Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

アラブ世界は併合に関して自らの意見を発信しなければならない

2020年1月28日、新しい中東和平計画案について話し合う記者会見に到着したドナルド・トランプとベンジャミン・ネタニヤフ。(ロイター)
2020年1月28日、新しい中東和平計画案について話し合う記者会見に到着したドナルド・トランプとベンジャミン・ネタニヤフ。(ロイター)
Short Url:
14 May 2020 11:05:20 GMT9
14 May 2020 11:05:20 GMT9

起訴されたベンジャミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエルの新政権は西岸地区の大部分の併合を計画しており、7月1日からも始まる可能性がある。この計画は、ネタニヤフがライバルのベニー・ガンツと結成した連立政権の基盤である。

イスラエルの併合は、非ユダヤ人居住地域を除外する。これは、イスラエル法の下でキリスト教徒とイスラム教徒は排除され、今後も対等な市民として扱われず、民主主義のアンチテーゼともいえる残忍で抑圧的なアパルトヘイトのシステムで征服された囚人として生き続けることを意味する。

イスラエルは常に併合を望み、パレスチナの土地から先住民の非ユダヤ人を追放することに全力を尽くしてきた。パレスチナの多くのキリスト教徒はキリスト教に改宗したユダヤ人の子孫であり、パレスチナの多くのイスラム教徒は7世紀のイスラム教の台頭に続いてイスラム教に改宗したユダヤ人とキリスト教徒の子孫でもある。しかし、イスラエルの法律では、ユダヤ人である人だけが完全な権利を与えられる。これは非民主の極致である。

イスラム世界は宗教に基づくイスラエルの人権侵害の深刻さを認識しているが、キリスト教世界はこれを認識できておらず、イスラエルの抑圧的な気まぐれのままにキリスト教徒たちを放棄している。

状況は依然として悲惨である。イスラエルの民主主義は瀕死状態だが、実際そんなものが生まれたのかすら疑問に思う人もいる。誰もイスラエルの人権侵害の暴走を止められないようだ。この西岸地区広域の併合は、イスラエルの数々の侵害行為の中で最新の一つに過ぎない。

イスラエルは、非常に詐欺的でありながら透明性は高い偽善的政策を通して、平和のためのあらゆる機会をぶち壊しにしている。平和を望んでいるとは言うものの、明らかにパレスチナ人との平和ではなく、もしかするとアラブやイスラム世界とさえも望んでいないのかもしれない。イスラエルが全力を傾けるパレスチナ人の排除が済んだら、次は誰の番になるのだろうか?

イスラエルは、巧妙な広報活動を用いた説得とともに、完全なる力ずくと暴力によりパレスチナの土地を盗んだ歴史がある―そう、今日と同じように。

パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領は今週、イスラエルおよび米国との間のあらゆる合意を取り消すと誓ったが、彼の言葉はアラブ世界の支援なくしては空っぽである。我々が尋ねるべき質問は、アラブ世界とイスラム世界は誰かが立ち上がって「やめろ」と言うまで、イスラエルがパレスチナ人の権利を踏みにじり侮辱することをどこまで許すのか、ということである。

アラブ世界とイスラム世界は、イスラエル政府との接触をすべて停止するだけでよいのだ。一方、イスラエルのボディーガードでありいじめっ子から守る役割を担う米国は現在最も脆弱な状態にある。世界で確認された420万人の患者のうち130万人が米国の症例であり、他のどの国よりも大きな打撃を受けたコロナウイルス感染症パンデミックの結果として、財政的にも国際的にも脆弱となっている。

米国は経済危機に見舞われ、連日大手企業が廃業し、航空業界は崩壊寸前で、政府が国民を守らなかったことに対する怒りが高まり、苦しんでいる。多くのアメリカ人は、なぜ米国がイスラエルに毎年40億ドルを与え続けるのか、そのお金は自国民の苦しみを和らげるのに役立てられるはずではないか、と疑問に思っている。

アラブ世界とイスラム世界からの政治的圧力は、ドナルド・トランプ米大統領にイスラエルの併合を阻止させるよう促し、またイスラエルにパレスチナ国家を認めさせることすら可能となるかもしれない。

トランプは深刻な再選の戦いに直面している。11月の大統領選挙での民主党のライバル、ジョー・バイデンでさえ、当選すればトランプが停止したパレスチナのための資金をすべて復活させ、アメリカ政府のパレスチナ任務を復活させると宣言し、この件について強い立場を取っている。

誰もイスラエルの人権侵害の暴走を止められないようだ。西岸地区の広い地域の併合は、イスラエルの怒りの長い列の中で最新のものに過ぎない。

レイ・ハナニア

トランプにとっての優先事項は彼の再選キャンペーンである。トランプは票を獲得するために強力なユダヤ人ロビーに迎合している。大統領はアラブ世界とイスラム世界の犠牲の上で、そうしているのだ。

「きしむ車輪は油を差してもらえる」という古いアメリカの格言がある。言い換えれば、静かな車輪は無視され、より酷使されるだけだ。アラブ世界とイスラム世界はどんな車輪になりたいのか?これこそが答えられなければならない質問であろう。

レイ・ハナニアは受賞歴を持つ元シカゴ市庁舎の政治記者兼コラムニスト。個人ウェブサイト www.Hanania.com で連絡可能。Twitter: @RayHanania

 

特に人気
オススメ

return to top