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立ち上がろうとする気持ちと諦めで揺れるレバノン

これはもはや困難から立ち上がろうというようなものではなく、国が降伏し、最期を迎え奇跡を待つだけのようなものだ。(AFP)
これはもはや困難から立ち上がろうというようなものではなく、国が降伏し、最期を迎え奇跡を待つだけのようなものだ。(AFP)
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22 Aug 2021 04:08:19 GMT9
22 Aug 2021 04:08:19 GMT9

夏の間、ベイルートは日中すぐに暑くなる。私は仕事の支度をしている間、まだ幼い息子達が床のタイルの上で寝ているのを眺めていた。電気もなければ涼しくなるエアコンもなく、長く寝苦しい夜をベッドの上で過ごしたので、つかの間の休息を取ろうとしているのだ。

傷ついた首都から脱出する以外に選択の余地は無かった。同日のうちに私たちは荷物をまとめ、山に向かった。なぜなら、私たちレバノン人には困難から立ち上がろうとする力があり、何事にも解決策を持っているからだ。

昔から地中海沿岸の山間部は真夏の暑さから逃れるための避暑地だが、暑さだけでなく目の前で崩れゆく首都の姿からも解放されるという点で、その魅力がより一層際立つことになっている。

政府は各家庭に毎日2時間だけ電力を供給している ― これは電子機器をなんとか次の充電時間まで持つように充電できる分だけでしかない。

電力危機の中で繁盛している電力会社は、燃料不足を理由に法外な料金を請求している。

「それが嫌なら、自分で発電機を買えばいい」と言うのだ。

「レバノンで最も美しい村」と称されるサウファという地域に向けて内陸方面に向かう途中、道端に並んでガソリンスタンドの順番待ちをする何百台もの車を通り過ぎた。ざわめきの中でガソリンスタンドの店員の叫び声が聞こえた。「ガソリンはもう売り切れです。帰って下さい。」

夜明けから並んで日差しの下で何時間も我慢して待っていたのに手ぶらで帰る人もいる。私たちもつい何日か前まで同じ立場だったので、その気持ちはよくわかる。夫はガソリンがなくて職場に行くことができなかった。

私はノートパソコンを車から充電していたが、山荘に着く頃にはバッテリーが満タンになり、インターネットルーター用のポータブル電源も持ってきていた。私はセルフコーチングのスキルを実践し、気持ちを落ち着かせ、仕事することにした。たっぷり1時間はなんとか仕事できたが、突然インターネットが使えなくなった。

この状態でいつまで頑張れるか?という問題は続く。

ジャナ・サロウム

「発電機への負荷によりサウファ中心部で停電が発生し、サウファ中心部、ハマナ、シャバニア、ラス・エル・マトン、クナエルおよびサリマ周辺地域で当社サービスが停止となりました」とテレコムサービスプロバイダーのオゲロがフェイスブックのページ上で発表した。

私たちは再び荷物をまとめて、私の両親が住むベッカーバレーに向かった。嬉しい再会だ。というのも、今のところではあるがインターネットと電力は通じており、ノートパソコンを充電できるからだ。

私はつかの間の勝利の瞬間を迎えた。レバノン人の多くがその日のパンや食料や薬、生まれたばかりの赤ちゃんのためのミルクやオムツをあちこち探し求めて普段の2倍、3倍、10倍の値段で買っており、それでも勝利と感じているが、それと同じようなものだ。

先週の日曜日、レバノン北部のアッカール郡にあるタリルという町で起きた燃料タンク車の爆発事故で、20人以上が死亡、約80人が負傷したというニュースで目が覚めた。その光景は、昨年のベイルートでの爆発事故を思い起こさせた。

これは悲しいことだ。レバノンはすでに苦境に陥っており、国民は最低限の基本的なニーズを満たすことを勝利とみなし、人々が些細な理由で殺害されている状況だ。

これはもはや困難から立ち上がろうというようなものではなく、国が降伏し、最期を迎え奇跡を待つだけのようなものだ。

失業率が40%を超える国にいながら、きちんとした仕事に就いているのは幸せなことだ。

しかし、この状態でいつまで頑張れるか?という問題は続く。

  • ジャナ・サロウムはアラブニュースのビジネスニュースエディター。
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