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イランの増え続けるミサイル保有量は地域にとっての脅威だ

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11 Sep 2020 08:09:02 GMT9
11 Sep 2020 08:09:02 GMT9

国際社会の多くが包括的共同行動計画(JCPOA)の核合意の維持に重点を置く一方で、イランの弾道ミサイル計画が最近加速していることはほとんど注目されず、綿密な調査も批判も受けていない。

イランの現政権が経済・政治的圧力に直面しているのにもかかわらず、弾道ミサイル計画は急速に進展している。特に、より長距離の精密誘導兵器の拡散に関して言えば、急速に進展している。現政権は先月、「Martyr Haj Qassem」と呼ばれる地対地弾道ミサイルや「Martyr Abu Mahdi」という名の、海軍の長距離巡航ミサイルなど、いくつかの新型ミサイルと、いくつかの高性能ジェットエンジンを公開した。

イランは、中東で最大かつ最も多様な弾道ミサイルを保有しており、核兵器を入手する前に長距離弾道ミサイルを入手した国は他にはない。イランの弾道ミサイル攻撃力は、現政権の国家安全保障政策の最も重要な柱の一つだ。それらは攻撃目的でも防衛目的でも使えるが、最新式ミサイルは主に核兵器の運搬手段として開発されている。

現政権の弾道ミサイル計画の拡大は、いくつかの理由により、地域の安定と他国の国益を脅かしている。第一に、現政権は弾道ミサイルの攻撃能力を誇示し、他国政府を威嚇することを躊躇していない。例えば、先月、イランに対する武器禁輸措置の延長を国連安全保障理事会が否決した翌日、国営Afkar Newsの記事の見出しは、「米国本土は今やイランの爆弾の射程内にある」だった。この記事は、イランの現政権が米国に与えることができる損害について得意気に書いていた。「軍事衛星を宇宙に打ち上げることにより、イランは今や米国の全領土を標的にできることをイランは示した。イラン議会は以前、米国への核電磁攻撃で米国人の9割を殺害できるだろう、と警告していた」と書かれていた。

その記事は欧州も威嚇した。欧州のJCPOA参加国は、興味深いことに、イランに対する武器禁輸措置の延長に関する投票で棄権した。「人工衛星の打ち上げに使われるのと同じタイプの弾道ミサイルの技術は、核や化学兵器、さらには生物兵器を運搬してイスラエルを壊滅させ、この地域の米軍基地や同盟国、米国の施設を攻撃し、欧州のはるか西であろうと、NATOを標的にすることができる」と書かれていた。

イランの弾道ミサイル計画の拡大や度重なる実験によって中東に不安感が生まれ、さらなる不安定化、軍事化、軍拡競争につながることは避けられないだろう。

マジド・ラフィザデ博士

第二に、イランの弾道ミサイル計画の拡大や度重なる実験によって中東に不安感が生まれ、この地域の不安定化、軍事化、軍拡競争につながることは避けられないだろう。例えば、イスラエルは、報道によれば、イランのミサイル計画に対応してアローミサイル防衛システムを改良した。

イランの指導者らは、弾道ミサイルの発射実験では国際法に違反していないと主張しているが、イランは明らかに国連安保理決議第2231号に違反している。同決議はイラン・イスラム共和国に「核兵器を運搬することができるよう設計された弾道ミサイルに関するいかなる活動も、そのような弾道ミサイル技術を用いた発射を含め、行わないこと」を求めている。

加えて、イランと他のJCPOA参加国は、核合意が引き続き有効であることを今もなお主張しているため、「JCPOA採択日(2015年10月18日)の8年後に当たる日、もしくは、より広範な結論を裏付ける報告書をIAEAが提出する日の、どちらか早いほうまで」イランはいかなる弾道ミサイルに関する活動も行うべきではない。

第3の脅威は、イランの弾道ミサイル拡大の恩恵を受ける者は、ほとんどの場合テロ集団や武装集団だという事実に関連している。レバノンの組織ヒズボラの指導者ハッサン・ナスララ氏は以前、次のように認めている。「ヒズボラの予算や収益、経費、全ての飲食物、武器、ミサイルなどがイラン・イスラム共和国から来ているという事実について、我々は公にしている」。イランは、イエメンのフーシ派のミサイル技術も進歩させた。国連の専門家委員会も認めているように、フーシ派が自力でそのようなミサイルを製造できる可能性は極めて低い。「委員会が検査した部品の設計特性と寸法は、イランが設計・製造したQiam-1ミサイルに関して報告されたものと一致している」と委員会は報告している。

さらに、イランの現政権は、伝えられるところによると、海外に兵器工場を建設し、シリアを含む海外で高性能兵器を製造している。イランがシリアで製造している兵器には、精密誘導ミサイルなどが含まれる。このような兵器工場により、イランは戦争をしたり、シリア、レバノン、イラク、イエメンなどの国々から他国を攻撃したりする能力を獲得している。言い換えれば、イランを支配する宗教指導者らが直接戦争に参加する必要はなく、そのことによって彼らが権力を持ち続けることが難しくなる可能性がある。むしろ、他国同士を戦わせるために彼らが第三者を利用する可能性がある。

国連は、イランの現政権による弾道ミサイルの増強を真剣に受け止め、同政権が地域全体の武装集団やテロ組織にミサイル技術を供与したことに対抗しなければならない。

  • マジド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学で教育を受けたイラン系アメリカ人の政治学者。Twitter: @Dr_Rafizadeh
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