
1973年にG7各国の首脳が初めて会合を行ったとき、G7各国の経済規模は世界の国内総生産(GDP)の約65%を占めていた。中国をはじめとする新興国の台頭により、現在では世界のGDPの約40%、世界の人口の約10%を占めている。また、2018年の時点で、G7は世界の富の60%を占めている。これを中国、インド、南アフリカ、サウジアラビアを含むG20と比較して欲しい。G20は世界のGDPの90%、世界の貿易の75~80%、世界の人口の3分の2を占めている。
では、なぜG7が依然として重要なのだろうか。第一に、G7は多くの価値観を共有する民主主義国家で構成されている。第二に、G7は世界の状況を把握するのに適している。第三に、G7のメンバー国が重要なイニシアチブを提案し、それをG20がさらに発展させることができる。G7の最終合意文書(コミュニケ)は、少なくとも、重要かつ非常に裕福な国々のグループによる総意を示している。
先週末、セント・アイブスで開催された首脳会談では、前述したことがすべて示された。今回の首脳会談は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生して以来、世界のリーダーたちが初めて直に顔を合わせる会合となった。
今回の会合では現在世界が抱える最大の問題が扱われた。これには、 COVID-19のパンデミック、第二次世界大戦以降最悪の不況を経た世界経済の回復、気候変動、さらには世界の大企業に対するグローバルな課税や平等な教育の機会など、山積する社会的・経済的な問題が含まれている。
今回の首脳会談は、主催者である英国のボリス・ジョンソン首相がしきりに指摘していたように、より良い、より持続的で、より公正・公平な復興を成し遂げることに完全に集中していた。
各国首脳は、すでに支出した12兆ドルの景気刺激策を超えて、必要な限り経済支援を続けることを強調した。これは、2008年・2009年の金融危機後に緊縮財政を求めたのとは際立って対照的だ。
いつもながら、複数の当事者が対話に参加する場合、誰もがすべての望みを叶えられるわけではない。最終合意文書では、G7は10億回分のCOVID-19ワクチンを途上国に提供するとしている。しかし、実際に会合で約束された量はこれを3億回分以上も下回る。また、これは世界保健機関(WHO)が推定する全世界のワクチン接種に必要な110億回分を大幅に下回っている。
気候変動に関しては、G7の環境大臣が約束した石炭火力発電の段階的廃止の期限が最終合意文書には盛り込まれなかった。各国首脳はその代わりに、今後20年間で温室効果ガスの総排出量を半減させることや「グリーンな変革を支援すること」で2050年までの実質ゼロ目標を達成し、気温上昇を1.5度に制限すると繰り返し発言した。
土曜日の夜、チャールズ皇太子は、パンデミックの際に見られたように、気候変動の危機に対する世界的な対応策を企業と政治が打ち出すよう、熱烈に訴えた。余談だが、各国首脳の気候変動に対する熱意が伝わってくる一方で、セント・アイブスへの代表団の移動に当然必要な自家用機の数や、レッドアローズによる印象的な飛行デモンストレーションには、「私の行いをまねるのではなく、私の言葉の通りに行動しろ」というフレーズが頭をよぎった。
1973年以降、経済面で失ったものを考えれば、各国首脳が中国との関係を取り上げるのは必然的なことだった。米国のジョー・バイデン大統領は、前任者のドナルド・トランプ氏よりも中国に対して微妙なアプローチを採っている。それでもやはり、バイデン氏は中国を世界の主要な脅威の1つと見なしている。欧州の首脳は、サプライチェーンにおける中国の新たな支配的立場や、中国政府の人権問題に対する懸念を共有している。しかし、ドイツのように、中国が米国に次いで2番目に大きな輸出市場となっている国もある。そのため、欧州の中には大胆な発言をためらう国もある。また、欧州の国々は、中国との陸路での距離が短くなれば自らも利益を得ることから、インフラプロジェクト「一帯一路」に対する警戒心が薄い。そのため、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、インフラ促進のために設立されたタスクフォースが持続可能性に焦点を当てていることに言及しながら、タスクフォースが何か(中国の「一帯一路」構想)に対抗することを目的としているわけではないと説明した。また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、G7はグループとして「中国に敵対しているわけではない」と強調した。
概して言えば、どのリーダーも望むものをすべて手に入れたわけではない。しかし、全員がかなりの成果を上げたと言える。特に目立ったのは、米国が再び他の国々との協力姿勢を見せたことだ。
強いて言えば、今回の会合の利点は、世界で最も裕福な民主主義国の一部が、世界経済にとって重要な来月のG20において自らを位置づけるための強固な基盤となる共通点を確立したことにある。
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