
レバノンのシーア派の著名な出版業者・論客であり、頻繁にヒズボラを批判していたルクマン・サリム氏が暗殺されてから、金曜日で1年を迎える。彼の家族や関係者は、彼の殺害はヒズボラによるものだと主張している。1年が経過した今も、サリム氏殺害の容疑者は誰も逮捕されていない。公式の捜査は現在も継続中だが、結果はすぐには出そうにない。この事件は、当局が起訴できなかった、テログループによる無数の暗殺事件の一つに数えられるだろう。
サリム氏の殺害、その他の政治的犯罪の首謀者を見つけられないレバノン政府の姿勢は、この国がヒズボラとその同盟組織の行為に対して主権国家としての責任を放棄し、自国の経済や領土も管理できない破綻国家になりつつあることを示す一つの例である。
2020年8月に起きたベイルート港の爆発事故もその例として上げられるだろう。少なくとも218人の死者、7,000人の負傷者、150億ドルの物的損害を出し、推定30万人が家を失うという大規模な被害をもたらしたにもかかわらず、いまだに関係者の誰も責任を問われていない。それどころか、ヒズボラとその同盟組織は公式の調査を妨害し、調査担当者を交代させようとしている。
麻薬密売も同様だ。ヒズボラとその協力者は、レバノンの領土と港を自由に行き来して、湾岸諸国やヨーロッパ、アフリカ、アメリカの国々などに、麻薬を栽培、製造、輸出している。
ヒズボラは、共通する思想を持った政治団体の黙認の中、レバノンをシリア、イエメン、イラクの紛争に巻き込み、軍事介入に関するレバノンの法律と国際法の両方を破ってきた。
その一方で、政治家たちはレバノンのわずかな資源を奪い、外国からの援助や中央銀行の資源など、レバノンに残された宝を浪費している。世界銀行によると、レバノンのエリートは「主要な経済資源を支配し、多額の負債を生み出し、機能不全に陥ったこの国家の戦利品を分割している」という。
これらの指導者の多くは、ヒズボラとその連立パートナーによって守られており、内閣を含む、レバノンに残る統治機構を麻痺させている。内閣は、経済を救い、権威の面影を復活させる方法についての意見の相違により、ここ数ヶ月会議を開いていない。
世界銀行は先週、レバノンの経済について異例ともいえる直接的な表現の報告書を発表し、レバノンの支配層が国の資源を略奪し、権力の座を乱用することで、世界最悪の国家経済危機の一つを引き起こしたと非難した。報告書にはこう記載されている。「人為的に引き起こされたレバノンの不況は、長い間国家を掌握し、その経済的レントで生活してきた国のエリートによって仕組まれたものである……それは国の長期的な安定と社会的平和を脅かす原因になった」
レバノンの政府関係者は、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、国連など、レバノンに重要な地域拠点を持つ機関から、こうした事実や警告を何度も聞いてきた。また、湾岸協力理事会(GCC)やアラブ諸国の政府関係者、フランス、EU、米国、その他の伝統的なパートナーからも同様の話を聞いている。
誤った政策、汚職、新型コロナウイルスとその影響に対処できなかったことが重なり、過去2年間、レバノンの経済は低迷している。世界銀行によると、2021年の国内総生産は220億ドル以下に激減した。これは2019年の水準から58%以上の急落であり、これほど短期間に経済が縮小した例は世界でも類を見ない。
レバノンのエリートが繁栄する一方で、貧しい人々はさらに貧しくなり、中流階級は急速に縮小している。同国ではここ数年で数百万人が貧困に追い込まれている。世界銀行は、貧困ライン以下の生活を送る人々の数が2020年に13%、2021年末までにさらに28%増加すると予想している。
政府の収入も50%近く減少し、2021年にはGDPに占める割合が7%以下となった。これはソマリアに匹敵する、世界でも最低レベルの比率である。
レバノンの財政は以前から破綻しており、政府債務残高の対GDP比は180%を超えて世界最高水準となっており、すぐに借金を返せる見込みはない。特に、2020年3月に12億ドルのユーロ債の返済が滞り、正式にデフォルト(債務不履行)に陥ってからは、金融機関は新たな資金提供を敬遠している。これは同国史上初のソブリン債のデフォルトであるが、経済運営を変えない限り、さらなるデフォルトが発生する可能性がある。
資本流入の激減、大幅な経常赤字、レバノン中央銀行の最高レベルでの不手際などにより、同国の外貨準備高は減少している。この経済的不調の症状として、レバノン・ポンドは2019年以降、その価値の90%以上を失っている。為替レートの崩壊は、貧困層や退職者など、レバノン・ポンド建ての固定収入で生活している人々に特に影響を与えている。一例を挙げると、2019年に1,000ドル相当の月収があった家庭が、現在ではわずか100ドルの収入にまで落ち込んでおり、貧困層に分類される人が激増している。
この国のエリートが繁栄する一方で、貧しい人々はさらに貧しくなり、中流階級は急速に縮小している。
アブデル・アジーズ・アルウェイシグ博士
今回の世界銀行の報告書において新しい部分は、レバノンの失敗は、過去2年にわたり、経済と財政の回復に向けた信頼できる道筋に合意できなかった政治指導者たちによってもたらされたという明確な証拠を示していることである。世界銀行の地域ディレクターであるサロジ・クマール・ジャ氏は先週、「意図的に引き起こされた不況の中での、意図的な否定は、経済と社会に長期にわたる傷跡を残しています」と述べた。「心配なのは、主要な官民関係者がこれらの損失を認識することに抵抗し続けており、それがこの経済状況をゾンビのごとく永続させていることです」
レバノンは先週、IMFとの協議を再開し、救済措置の確保を目指している。この話し合いは何年も続いているが、援助供与国が求める経済改革を達成するための、信頼できる経済復興計画の実現の兆しがない限り、そのような救済措置が取られるかどうかは疑わしい。
経済破綻までに残された時間は非常に少ない。レバノンは今、国際機関、金融機関、援助供与国、そして長年にわたってレバノンを支えてきたクウェートの外務大臣、アフマド・アル・サバーハ博士をはじめとする旧来のパートナーの助言に耳を傾けることが最善の策である。大臣は先月レバノンを訪問し、擦り切れた友人たちとの関係を再構築するための有益な提案を行った。それを実行することによってのみ、レバノンは不幸な状況を覆すことができるだろう。