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極めて不確実な現状の中、OPECプラス会合が開催

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03 Mar 2022 02:03:24 GMT9
03 Mar 2022 02:03:24 GMT9

石油価格は多くの要因によって決定される。OPECプラスの産油量、非OPECプラスの産油量、OECD及び非OECD諸国における需要、世界各地の手持ちの在庫状況、過剰な産油能力、金融市場で起こっていること、様々な石油消費市場における需要、その他にも多くの変化がかかわってくるのだ。

だが、当面の間、これらの要因が決定される理由は一つになりそうだ。つまり、国際社会の高まる不安とリスクである。この先しばらくは、非常に不確かで危うい時期になることが予想される。

消費国、産油国、両方の危機感が高まっている背景には何があるのだろうか。一つはウクライナでの残虐な戦争であり、これにより、多くの国の指導者たちがロシアを激しく糾弾し始めている。新しく課せられた複雑な標的型制裁により、金融・エネルギー市場は混乱に陥った。世界最大手の企業のいくつかは、世界最大の産油・輸出国であるロシアから手を引き始めている。BPとエクイノールはすでに撤退を決定しており、他の企業もそれに続くだろう。多くの年金基金や大口投資家もロシアから撤退している。ロシア・ルーブルは暴落し、ロシア政府とロシア中央銀行、ロシアの貿易・投資、ロシア国内や関係の深い富裕層や権力者に厳しい制裁が課されている。

ロシアのプーチン大統領は核戦力を警戒態勢に移行した。金融・エネルギー市場を揺るがすのに、まさにぴったりの行動だ。

スウェーデンとフィンランドはNATOへの加盟を検討している。それは両国の権利であり、ロシアのウクライナへの行動によって生じた現状においては理解できる考え方だ。ウクライナはEUへの加盟を申請しており、NATOへの加盟申請を行ったとしてもおかしくはないだろう。これらの動きやその他の要因はロシアの指導者をさらに怒らせることになるはずだ。なぜなら、ロシアが主張する戦争の理由の一つは、NATOが目前に迫ってきたことに脅威を感じているということだからだ。ロシアと国境を接するエストニア、リトアニア、ラトビア、ポーランドはEUとNATOの加盟国であるため、NATOはロシアのすぐ隣にいる状況だ。カリーニングラードは、ロシア国内にあるEUの一部であり、リトアニアとポーランドに隣接している。

多くの人にとって、これらの展開は一夜にして起こったかのように感じられるかもしれない。だが、実際には、これは何十年も前からスローモーションで進行してきた列車事故といえる。プーチンはソ連崩壊を自らの人生を決めた瞬間として捉えており、恨みを抱き、状況を覆したいと思っているのだ。

この戦争は、多くの意味で、非常に複雑だった「冷戦」の延長線上にある。冷戦は世界中に、時には熱く時には冷たい代理戦争をもたらした。

ポール・J・サリバン博士

プーチン大統領のウクライナへの攻撃は、ソビエト連邦の再建か、少なくとも新たなロシア帝国の建設だという見方が大半だ。NATOなどはそれを望んでおらず、それよりも多くの国で民主主義を発展させ、より攻撃的になっていくように見えるロシアに対抗したいと考えている。

この戦争は、多くの意味で、非常に複雑だった「冷戦」の延長線上にある。冷戦は世界中に、時には熱く時には冷たい代理戦争をもたらした。ウクライナはこのイデオロギーと知力、システムの戦いの最新の例だ。冷戦は終わっていないのだ。

そこにエネルギーが加わると、状況はさらに複雑で危険になる。米国はケネディ大統領時代から、ヨーロッパに対しソ連のエネルギーに依存しないようにと警告していたが、ヨーロッパは巨大なパイプラインやその他のエネルギーシステムを通じてソ連のエネルギ―との結びつきを強めることに固執していた。

ソ連崩壊後も、ヨーロッパとロシアの間のこうしたパイプラインやエネルギーにまつわる関係性は継続し、ノルドストリーム1やノルドストリーム2など、ロシアとヨーロッパの合意した石油・ガスのパイプラインシステムにより強化されてきた。

ヨーロッパは現在、ロシアのエネルギー輸出に大きく依存しており、ロシアは最重要エネルギー消費国としてのヨーロッパに大きく依存している。ヨーロッパ(現在はEU)とロシアの緊張関係はかつてないほど悪化しているが、ヨーロッパはロシアのエネルギー支配から抜け出すことができずにいる。ロシアもヨーロッパに代わる石油とガスの市場を容易に開発することはできないままだ。

世界は今、緊張に満ちた国際関係の転換点を迎えている。石油市場は世界市場だ。中東やロシアなどの重要な産油地域に混乱が生じると、石油その他の市場は沸騰状態になる。

戦争が悪化して広がった場合、市場の混乱も悪化して広がるだろう。さらに、ロシア・EU地域の軍事、外交、経済、情報の混乱が、かなりの速度で世界の他の地域にも広がったことを忘れないでほしい。株式市場や債券市場、金の価格など、「安全」だったはずの投資商品はどうなっただろうか。

次回のOPECプラス会合では、世界的な混乱や様々な側面におけるストレスと緊張の増加などの歴史的及び現在の状況の流れを考慮したうえで、どうすべきかを決定しなくてはならない。現状では不確実性すら不確実性であり、大きな決断を下すのは難しい時期だ。この先の状況の変化を見極めるまで産出量に関する決定は遅らせるのが最善かもしれない。即座に緊急会合が開ける準備をしておくことが賢明であるかもしれない…念のため。現在のような状況で最悪のケースは、さらなる衝撃や揺さぶりを与えることだ。すべての面で、理性と常識が勝つことを願う。

  • ポール・サリバン博士はKFCRISの上級研究教授であり、米大西洋評議会グローバル・エネルギー・センターのノンレジデント・フェロー。
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