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中国と西洋:死闘を演じる敵か繁栄する友邦か?

米中の全面的な直接対決はハルマゲドンを引き起こす可能性がある。(AFP)
米中の全面的な直接対決はハルマゲドンを引き起こす可能性がある。(AFP)
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29 May 2023 08:05:40 GMT9
29 May 2023 08:05:40 GMT9

中国が仲介した3月のサウジアラビアとイランの国交回復合意には世界中が驚いた。中東再編への影響だけがその理由ではなく、中国が注目を浴びる仲介者としての役割を果たし、米国その他の諸国は重大な事態が進行していることの認識すらほぼできていなかったためだ。これは中国が、はるかに多くのことを成し遂げたいという明確な野心を抱きながら、世界的な外交大国として決定的に台頭してきた明白なシグナルだ。

かつて中国は、他国の内政に干渉しないという曖昧な宣言以上の外交政策をほとんど持っていないと見られていた。一帯一路構想は、多くのアジア・アフリカ諸国での大規模インフラ投資を通じて、その見方をすっかり変えてしまった。中国が建設した道路、港湾、橋、鉄道によって多くの発展途上国が大きな恩恵を受け、その裏側では、パキスタン、スリランカ、アンゴラなどの重債務国が、中国の支配下で身動きが取れなくなっている様子が見てとれる。

アフガニスタンでは、中国の外交官が欧米諸国の撤退に乗じて、中国をタリバンと体系的に関係を持つ数少ない国の一つにした。中国はイランとの間でも、原油の輸入価格を大幅に値引きしてもらう見返りに、同国経済に4千億ドル規模の投資を行うことに合意した。これはイラン、ロシア、中国の利害がかつてなく密接に絡み合うさまざまな要因の一つになっている。中国とアラビア湾岸諸国との経済・政治協力は顕著な興隆を見ており、今では中国はサウジアラビアにとって最大の輸出市場になっている。

中国は桁外れの経済大国だ。この数十年、中国の指導者は容赦なく何にもまして経済の急拡大を優先する傾向があった。毎年、大学やその他の学校から新たに社会に送り出される膨大な数の若者のために何百万もの雇用を創出した。わずか10年で、中国の平均世帯収入は400%増加した。

だが、憲法で規定されている国家主席の任期制限を撤廃し、3期目に入った習近平氏は、権威主義的な安全第一の趣向を明白に前面に出している。特定の外国企業に対する懲罰的措置など、国際貿易関係を冷え込ませる政策をとる中国指導部にとってのリスクは、その結果としての経済減速が、国民の荒れ狂う不満に油を注ぐことである。

ウクライナ紛争は、外国による大規模侵略や世界的超大国の対立が、20世紀の遺物でないとの警鐘になった。この認識は、NATO諸国に集団安全保障の再評価を急激に促すことになった。特にロシアの10倍のGDP、10倍の人口を擁する中国に由来する課題が明確に浮かび上がった。

米国とその同盟国は、これらの東洋対西洋の課題のすべてに対処すべく外交ゲームを強化する必要がある。イランや北朝鮮、それにおそらくロシアとも異なり、中国はあまりに大きく、あまりに重要であるため、単に封じ込めたり脇に追いやったりできないことが特にその理由だ。

バリア・アラマディン

実際、中国とウラジーミル・プーチン氏の独特の関係から、遠からず中国が再び平和調停者としての役割を果たす可能性がある。習近平氏が戦争屋の独裁者として歴史に残ることを望むか、世界の平和、安定、繁栄の擁護者として記録されることを望むかは、実に習近平氏次第だ。

ドナルド・トランプ政権と続くジョー・バイデン政権下の米国の外交政策が容赦なく中国への敵対心を高めているのに対し、欧州諸国はもっと葛藤を抱えており、貿易を優先したいが、目に余る人権侵害や戦略的課題を完全には無視できないという状況だ。中国との緊密な協力を目指すイスラム諸国もまた、数百万人のウイグル族に対する組織的虐待への対応に難儀している。 

西洋と中国の武力衝突は避けられないのだろうか?そうでないことを誰もが願っている。だが、2つのブロックの間には発火点になりそうな問題がきわめて多く生じており、その最たるものが台湾だ。公式に何度も表明しているとおり、中国が台湾再吸収のための武力侵攻への決意が高く、米国がそれを阻止するための軍事行動に本気だった場合、単にいつ衝突が起こり、どれだけ広範囲に及ぶかの問題になる。  

最近開催されたG7サミットでは、欧米諸国の企業が中国との関係を完全に断つのではなく、激化シナリオになった場合の将来の対立状態に巻き込まれるリスクを軽減し、機微な機器の販売を制限するという、中間的な「リスク低減(デリスキング)」アプローチをとることを目指した。

ロシアがウクライナで決定的な敗北を喫しなければならない理由の一つは、習近平氏のような指導者が最終的に、プーチン氏の下した決断を見て、「自分には起こってほしくない」と考えるようになるべきだからだ。2003年のイラク侵攻が大惨事だったように、ウクライナ侵攻は世界の精神に、少なくとも今後100年間このような侵略戦争を検討する指導者がいなくなるような大きな傷を残すべきだ。米中の全面的な直接対決はハルマゲドンを引き起こす可能性がある。

こうしたシナリオは、中国、米国や他のあらゆる国の指導者に、次のような警鐘を鳴らすものだ。すなわち、この新たな多国的国際環境全体が、指導者が責任ある行動をとるかどうかが注視され、義務に違反した者全員が本物の罰則を受けるような、相互的な拘束力を持つルールが適用される厳格なシステムに統治される方が、全人類はより良い暮らしを送ることができるというものだ。

中国と米国はゼロサムの考え方に囚われているが、真実はその逆だ。中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、この20年間で両国間の貿易は急増し、現在では中国は米国にとって3番目の輸出市場になっている。両国間の商品貿易総額は、あらゆる経済的な威嚇にもかかわらず、2022年にほぼ7千億ドルに増加している。

両国が相手を出し抜こうとするような策略や、ささいな違いを脇に置くことができれば、世界全体が繁栄する。米国の気候変動担当特使を務めるジョン・ケリー氏は、世界の石炭依存度の引き下げやメタン排出量の削減などの問題について中国と協議する予定だ。地球の生存そのものを確保するために超大国間の協力が必要であることを思い出させる重要な契機になる。

米国とその同盟国は、これらの東洋対西洋の課題のすべてに対処すべく外交ゲームを強化する必要がある。イランや北朝鮮、それにおそらくロシアとも異なり、中国はあまりに大きく、あまりに重要であるため、単に封じ込めたり脇に追いやったりできないことが特にその理由だ。

しかし、中国もまた、世界的大国になることを願うのであれば、範を垂れ、香港、チベット、新疆ウイグル自治区、台湾の人々の尊厳と権利を認め、そのことを通じて、賞賛され、見習われるべきグローバルパワーとしての正当な地位を占めることができることを理解する必要がある。

  • バリア・アラマディン氏は、中東および英国で活動する、受賞歴のあるジャーナリスト兼ニュースキャスター。『メディア・サービス・シンジケート』の編集者で、多くの国家元首にインタビューを行ってきた。
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