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文・安倍サミット:地域へのクリスマスプレゼント

韓国の文在寅大統領(左)が、日本の安倍首相と握手している。(AFP)
韓国の文在寅大統領(左)が、日本の安倍首相と握手している。(AFP)
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27 Dec 2019 12:12:25 GMT9
27 Dec 2019 12:12:25 GMT9

両国は隣人であり、地政学的また地域経済的に北東アジアの安定にとって非常に重要だ。どちらも貿易大国で、世界経済中での規模は第3位と第12位に位置し、二国を合わせると世界GDPの8パーセント近くを占める。

そう、もちろんこれは日本と韓国のことだ。文在寅大統領と安倍首相は、中国西南部の都市・成都で行われた日中韓三国会合に合わせて45分間会見した。こうしたサミットはどちらも西側メディアではほとんど無視されたが、これはクリスマス休暇のために経済ニュース報道はもちろん、時事ニュース全般が減っていたからだ。しかし、安倍首相と文大統領が直接顔を合わせた二国首脳会談は重要なニュースだ。

両国の不和のもともとの原因は、韓国大法院が判決で、日本企業数社に対し、1910年から1945年の日本植民統治時代に強制労働させられた韓国人へ賠償金を支払うよう命じたことにある。安倍首相とその政府は厳しい言葉を用いてこの判決に抗議し、同問題は日韓の基本関係を定めた1965年条約で解決済みであり、そのため判決は国際法に違反すると主張した。

これに続き、通常は友好国や同盟国間ではなく敵国間にみられる、典型的な報復の応酬が行われた。

7月、日本は韓国に対する輸出の一部(半導体生産に使用される三種類の化学物質)に対する規制を強化し、次に同国を信頼できる貿易相手国の「ホワイトリスト」から除外した。韓国は軍事情報包括保護協定による軍事情報の共有を停止することで報復した。こうした動きが起こる裏で、米中間の貿易戦争が続き、新たに強硬化した北朝鮮の指導者金正恩は日韓両国にとって脅威となる短距離ミサイルの試射を再開した。

両国は、両国関係が問題が発生している時があっても、歴史的文化的に最も密接な関係を有している。

コーネリア・メイヤー

安倍首相と文大統領は、お互い会うのをできるだけ避けた。前回両者が公式に二国間会合をもったのは、2018年秋の国連総会の期間中だ。大阪でのG20サミットの期間中も両者は会うのを避け、新天皇徳仁の即位式に韓国はナンバー2である李洛淵首相を派遣した。日本の新天皇の即位は、同時にその天皇の代と関係づけられる年号への改元が行われる、一世代に一度の大イベントであり、こうした態度は馬鹿にしたものであった。徳仁の新しい時代は「令和」と名付けられたが、これは仲睦まじく平和な秩序を意味する。

安倍首相と文大統領は、バンコクで行われたASEANサミットの脇でお互い出くわすことになった。これは、気乗りしない友好国が再会して話し合うのにとってちょうど良い機会だった。二人の首脳は強制労働問題を対話によって解決することに同意した。日本は、韓国に対する輸出規制を撤廃することに同意した。両国は、貿易と安全保障に関する対話を再開する予定だ。

会合は短時間で報道も少なかったが、重要なものだった。両国は、両国関係が問題が発生している時があっても、歴史的文化的に最も密接な関係を有している。両国とも貿易大国で世界的に開かれた貿易体制に依存しているという点で、両国は利害も一致している。両国にとって一番不必要なのは、ミニ貿易戦争だった。どちらも、世界貿易体制を自由なものに保ち、WTOを強力に保つよう世界大国に対して訴えることからあらゆる利益を得られるのだ。こうした努力をする際に信頼性を担保するため、両国は対話へと歩み寄る必要がある。

両国の安全保障上の懸念事項も、そっくりだ。両国とも北朝鮮と問題を抱えている。短距離ミサイルの新たな試射は米国のドナルド・トランプ大統領を悩ますものではないが、両国にとっては主要な安全保障上の脅威となっている。なお、余談だがこの地域は世界でもっとも人口密度が高い地域だ。

両国とも、経済的および軍事的超大国としての、止められない中国の強大化と折り合いをつける必要に迫られている。両国企業は、中国に投資している主要企業となっており、中国は両国の重要な貿易相手国でもある。両国は、興隆する地域の覇権国および軍事大国としての中国の地位が向上していることに気づいている。このため、両国は自国水域を注意深く航行していく必要があるが、これは敵国としてより同盟国として行うほうがたやすい。

あらゆる面からみて、地域が多くの潜在的緊張をはらんでいる現在、安倍・文会談は北東アジアにとってクリスマスプレゼントのようなものであったのではないか。この二つのアジアの強国が、紛争解決への方途を見つけるために、会談は望ましい動きである。

コーネリア・メイヤーは、ビジネスコンサルタント、マクロ経済評論家、かつエネルギー専門家である。ツイッターアカウントは@MeyerResources。

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