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国連総会における多国間主義の擁護

国連総会で演説する習近平中国国家主席。(ロイター)
国連総会で演説する習近平中国国家主席。(ロイター)
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24 Sep 2020 09:09:51 GMT9
コーネリア・メイヤー
24 Sep 2020 09:09:51 GMT9

設立から四分の三世紀。それはいかなる機関にとっても節目である。国際連合は今年このベンチマークに至る。1945年10月24日発効の国連憲章こそが第二次世界大戦後の多国間体制の基盤であり、米国はその助産師であった。

国連の目的は、「国際平和と安全の維持、諸国間の友好関係の発展、そして国際協力」である。加盟国数193カ国。国連が数十年にわたって紛争の調停に役立って来たことに疑いの余地は無い。全世界を何度も破壊し得るほどの量の核兵器を米国とソ連それぞれが互いに向けていた冷戦期、調停役としての国連は特に重要な存在だった。

その後、世界はより多極化し、情勢は一層複雑になった。特に、国連の中でも主要機関の一角を為す安全保障理事会では、拒否権を持つ5つの常任理事国が時として決議を阻み、困難な状況がしばしば発生する。5カ国の常任理事国とは、第二次世界大戦の戦勝国の米国、中国、ロシア、英国、フランスである。

過去20年間、中国の台頭に伴い、米国と北京の二極化が鮮明になってきた。特に、ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウス入りした後、この傾向が強まった。トランプ大統領が、多国間の枠組み、特に国連に対して懐疑的であることはよく知られている。3つだけ例を挙げると、トランプ大統領は、気候変動に関するパリ協定と世界保健期間(WHO)から米国を脱退させ、国際連合パレスチナ難民救済事業機関への資金拠出を停止した。

米国と中国の2強によるデュオポリーこそが国連の年次総会が今週開かれるにあたっての背景である。通常各国首脳がニューヨークに参集するこの総会は、国連設立75周年記念を祝う会合のはずだった。だが、残念なことに、状況は好ましからぬ方向に展開した。

第一に、新型コロナ(COVID-19)禍によって、総会はバーチャルなイベントになり、各国首脳の演説も事前録画されたものになった。第二に、2つの経済大国間で分裂した世界の情勢が、トランプ米国大統領と習近平中国国家主席の火曜日の演説によりこの上なく鮮明になってしまった。

最初の演説は国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏によるものだった。自身の演説後に何が起こるのかを予期したグテーレス総長は、米国と中国の間に起こり得る新たな冷戦について警告した。

トランプ大統領は事務総長の深い懸念が現実のものであることを立証した。中東とアフガニスタンに平和をもたらそうとする米国の取り組みを自賛した後、トランプ大統領は、結局、中国について、リスクの高い危険な賭けに出た。COVID-19を「チャイナウイルス」と呼んだ米国大統領は、この疾患を世界に広めた責任を中国政府に負わせるべきだと国連に要求した。大統領は、また、米国がパリ協定を離脱したにも関わらず二酸化炭素の排出量を減少させていると述べた上で、中国の環境問題関連の実績を批判した。

対照的に習国家主席の演説は政治家らしいものだった。ウイルスとの戦いは政治化されるべきではないと警告を発した習主席は、「他国の困難から利益を得る国家など無い」と述べた。

さらに、中国は2060年にはカーボンニュートラルになると習国家主席は誓った。以前には、習主席は、中国の二酸化炭素排出量は2030年にピークを迎えることになると言明していた。2015年のパリ協定を主席は「地球を守るのに必要な最低限のもの」であると称賛していた。今世紀終わりまでに、地球の気温を、産業革命以前の水準から摂氏2度以下の上昇にまで押さえ込むことをパリ協定は構想している。これらは確かに素晴らしい言葉の数々だが、2020年に中国で石炭火力発電所が増加することを背景として考慮すると、具体性に欠けている。

習主席は、「世界は孤立に立ち戻ることはなく、諸国間の繋がりを断ち切ることは誰にもできない」と明言し、多国間主義を支持した。ドイツのアンゲラ・メルケル首相、韓国の文在寅大統領など多数の政府首脳が習主席の多国間主義再生の呼びかけに共鳴した。

いかなる国も「好き放題に振舞って、覇権国や、世界のいじめっ子、ガキ大将となるべきではない」との中国国家主席の発言は少し言い過ぎだったかもしれない。中国は一方では国際法の支配を認めながら、南シナ海において、また、香港に対して、大国として振舞っている。

それでは、火曜日の議事録からはどのような教訓を導き出せるだろうか?

第一に、今日主要な2大国は米国と中国である。まるで校庭に居る2人の大柄な少年のように、米国と中国は、支配的な大国の立場を確立するために出来ることをがむしゃらに行っているのだ。これは、他国が巻き添え被害を受けやすい状況である。

第二に、75年もの間存続し続けたことは、国連にとって素晴らしい成果だ。国連は、幾多の試練と苦難を経験したであろうし、企図したすべての平和と安全を推し進めることは出来なかったのかもしれない。それでも、国連が無かったとしたら、もっと多くの紛争が手に負えない状況になっていたことだろう。世界の多くの場所で、破られてしまったかもしれない停戦協定を、あの誰もが知っている青いヘルメットが守り抜いたことは事実なのだ。

国連が無ければ、もっと多くの紛争が手に負えない状況になっていたことだろう。

コーネリア・マイヤー

第三に、国連開発計画や国連世界食糧計画といった組織が、何億もの人々の飢餓を防ぎ、世界中で経済発展を支援してきた。

第四に、国連が見苦しいほど鈍重な官僚組織であることは事実だ。これは、代々の米国政権の国連に対する主要な批判の1つである。だが、完璧な組織など存在せず、この問題への対処は組織改革での取り組み以外には無い。

全体として見れば、世界は国連の存在によってより良い場所になっている。国連は第二次世界大戦の流血と苦難の直接的な結果である。私たちは、国連を設立した精神に尊敬の念を持つべきであろう。何はともあれ、国連総会が193もの国々に意見を交換する機会を提供していることに極めて大きな価値があることは確かだ。

話し合いは常に紛争解決に向けての第一歩であったし、これからもそうなのである。

  • コーネリア・マイヤーは、投資銀行業務と関連業界で30年の実績を持つPhDレベルの経済学者である。彼女はビジネス・コンサルタンシーを業務とするマイヤー・リソーシーズの会長兼最高経営責任者を務めている。Twitter: @MeyerResources
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