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イランの「代理軍隊」に反対する一般市民

01 Nov 2019
バグダッドでの反政府デモでタイヤを燃やす参加者ら(ロイター)
バグダッドでの反政府デモでタイヤを燃やす参加者ら(ロイター)

1979年に起こったイラン革命。その主な目的の1つは、国境を越えてイラン・イスラーム共和国の理想・理念を広めることによって、中東全体にイランの影響力を確保することだった。実際、当時の神権政治を担っていた支配者層は、イランの理想を広めるというこの重要な使命を、憲法の中に前文として盛り込んでいる。前文には「この憲法の使命は、(シーア派の)イスラム教の崇高かつ普遍的な価値観に従い、人類の発展をもたらす環境をつくりあげることである」と書かれている。

さらに続けて、イラン憲法は「国内外で革命を継続できるように、必要となる基盤を提供する」ものだと記されている。

この目標を達成するため、イランの指導者たちは、他国のシーア派のグループと連携を始めた。当初、イラン政府は、そういった他国のグループの助けとなり、生活水準の引き上げや政治的権利の確保を支援する協力者であるようにふるまっていた。しかしイランの目的は、長期的には、一般市民に社会福祉制度を与えることではなかった。むしろ、自らの代理となる軍隊を創設し、強化したいと考えていたのだ。そしてこの軍隊から、視野の狭い自国の地政学的利益を得ようとしていた。

例えばレバノンでは、イスラム革命防衛隊(IRCG)とその精鋭組織である「コッズ部隊」が、シーア派系イスラム原理主義政党「ヒズボラ」を、イランの最も重要かつ強力な「代理軍隊」の一つに変えてしまった。IRCGとコッズ部隊は資金、軍隊、情報、兵站、助言といった面でヒズボラを支援したのだ。ヒズボラのハサン・ナスララ議長でさえも、ヒズボラがイラン政府から金銭および武器の支援を受けていることを認めている。2016年の演説でナスララ議長はこう語った。「ヒズボラの運営費、収入、費用、あらゆる食料・飲み物、武器やロケットはイランから受け取ったものです。我々はこの事実については公開しています」

イラクでは、イランはシーア派のコミュニティで暮らす一般市民の生活を改善することなく、「人民動員隊(PMF)」として知られる巨大民兵組織の創設に資金を投じた。こういった代理軍隊や武装組織は、イラク国民よりもイラン政権に利するだけでなく、民間人を標的としたさまざまな犯罪に関与することで紛争を起こしてきた。

イラン革命からほぼ40年が経過した今、複数の国々のシーア派コミュニティは、イランが掲げる理念に幻滅しているようだ。たとえばレバノンでは、今起こっている抗議運動が、予想外にレバノン南部のベッカー高原にあるヒズボラの本拠地にまで広がっている。抗議運動の参加者は、国会のヒズボラ代表責任者のモハマド・ラアド氏や、アマル党のHani Kobeissi 氏、Yassine Jaber氏といったシーア派議員の事務所にまで攻撃を始めた。

普段ヒズボラは、レバノン国民の味方であるようにふるまい、一般市民を助けられるようにいつも準備を整え、政府の方針に反対していた。だが驚くべきことに、そのヒズボラが今回の抗議運動を鎮圧しようとしているのだ。実際、ナスララ議長は閣僚の辞任にすべて反対すると宣言しており、政府を支持する側に回っている。ヒズボラのナスララ議長はテレビで放映されたスピーチで「現在の政権が倒れてしまうと、今後1、2年は新しい政権ができないでしょう」と語った。 

ヒズボラはレバノンの現内閣に対して大きな影響力を持っているため、続けてナスララ議長は次のように語った。「現政権を続けさせてください。ただし、心を入れ替えて新たな取り組み方で政権を運営してもらいたい。ここ2日間民衆の不満が噴出していますが、今回の教訓を学ばせてあげてください」

レバノンで起きている抗議運動について重要な事実がある。それは、レバノンの人々が政治の様々な派閥の区別なくこう叫んでいることである。「政府は腐敗している、派閥の指導者たちは腐敗している、国会議員は全員泥棒だ、泥棒だ、泥棒だ」。抗議運動の参加者たちは、レバノンの政治家のほぼ全員の名前を挙げて、声を合わせてこう叫んだ。 

「泥棒、泥棒、全員泥棒、ナスララも泥棒の一人だ」

同様に、イラクでは直近の抗議運動は、主にシーア派の信者が多い県で起きている。

今回の抗議行動には派閥を超えて起こっているという特徴があり、さまざまな政治的・宗教的立場の人々の間でレバノンとイラクの指導者に対して広範囲で不満が噴出している。この事実は、シーア派のコミュニティがイラン政権とその代理軍隊に対して不満と失望を抱いているという現実を浮き彫りにしている。

代理軍隊の構造と性質には、概して代理軍隊の「スポンサー」のシステムが反映されている。スポンサー、今回の場合はイランの神権政治を担う支配者層が、広範囲にわたり腐敗と犯罪にまみれている場合、その代理軍隊も同じく腐敗と犯罪にまみれているだろう。そしてイラン政権と同様に、イラン政府の代理軍隊は、宗教を利用し、派閥の主義主張を道具として用いることに長けるようになった。これは、権力を掌握し、視野の狭い宗教的・政治的目標に一歩前進するためである。

イラン系アメリカ人のマージド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学卒の政治学者である。ラフィザデ博士は、イラン・アメリカの外交政策に関する第一人者で、実業家でもあり、「International American Council」の議長も務めている。Twitter:@Dr_Rafizadeh

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