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石油にとって最悪の時は終わったか?

ブレントは先週1週間で1バレルあたり8ドル値上がりした。(ロイター)
ブレントは先週1週間で1バレルあたり8ドル値上がりした。(ロイター)
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05 May 2020 10:05:37 GMT9
05 May 2020 10:05:37 GMT9

2週間前、私たちはドラマの見せ場を目撃した。ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)5月物の価格が一時マイナスの領域へ踏み込み、短期的に1バレルあたりマイナス37ドルまで下落したのだ。

業界を揺るがしたこの衝撃は、今月の段階で970万バレル/日を減産する歴史的なOPEC+協定にもかかわらず起こった。ノルウェーも6月に生産量の13%にあたる250,000バレル/日、7月以降年末までは134,000バレル/日を減産する。G20諸国もまた、名目上さらに500万バレル/日の減産を約束した。ただしこれは形式的または直接的な減産ではなく、むしろ需要急落による結果的な減産にはなるが。

多くの国はロックダウンから徐々に脱しつつあり、目まぐるしい日々が続いた4月中旬以降、事態はいくぶん落ち着きを取り戻した。ブレントは先週1週間にわたり1バレルあたり8ドル値上がりし、欧州市場では現在までに1バレル25.82ドルに達している。

過去数ヶ月にわたり、ガソリンと灯油は特に大きな打撃を受けた。米国やその他の国で通勤者が自宅に待機し、一方で航空機の65%が今日に至るまで運航を中止しているためだ。軽油は必需品を運ぶトラック輸送の順調な回復のおかげでまだましだった。

市場は世界的な貯蔵能力が限界に近づいていることを懸念した。オクラホマ州クッシングでは実際にタンクがいっぱいとなり(そのためWTIの劣化を招いた)、湾岸地域の一部やインド、中国でも同じことが起こった。一部のアナリストは最近の衛星データを示し、他の地域の貯蔵能力の使用量は65%程度であることを示唆しているとする。しかしこのデータは閉鎖されたタンクやその他の一部の施設の状況までは明らかにできないため、信頼性が完全ではない。

少なくとも落ち込んでいる需要は減産によってある程度バランスが取られ、価格に対する不安を和らげるはずだ。

コーネリア・マイヤー

テキサスや武漢、欧州でさえも人々は再び車の運転を始めており、ガソリンの需要は高まっている。英国では4月26日の週のガソリン需要が1年前と比べて75%落ち込んだ。まだ良くない状況だが、83%も落ち込んだ3月下旬よりも改善している。

つまり、需要の状況はゆっくりと少しずつ回復している。ただし、危機以前と比べるとその水準は非常に低い。IEAは5月の需要がまだ2,580万バレル/日の減少、6月は1,460万バレル/日の減少になると予測している。これは4月の2,900万バレル/日減よりもましだが、COVID-19ウイルスが世界中に拡散する前は1億バレル/日あった世界的な石油需要と比べれば依然として悲惨な状況だ。

事態は確実に改善している。需要が増加する一方で、同程度に供給が削減されている。サウジアラビアは協定よりも早く減産を開始し、心理的な影響を与えた。

非常に難しい質問は、経済の回復に何を期待すべきかということだ。回復は直線的なものとなるのか、それとも諸国が経済を再開することで感染レベルが再び急増すれば、ロックダウンに戻らなければならないのか?もう1つの質問は、パンデミックが需要パターンにどのような影響を与えるかということだ。シティは飛行機を使った旅行が2019年の水準まで戻るのは2022年以降になると推定する。BPのバーナード・ルーニーCEOは、今後ますます在宅勤務する人々が増え、ガソリン需要に持続的な影響を与えることを懸念する。

今は石油業界にとって正念場である。このように極端な需要の崩壊は今まで見たことがない。また、石油業界はこの5年間で2回目の価格ショックも経験している。石油価格が1980年代の低迷から回復するのに20年かかったことを忘れてはならない。

しかし、今の状況は異なっている。COVID-19の上に環境保護の課題も重なって需要の減少を招き、状況はバラ色からは程遠いように見える。経済の縮小によって優先すべきことが変わる可能性があり、多くの国で環境保護の課題にどのような影響が出るのかはまだ分からないというのが真実である。同時に再生可能資源から作られるエネルギーは、運輸を除く多くの分野で化石燃料に取って代わろうとしている。欧州の石油メジャーの再生可能エネルギーへのシフトは、現在の危機にもかかわらず誰も止められないように見える。

石油価格への圧力は、積極的な減産と徐々に増えている需要の組み合わせによって緩和されてきた。しかし、回復の形とスピード、そして消費者の選択は、多くの要素に左右されるだろう。

可能性は低いがもし回復が急であれば、閉鎖された油田の生産量を需要増加に十分対応できるほどすぐには増やすことができず、石油価格が急反発する可能性がある。しかしそれは夢想であり、かなり遠い将来のことである。

現時点で言えるのは、需要の水準が歴史的に低く、成長がどれだけ早く戻るかは不明確ということだけである。少なくとも落ち込んでいる需要は減産によってある程度バランスが取られ、価格に対する不安を和らげるはずだ。普通の状態に戻るにはまだ時間がかかる。

  • コーネリア・マイヤーは経営コンサルタント、マクロエコノミスト、エネルギー専門家である。

Twitter: @MeyerResources

 

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