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石油は破滅的な状況か? いや、それよりさらに悪い

サウジアラビアとロシアは3月6日のOPECプラスの会議で12月の210万bpdの生産量削減をさらに150万bpd増加させる合意に達することができなかった。(ロイター)
サウジアラビアとロシアは3月6日のOPECプラスの会議で12月の210万bpdの生産量削減をさらに150万bpd増加させる合意に達することができなかった。(ロイター)
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24 Mar 2020 07:03:38 GMT9
24 Mar 2020 07:03:38 GMT9

多くの国々におけるコロナウイルスとほとんど完全に停止している公衆生活とは多くの分野に影響を与えているが、石油ほど多大な影響を受けている分野は少ない。過去数週間に明らかになってきたことは、嵐のような破滅的な状況よりさらに悪い。これは大規模なハリケーンのようなものだ。高い変動率の中で、先週はブレントのみで14%が失われた。

石油は輸送に使われる主要な燃料だ。一部の貨物輸送を除いて多くの定期航空便が離陸できず、国境が閉鎖され、陸路輸送は停止している。その結果が莫大な需要ショックだった。

誰も需要の減少の規模を把握できていない。国際エネルギー機関の3月の最重要レポートでは世界需要が年間で1日あたり900バレル(bpd)減少し、第2四半期では280万bpd減少している。アナリストや石油会社の中には1200万〜1300万bpdの減少を予告するものもある。実際には、消費国からの情報の流れは緩やかで当てにならない。最終的な需要の減少幅は不明だ。最も悲観的な予想に示されているように、世界の生産量の10〜12%をはるかに超える減少幅になるというのが確からしい予測だろう。

サウジアラビアとロシアは3月6日のOPECプラスの会議で12月の210万bpdの生産量削減をさらに150万bpd増加させる合意に達することができなかった。サウジアラビアは方針を一変させて生産量を1230万bpdまで増加させると発表し、ロシアは50万bpdの増加を見込んでいる。短期金融市場は、市場の均衡をとって安定を実現するOPECプラスから、市場シェアを求める全面的な戦争へと移行した。

サウジアラビアの180度転回は理解できる。同国はOPECがOPECプラスの枠組みのもとでロシアの主導する10カ国と協力して以降、石油生産量の削減のたびに大半のシェアを得てきたのだから。これにより、ロシアと米国の生産者にとって最も利益となっていた市場シェアが失われた。例えばロシアは、サウジアラビアに代わって中国の主要供給国になった。中国はおそらくサウジアラムコの最も重要な市場の1つだ。

縮小を恐れる米国のシェール業界はドナルド・トランプ大統領に対してサウジアラビアに関与するよう圧力を強めている。

コーネリア・マイヤー

市場シェアを求めるこの全面戦争がコロナウイルスによる経済の破壊と結びついて、供給ショックと需要ショックが同時に引き起こすこととなった。この状況は石油市場に関する限り、ハルマゲドンと呼ぶのが最もふさわしいだろう。

石油依存の国家経済にとっては大きな予算への影響がある。サウジアラビアは合計支出の5%をやや上回る133億ドルもの予算削減を発表した。ロシアもルーブルの下落が示すとおりに損害を受けることになるだろう。だが、ロシアはヨーロッパへの最大のガス供給国であり、次第にヨーロッパ市場への米国の液化天然ガス配送に関する懸念を深めつつある。米国のシェール分野は石油価格の減少により大打撃を受けている。このことは破産につながり、最終的には業界の統合を引き起こすだろう。ロシアはこれによりヨーロッパへの液化天然ガス輸出が減少することを期待している。そうした予想が現実になるかは将来明らかになるだろう。

サウジアラビアとロシアの膠着状態に話を戻すと、ある段階で世界の石油最大輸出国と第2の生産国の間の協力は再開されるかもしれない。コロナウイルスのパンデミックは平時では大恐慌以来の最大の経済沈下となりうる。だからこそOPECプラスの枠組みが優れた協力ネットワークとなりうる。だが、サウジアラビアとロシアの協議がすぐに再開される気配はない。

先週OPECのモハメド・サヌシ・バーキンド事務局長はテキサス州のエネルギー規制当局および米国のシェール生産業者との対話を試みたが、無駄に終わった。縮小を恐れる米国のシェール業界はドナルド・トランプ大統領に対してサウジアラビアに関与するよう圧力を強めている。現時点で、誰が最初に協力を求めるかについての予想は白紙に戻っている。

これらは前例のない状況であり、コロナウイルスがどれほど長期間にわたって世界経済を麻痺させるかについては誰も知らない。その間に石油価格が大幅に回復するとは期待するべきではない。ブレント原油はヨーロッパの初期の取引で28.5となっており、この数字は過去17年間で最低であり、1月の最高値から約60%の下落となっている。

  • コーネリア・マイヤーはビジネスコンサルタントでマクロ経済学者兼エネルギー専門家。Twitter: @MeyerResources
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