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教皇とグランドイマーム:今、我々の世界が必要としている友情

2019年11月15日、ローマ教皇庁での内謁で、教皇フランシス(右)は、エジプトのアル・アズハルのグランドイマームのアハメド・アルタエブ師から贈り物を受け取る。(AFP通信)
2019年11月15日、ローマ教皇庁での内謁で、教皇フランシス(右)は、エジプトのアル・アズハルのグランドイマームのアハメド・アルタエブ師から贈り物を受け取る。(AFP通信)
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31 Mar 2021 03:03:45 GMT9

教皇フランシスコとアル・アズハル・グランドイマームの比類なき友情と協力は、紛争、暴力、分断の窮地にある今日の世界で平和を追い求めるすべての人々にとって、啓示であり手本である。

拙著新刊『The Pope and the Grand Imam: A Thorny Path(教皇とグランドイマーム:いばらの道)』の中で私は、この2人の偉大な宗教家の人生と親密な友情とを掘り下げ、グランドイマームと教皇がいかにして困難な航路を乗り越え、人類の友愛という最終ゴールへとたどり着いたのか、その舞台裏を明らかにしている。

グランドイマームの元顧問であり、教皇の最高栄誉であるピウス9世騎士団勲章を初めて賜ったアラブのイスラム教徒として私は、当初は微妙であったこの関係が、グランドイマームの初のバチカン訪問によって幕を切り、教皇フランシスコがそれに応えてエジプトのカイロにあるアル・アズハル師の本部を訪問した経緯を目の当たりにした。

それ以降、教皇フランシスコの住居であるサン・マルタ館での親密な晩餐会を含む数度の共同会談を通して、友愛の絆は深まっていった。その晩餐会には私も出席した。

The Pope and the Grand Imam: A Thorny Path』にも書いたが、晩餐会で、「教皇はパンを1切れ手にとり、それを半分に切り分けた。そして半分を自分に、残る半分をグランドイマームに手渡し、共存と人類友愛を象徴する行為として、それぞれが自分の分を食べた」

こうした共同会談のひとつで、人類友愛に関する文書に署名するというアイデアが浮上した。後に『人類友愛に関する文書』と呼ばれることになるこの文書の誕生は困難を伴うものであり、その困難は、2人の偉大な宗教家の粘り強さと、このような文書の意義とそれを行動に移すことへの2人の確固たる信念によってのみ克服できるものであったことを、私は断言することができる。

2019年にアブダビにて、シェイク・ムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤン殿下の賛助の下で署名されたこの文書は、世界の注目を集め、世界平和の枠組みを提供するものとして讃えられてきた。

フランシスコ教皇聖下とグランドイマーム猊下はいずれも、「人類の友愛高等委員会(HCHF)の取り組みに賛同してくださっている。私が事務局長を務めるこの委員会は、「人類友愛のザイード賞」や「アブラハムの家族の家」といった様々な取り組みを通して、『人類友愛に関する文書』の価値を実現させることを目指している。

フランシスコ教皇聖下とグランドイマーム猊下は、HCHFの我々全員にとって、そして全世界にとってのインスピレーションである。彼らの人類友愛の行為は、『文書』に署名するはるか以前から始まっていた。例えば、グランドイマームは2011年に、イスラム教徒とキリスト教徒の関係を取り持つべく「エジプト人家族の家」を設立し、教皇フランシスコは2016年に、シリア人イスラム教徒の難民12家族を、ギリシャのレスボス島からローマに呼び寄せている。

教皇もグランドイマームも、最も弱い立場の人々の痛みへの真摯な共感から、世界中の貧困者、病人、難民たちのために長年尽くしてきた。

彼らは幾度かの会談を通して世界に、拒絶や不一致ではなく協力することの美しさを示し、傲慢や見下しではなく謙虚さや喜びを見せ、憎しみや攻撃性ではなく愛と友情を表明してきた。

過激思想、暴力、憎悪といったものが我々の世界を窮地に陥れる恐れのある時には、教皇とグランドイマームという最高位レベルの人々の友情の裏に隠れる秘密を明らかにするのがよい。彼らの独特の友情は、その信仰心、慎み深さ、そして、あらゆる時代の偉大な指導者たちにもその行く手に往々にして現れるあらゆる困難や障害にも関わらず、どのような状況下でも平和の種が播かれなければならないというお互いの合意の中に存在するのだ。

  • ムハンマド・アブデルサラム判事は、「人類の友愛高等委員会」の事務局長であり、エジプトの国務院判事である。
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