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ユーロ圏と日本の同盟を築くことへの期待

ヨーロッパ・アジア連結会議における、E C大統領Jean-Claude Juncker氏と日本の内閣総理大臣安倍晋三氏。ブリュッセル。(ロイター)
ヨーロッパ・アジア連結会議における、E C大統領Jean-Claude Juncker氏と日本の内閣総理大臣安倍晋三氏。ブリュッセル。(ロイター)

地理的には、日本とE Uは全く近かったことなどありません。ヨーロッパは長年にわたり大西洋の向こう側の繋がりに耐え、中国は機会を求めて台頭してくる中で、E Uは太平洋において志を同じくする同志を求め続けてきました。そして、日本ほどの相手はありません。

E Uと日本の繋がりは、単なる利益のためではありません。それは自由、民主主義、公開市場における価値が共有されていることに基づく関係性なのです。今日、それらの価値は脅かされています。中国が隣国の民主主義に対して反発し、平和と世界の安定を維持することを目的とした国際規約書を書き換えようとしている中、アメリカは世界をリードするのではなく世界と取引をすることを決めました。

中国の修正主義とアメリカの世界に対する退却に直面し、ヨーロッパは地政学の強みを失い、アメリカを取り巻く情勢を、規則に基づいて多国間の秩序を守るものと統一的にみなすことができなくなりました。そのため、ヨーロッパは日本のような同志を必要としており、今や相国間の関係性をより強固なものにすべき時が来ているのです。

幸運なことに、E Uと日本には既に十分な下地があります。成長戦略パートナーシップを伴う近年の自由貿易取引は、至るところの孤立主義者に対してメッセージを送っています。およそ7万4千のE Uの企業(その78%は中小企業)が現在日本に輸出を行っており、圏内で55万人が日本企業で働いています。よって、世界4大市場の中の2つの間の貿易合意は、相互に利益をもたらす関係を強固なものにするでしょう。

ヨーロッパと日本は今、このことに基づいて、共有利益の領域で共同のイニシアチブを取るべきです。世界取引、データおよびデジタル規格、アフリカでの投資、アジアでの連結性という4つの領域において、このことは特に重要です。

それらの懸念事項のうち第一は、改革の必要性に深刻に迫られている、世界貿易機関(W T O)です。確かに、世界のリーダーの発言にも関わらず、W T Oの核となる理念はいまだに健全なように聞こえるかもしれません。しかし、中国が、国に支援を受けた一枚岩がアジア、アフリカ、ヨーロッパにまたがる産業セクターを支配できるようにするために世界の規則を書き換えようと試みている状況に直面する中、組織の機構は更新される必要があるのです。その間にアメリカは、経済的な敗者を作り出してしまうだけの貿易戦争を扇動することで応じました。一方、E Uと日本の貿易合意は、より前向きで、高い成長を促進する方法があるということを示しています。

実際に、相互関係は、全てのヨーロッパの貿易と投資の関係を支えなければなりません。我々は中国と取引をしたいと思います。ただし、公正や平等の観点に従い、また、中国がどのようにE U加盟諸国のいくつかで影響力を築くための戦略的財産や技術的なノウハウを得ているのかについて分からないままではないならば。

デジタル規則に関して言えば、E Uと日本はデータの流れに関して基準を統一しています。その結果、国民に個人データを管理する権限を与えつつ、情報の自由な流れを許可する「十分性認定」に至りました。

今後数十年で、人工知能、顔認証技術、5Gモバイルネットワークが更に広まることで、それらの課題は実存的なものとなるでしょう。19世紀には、海を制御するものが世界を統治しました。今世紀においては、世界のデジタル基準を定めるものが世界を支配することとなるでしょう。

そのため、E Uは日本の内閣総理大臣安倍晋三氏に対して、データの流れに関して、世界的な統一基準を作る基盤となる黄金基準としてのE Uと日本の合意を提案するべきです。イギリス政府も、E U離脱後の準備として同様の考えのもとで動いており、アメリカを巻き込むために限界まで提案を行っています。この起こりつつある「デジタル民主党員集会」は、中国が、権威を取るためにインターネットを用いることを防ぐために働きかけなければなりません。

アフリカでは、ヨーロッパは規範本を導入しているのに対して、中国は小切手を導入しています。E Uと国際通貨基金は、彼らの投資に関して厳しい条件を適用していますが、中国の要求は見通せるものとは程遠い状況です。その結果中国は、途中で従属国を作りながら、多くのアフリカ諸国にとっての最初のリゾートの貸し手となっています。

E Uは競合モデルを伴う2つの巨大な勢力の間に挟まれた世界の中で、より主権を持てるように試みています。

アナス・フォー・ラスムセン

多くのE U加盟諸国は、アフリカに対して歴史的なつながりや義務を負っていますが、アフリカ大陸の発展に投資することは日本にとっての関心事項でもあります。E Uと日本は、アフリカが法によって統治された、開かれた自由市場の経済へと発展することを、共に望んでいます。我々はこの領域について協力するための新しい手段を見つける必要があります。

同様に、ヨーロッパはインド太平洋地域における民主主義同盟の中で繋がりを向上させるための努力も支援しなければなりません。特に、重要なインド太平洋経済回廊プロジェクトは、商業および交換取引のインフラを強固なものにすることで、アジアの主要な民主主義を強化することを目指しています。そのため、単なる自国の利益のために動いている中国ベルトやロードがイニシアチブを取ることとは明確に異なります。日本がアフリカへの投資に関心を持っていることと同様に、ヨーロッパもインド太平洋地域に投資することに関心を向けています。

E Uは競合モデルを伴う2つの巨大な勢力の間に挟まれた世界の中で、より主権を持てるように試みています。強い地政学的な逆風を受けて、保護貿易主義と戦略的縮小に基づく「ヨーロッパ要塞」はますます求められています。しかし、逆のことも起きかねません。ヨーロッパは、志を同じくする同志と、共通利益を守るためにつながることによってリードしなければ、主権を取ることはできないのです。

  • アナス・フォー・ラスムセ:前N A T O事務総長、前デンマーク大統領であり、Rasmussen Global会長。コピーライト:Project Syndicate
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