアラビアにとって最高の訪問先となる。そこには仕掛けがある。フランスとサウジアラビアの連携は、軍事協力、経済協力・投資、気候変動対策、共通のエネルギー政策戦略の確立、イスラム過激派との戦いなど、UAEと同じである。
サウジアラビアはこれまで数々のテロに悩まされており、過激派の脅威への対処を熟知している。このような治安上の脅威に対処するため、フランスで脱急進化部隊(QPR:Quartiers de Prise en Charge de la Radicalisation)が設立される20年前には、元過激派のカウンセリングとケアを行う機関が設立された。
この数年後には、人工知能を使ってソーシャルネットワークを調査し、テロリストを追い詰める画期的なEtidal(過激主義対策グローバルセンター)が登場した。
そして、2008年にユネスコの世界遺産に登録されたアル・ウラーとヘグラの変貌における桁外れの文化協力がある。ナバテア文明の最も重要な財宝があるこの遺跡は、ジェラール・メストラレ氏が統括する仏アル・ウラー開発庁によって開発されている。
この壮大な遺跡は、フランスの考古学者らによって10年以上にわたって発掘されてきたものだ。これまでサウジアラビアを訪れることを考えなかったような観光客にとっても、特別な訪問先となることだろう。
さらに注目すべきは、紅海の海岸に建設中のスマートシティ「NEOM」だ。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が主導する「ビジョン2030」戦略による国の近代化政策の以前には、不信感が広がっていた。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下のフランス訪問は、エネルギー危機と新しい同盟構造が背景にある。
ナタリー・グーレ
しかし、これが現在のサウジアラビアの若者たちの現実であり、世界はこの5年間に起こった異常な変化に気付くべきだ。
しかし、こうした仕掛けの先に、今回の訪問の真の実体がある。エマニュエル・マクロン大統領が、地域の緊張が最も高まっていた2017年に行った完璧な外交パフォーマンスを覚えているだろうか。同氏のリヤドへの訪問は、その緊張を和らげるのに役立った。
ムハンマド・ビン・サルマン皇太子のフランス訪問は、エネルギー危機と、ロシア、トルコ、イランからなる枢軸に見られる同盟の新たな構造、およびサウジアラビアが当事者でないアブラハム合意の影響などを背景としている。
サウジアラビアは、パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)と旧態依然の思想から完全に見放されたパレスチナ人を守るために、重要な役割を担っているのである。
世界は不安定であり、安全保障上の大きな課題に直面しており、それゆえ、サウジアラビアのパリ訪問は強いシグナルとなる。
サウジアラビアのパリ訪問は、マクロン大統領がベナンとカメルーンをざっと視察し終えた後に行われる。私たちはアフリカにおけるサウジアラビアの役割を知っており、西アフリカのテロに対する共同行動も重要な話題になるだろう。また、同地域の開発を後押しするため、サウジアラビアは2021年に「サウジアラビア開発基金」を通じて10億ドルを投資した。
マクロン大統領と皇太子が協議する議題には、間違いなくアフリカが含まれるであろう。
イランも同様で、代理戦争戦略やフーシ派武装組織を通じてイランは依然としてサウジアラビアの脅威であるにもかかわらず、核合意の復活は難しく、当面のもう一つの懸案事項である。
最近まで変化への抵抗の代名詞だったサウジアラビアが、非常に急速な近代化という慎重を要する局面に踏み出している。
伝統と現代の狭間にあるサウジアラビアは、現在も社会の変革のプロセスにある。人口の4分の1以上が14歳以下であることを考えると、後戻りはできないため、重要な段階である。
フランスは、制度に関わるものだけでなく、人権などの難しい問題に影響があるものも含めて、こうした変化を支援しなくてはならない。サウジアラビアはフランスのパートナーである。
数年前、パリで皇太子殿下にゆっくりとお会いするという栄誉に恵まれた。その会談中、皇太子はサウジアラビアの近代化に関する2030年計画の概要を明快に説明された。このプロセスは順調に正確に進んでおり、その証拠に、リヤドやジェッダの街角やレストランを見れば、その様子がよく理解できる。
すべてが完璧というわけではないが、リヤドと同じようにパリも一日にして成らずである。