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イスラエルの最重要指名手配者:イスラエルが殺害を狙うガザのハマス指導者3人

エルサレムのアル・アクサ・モスクにおける緊張の高まりをめぐり、ガザ市で反イスラエル集会に参加するパレスチナ人ハマス支持者を見守る、ハマス指導者のヤヒヤ・アル・シンワル。2022年10月1日。(ロイター)
エルサレムのアル・アクサ・モスクにおける緊張の高まりをめぐり、ガザ市で反イスラエル集会に参加するパレスチナ人ハマス支持者を見守る、ハマス指導者のヤヒヤ・アル・シンワル。2022年10月1日。(ロイター)
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03 Dec 2023 02:12:22 GMT9
03 Dec 2023 02:12:22 GMT9
  • 2人の軍事専門家によれば、シンワル、デイフ、イッサを殺害すればイスラエルは重要な象徴的勝利を宣言できるが、この目標の達成にすら、長い時間と費用がかかり、しかも成功の保証はない。

ガザ:イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃の後、テルアビブの事務所の壁にポスターを貼っている。そこには、何百人ものパレスチナ過激派組織の司令官たちの顔写真がピラミッド型に並べられている。

一番下はハマスの下級現場指揮官たち。一番上には、先月の襲撃の影の首謀者であるムハンマド・デイフを含む、上級指揮官たちがいる。

イスラエルが10月7日の攻撃に対する報復としてガザに侵攻した後、このポスターは何度も刷り直された。

だが、イスラエルのヒットリストの上位にいる3人は、依然逃走中だ。ハマスの軍事組織、エゼディン・アル・カッサム旅団のトップであるデイフ、その副官のマルワン・イッサ、そして、ガザにおけるハマス指導者であるヤヒヤ・シンワルである。

カタールが仲介した7日間の停戦が終了し、2日にガザで戦闘が再開された。イスラエルの考え方に詳しい同地域の4人の情報筋がロイターの取材に応じ、イスラエルのガザ攻撃は、ハマスのこれらトップ司令官3人が殺害されるか、捕らえられるかするまでは、終わりそうにないと述べた。

ガザの保健当局によれば、7週間にわたる軍事作戦で1万5000人以上が死亡しており、国際社会の反発を招いている。

61歳のシンワルと、それぞれ58歳のデイフとイッサはハマスのトップで、10月7日の攻撃を計画、実行した秘密の軍事評議会を構成している。この攻撃で約1200人が死亡、約240人が人質となり、イスラエルの75年の歴史上最も血なまぐさいものとなった。

これら3人の指導者はおそらくガザの地下壕から、ハマスの軍事作戦を指揮し、捕虜と人質の交換交渉を主導している、と3人のハマス情報筋が語った。

この3人の殺害や捕捉は長く困難な作戦となる可能性が高いが、イスラエルが全面戦争からそれほど激しくない対反乱作戦に移行しようとしているサインかもしれない、と地域の有力情報筋の3人は指摘する。もちろん、イスラエルがハマスとの戦闘をやめるわけではない。

ベンヤミン・ネタニヤフ首相を含む政府関係者は、イスラエルが目指すのは、ハマスの軍事・政府機能の破壊、人質の奪還、そしてガザ周辺地域が再び10月7日のような攻撃の脅威にさらされることがないようにすることだと述べている。こうした目標の達成には、ハマス指導者の排除が不可欠だ。

ガラント国防相は先週の記者会見で、「彼らはもう長くはない」と語り、イスラエルの諜報機関モサドが、これらのハマス指導者たちを世界のどこであれ追い詰めるだろうと示唆した。イスラエル政府にコメントを求めたが、回答はなかった。

2人の軍事専門家によれば、シンワル、デイフ、イッサを殺害すればイスラエルは重要な象徴的勝利を宣言できるが、この目標の達成にすら、長い時間と費用がかかり、しかも成功の保証はない。

ドローンや航空機を使い、イスラエル軍は人口の少ないガザ北部と西部を掃討したが、戦闘の最も困難かつ破壊的な段階は今後生じるのかもしれない、と軍事専門家たちは語る。

イスラエル軍はまだガザ市内深くまでは進入しておらず、ハマス司令部が存在するとされる迷路のようなトンネルを襲撃したり、人口密度の高い南部に侵攻したりしてはいない、と彼らは付け加えた。トンネルの中には深さ80メートルほどのものもあるとされ、上空から破壊するのは困難だ。

ワシントン近東政策研究所の軍事・安全保障研究プログラムのディレクター、マイケル・アイゼンスタット氏は、ハマスも含め、どちらの陣営も、殺害されたハマス戦闘員の数は正確にはわからないだろうと述べた。

「(イスラエルが)我々はシンワルを殺した、マルワン・イッサを殺した、ムハンマド・デイフを殺した、と言えるなら、それは非常に明確で象徴的で、実質的な成果です」とアイゼンスタット氏は言い、イスラエルはジレンマに直面していると付け加えた。

「もし彼らを捕まえられなかったら?捕まえるまで戦い続けるのでしょうか?そして、もしも、万が一、ずっと捕まえられなかったらどうするのでしょう?」

より達成可能な目標

イスラエル軍はガザ北部の約400のトンネル道を破壊したと発表したが、それはハマスが長年にわたって築き上げてきたネットワークのごく一部にすぎない。イスラエル国防軍(IDF)は、ガザ作戦で少なくとも70人のイスラエル兵が死亡し、10月7日の攻撃を含めると合計392人が死亡したと発表した。

ある士官は匿名を条件に記者団に説明し、ハマスの戦闘員約5000人が殺害されたと推定され、これはハマスの全兵力のおよそ5分の1に相当するとした。同士官によれば、6つの大隊(それぞれ約1000人)の戦力が著しく低下したという。

レバノンを拠点とするハマス指導者、オサマ・ハムダンは、死傷者数は虚偽であり、軍事的成功の不足を隠す「イスラエルのプロパガンダ」だと述べた。

ガザのあるハマス関係者は電話で、軍事組織としてのハマスを壊滅させるとは、一軒一軒の家屋での戦闘や、ガザの地下に張り巡らされたトンネル内での戦闘を意味し、長い時間がかかるだろうと語った。

「1年程度でなんとかなると考えるのは、楽観的というものです」と彼は言い、イスラエルの死者数は増えるだろうと付け加えた。

ジョー・バイデン大統領政権は、ハマスの指導者の排除は、イスラエルが表明しているハマス殲滅という目標よりも、イスラエルにとってはるかに達成可能な目標だと考えている、と3人のアメリカ政府高官がロイターに語った。

中東で最も親密な同盟国であるイスラエルを断固支持する一方で、米政府高官は、ハマスの完全な殲滅を望むイスラエルが推し進める終わりの見えない紛争により、ガザで多くの市民が犠牲になり、地域紛争リスクが長期化することを懸念している。

米国は、20年にわたる世界的な対テロ戦争でアルカイダやダーイシュなどのグループと長年戦い、その教訓を学んだ。

イランの支援を受ける過激派は、イスラエルによるガザ空爆について米国を非難し、すでにイラクとシリアで米軍を標的とした攻撃を繰り返している。先週のある攻撃では、米軍兵士8人が負傷した。

実存的脅威

10月7日のハマスの攻撃によって生じたイスラエルの衝撃と恐怖は、紛争緩和を困難にするかもしれない。

元イスラエル戦略省パレスチナデスク責任者のコビ・マイケル氏は、海外で聞かれるイスラエルに対するネガティブな見方に対抗し、ハマスはイランの支援を受ける広範な枢軸の一部で、イスラエル国家の存続を直接脅かす存在であると認識されているため、戦争継続には民衆の強固な支持があると述べた。

シンワルを捕らえることは重要な勝利だが、必ずしも最終的な勝利とはならない、とマイケル氏は言う。

「イスラエル社会は、自分たちは存亡の危機に直面していると認識しており、目の前の選択肢は2つしかありません。存続するか否かです」と彼は言う。

戦争の目的がハマスの軍事力と政府能力の解体であることに変わりはなく、戦後のガザでは激動の時期が続くかもしれない、とマイケル氏は言う。そして、より大きくて長期的な課題とは、イスラエルに激しく対抗するハマスの大衆的な魅力を、教育と支援活動を通じてパレスチナ人の間から取り除くことだ、と述べた。

イスラエルは定期的にハマス大隊幹部の死亡を発表している。イスラエル軍のある士官は匿名を条件に記者団に、イスラエル国防軍は、こうした戦闘レベルの指揮官の排除がハマスの軍事力解体に不可欠だと考えていると述べた。

暗殺の失敗

ハマス指導者の3人は、イスラエルによる数々の暗殺作戦から逃れてきた。特にデイフは、2021年までに7回におよぶ暗殺未遂を逃れ、片目を失い、脚に重傷を負った後、表に姿を見せない。

2014年のイスラエル軍の空爆で彼は、妻、3歳の娘、生後7カ月の息子を失った。

イスラエルやパレスチナの情報筋は、3人はガザの地下にあるトンネルに潜伏していると推測しているが、3人の考えに精通する情報筋5人によれば、彼らはガザ内のどこにでもいる可能性があるという。

捕らえどころのないデイフやイッサとは違い、過去にしばしば市民集会に姿を現したシンワルも、イスラエルによる信号の追跡を恐れ、もはや電子機器を使用していない、とハマスの情報筋は語った。

「影の男」として知られるイッサは、おそらく3人の中で最も知名度が低いが、ハマスの近年の重要決定事項の多くに関与しており、他の2人のどちらかが殺されたり捕らえられたりした場合には、その後継者となるだろう、とハマスの情報筋は語った。

3人とも、1948年にイスラエルが建国された地域から逃れた、あるいは追放された難民の家庭に生まれた。

そして3人とも、イスラエルの刑務所で何年も過ごしている。シンワルは、2人のイスラエル兵士の誘拐と殺害、および4人のパレスチナ人協力者の殺害のかどで1988年に投獄され、22年間服役している。

彼は2011年に、その5年前の、国境を越えた襲撃でハマスに捕らえられた兵士の一人、ギラド・シャリトと引き換えにイスラエルによって解放された1027人のパレスチナ人の囚人の中で、最も上級だったとされる。

デイフと同様、イッサの顔の特徴は、彼が手助けしたシャリト捕虜交換の際の集合写真に登場した2011年まで、一般には知られていなかった。

2009年から2011年までドイツ連邦情報局(BND)の仲介役を務めたゲルハルト・コンラッド氏は、シャリト捕虜交換の交渉中にイッサに会った数少ない人物の一人である。

「非常に几帳面で慎重な分析者という印象を受けました。ファイルの中身を暗記していました」と、コンラッド氏はアルジャジーラ・テレビに語った。

イスラエルは過去にハマスの指導者たちを殺害しており、その中にはグループの創設者であるシェイク・アフマド・ヤーシーンや、2004年の空爆で殺害された元指導者のアブデル・アジズ・アル・ランティシらがいる。新たな指揮官たちが、彼らの地位に上ってきた。

「イスラエルはシェイク・ヤーシーンやランティシらを殺しましたが、ハマスは終わっていません」と、同グループの政治局メンバーでレバノンを拠点とするハムダンは言う。「この戦いでは何が起こるかわかりません」 

ロイター

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