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10月23日、サウジアラビアは世界に何を伝えるのか?

リヤド・グリーンプログラムについてサルマン国王に説明するムハンマド・ビン・サルマン皇太子。(SPA/ファイル)
リヤド・グリーンプログラムについてサルマン国王に説明するムハンマド・ビン・サルマン皇太子。(SPA/ファイル)
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16 Oct 2021 10:10:18 GMT9
16 Oct 2021 10:10:18 GMT9

5年前に開催された第1回「未来投資イニシアチブ(FII)」フォーラムでは、NEOM構想が誕生し、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子がそのギガプロジェクトのビジョンを世界に向けて発信した。

今年はもう一つの「ビッグバン」が待ち受けている。皇太子が王国のエネルギー移行ロードマップを明らかにするという、10月23日から25日にかけて開催される「サウジ・グリーン・イニシアティブ」フォーラムだ。

サウジの アブドルアジーズ・ビン・サルマンエネルギー大臣は木曜日、「ロシア・エネルギー・ウィーク」において、皇太子がこのイベントでサウジの排出量に関する新しい数値を発表し、世界を驚かせることを明らかにした。

これで少なくとも、このフォーラムがその場しのぎの単なる「グリーンウォッシュ(環境配慮のイメージのみが先行する、実態の無い行為)」のイベントではないことが示されたといえる。むしろ、これはサウジアラビアのエネルギー政策の転換点となるだろう。

サウジアラビアは長年にわたり、石油依存からの脱却を目指してきた。しかし、王国がその計画を進めようとするたびに、原油価格の高騰によって頓挫してきた経緯がある。原油価格の高騰は、政策担当者の将来計画に心理的な影響を与えてきた。原油価格が特定の期間上昇した場合、石油以外の経済計画はすべて棚上げされ、通常通りの業務が行われるようになる傾向がある。

今回は状況が異なり、サウジアラビアは変化を起こそうとする意志が強い。

先進国や西欧諸国の多くの評論家は、サウジアラビアが地球上で最大の石油輸出国であることを知っているので、今回の発表をグリーンウォッシュの試みと見なすだろう。実際サウジアラビアは、自国の電力における石油液体の使用を完全に削減し、代わりにガスや再生可能エネルギーを発電所の燃料として使用するという新たな計画により、石油輸出国としての立場はさらに大きくなる可能性がある。

また、エネルギー大臣は、巨大なジャフラ盆地から産出されるシェールガスが石油に取って代わることで排出量が減り、王国のクリーンエネルギーへの移行を加速させるだろうと述べている。

これらの移行計画は国内のエネルギー企業にとっては朗報であり、太陽光発電所の建設や試運転に忙しくなることだろう。しかし、ここで2つの疑問が生まれる。まず、このような開発のスケジュールはどうなっているのか。そして2つ目は、なぜサウジアラビアが突然このようなことをする必要があるのかということだ。

サウジアラビアには、経済を救う起業家層を生み出すために、教育システムや文化を刷新するというミッションがまだ必要だ

ワエル・マフディ

スケジュールとしては、2030年までにすべてが実現するように絞り込まれるのではないかと推測している。非常に厳しい期限となるが、実現が不可能なものではない。

なぜサウジアラビアは今、このようなことに「本気で」取り組んでいるのか。それではまずは、2017年以前のサウジアラビアは、太陽光発電に「本気で」取り組んではいなかったことを認めるよしよう。

サウジアラビアはこれまでも、「アブドゥラー国王原子力・再生可能エネルギー都市」など、多くの大きな計画を発表してはいた。しかし、これらの計画は多くの理由で実現は成されなかった。当時の人々は再生可能エネルギーを信じておらず、またこれらの機関のシステムには十分な説明責任は存在しなかったのだ。

私は、これらの都市計画を心の底から信じていたエネルギー専門家に会ったことがないが、彼らは皆、公の場では計画を賞賛していた。なぜならそれは、決して現実的ではなかったからだ。それを実現する能力や資源がなかったわけではない。それらは揃っていても、他の省庁からの指示や支援がなかったのだ。ただ、それはもう過去の話となる。

新生サウジアラビアでは、各担当省の説明責任は非常に高く、成果に対する評価基準や、国家的な整合性を保つ必要があるため、閣僚がお互いの邪魔をすることはできない。計画を推進するのに十分な中央集権性が存在する。

他の要因も考慮しよう。サウジアラビアは石油需要がピークに達する前に石油資源を収益化する競争にさらされている。つまり、経済を非石油経済に転換する他の計画に資金を供給するために、できる限りすべての石油を生産し、最高の価格で販売する必要があるのだ。そのため、自国で石油を安く消費しても意味がなく、また、各消費国も他のエネルギー源に移行しようとしている状況のなか、石油の売却を遅らせても意味がない。

もう1つの理由は、王国はG20のメンバーとして積極的に活動する必要があり、この地域の他の国々の模範とならなければならないからだ。地球を守るためには、国際的な約束事を尊重する必要があるということだ。

しかし、サウジアラビアの経済が一夜にして石油から脱却することはないだろうし、そのような考え方があるとも思えない。石油はいわば中毒性を持ち、ライフスタイルにもなっている。サウジが繁栄するためには、世界に向けて何かを売る必要がある。現在は水素を使ってそれを実現しようとしていたり、また、サウジアラビアとエジプトの送電網がつながることで、近隣諸国に電力を供給できるようになることを期待されていたりする状況だ。

ただ心配なのは、現実問題としてサウジアラビアは石油以外の輸出品が少なく、石油化学製品に依存しているということを、多くの人が理解していないことだ。サウジアラビアには、経済を救う起業家層を生み出すために、教育システムや文化を刷新するというミッションがまだまだ必要であり、より多くの利益を生み出すため、金融サービスを中心とした知識ベースの産業やサービスを考えていく必要があるだろう。

今は10月23日を待ち、「サウジ・グリーン・イニシアティブ」の会議からどのようなグリーン・サウジが生まれるのか想像してみることにしよう。

・ワエル・マフディはアラブニュースのシニアビジネスエディター。共著に「OPEC in a Shale Oil World: Where to Next?」がある

ツイッター: @waelmahdi

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