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2020年を重要課題とともに迎えるトルコ

トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、同国の外交・安全保障政策に関しては唯一の意思決定者である。(AFP)
トルコ大統領のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、同国の外交・安全保障政策に関しては唯一の意思決定者である。(AFP)
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28 Dec 2019 11:12:58 GMT9
28 Dec 2019 11:12:58 GMT9

トルコは、この一年を通じていくつかの重要な進展と課題を体験してきた。外交政策に関する最重要事項は、何年も難題となっているシリアの内戦、東地中海地域で継続する紛争、対米国関係の浮き沈み、そしてリビアとチュニジアにおけるトルコ自身の新たな動きであった。

まず今年の最新の進展から言うと、トルコの外交・安全保障政策に関する唯一の意思決定者であるレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、チュニジアを予告なく突然に訪問し、チュニジアのカイス・サイード大統領と会談した。

この訪問は、リビアで継続中の紛争の解決方法を話し合うためのものと言われており、サイード氏が10月に新大統領に選出されて以来、トルコからチュニジアへの初めての公式訪問であった。この会談は11月27日にトルコがリビアとの間で、東地中海とリビア内戦の政治バランスを変えた二つの覚書を調印した後に行われたものである。.

軍事協力協定に続き、エルドアン大統領は、もしリビア政府から要請があれば、トルコはリビアへの軍隊の派遣を検討する可能性があると述べた。彼はサイード大統領との共同テレビ記者会見でこの点を繰り返し、「もし(軍隊への)招待があれば、もちろん検討するだろう」と語った。

これらの言葉が実行に移されるかどうかは、まだ分からない。エルドアン大統領はまた、トルコとリビアの協力関係は継続するものであり、ギリシャにはこの問題についてコメントする権利はない、とも主張している。

リビア問題についての緊張が高まる中、重要な直近の会議であるベルリン会議は1月に開催されることになっている。エルドアン大統領は、チュニジアとアルジェリアも、リビア紛争の解決に発言権を持つべきであり、会議に招かれるべきだと述べた。これらの国々はリビア紛争に深刻な影響を受けているし、また戦争で荒廃した国の社会政治構造についての知識も持っているのだ。9月以来、ベルリン和平プロセスとして知られる紛争終結のためのいくつかの高官レベルの協議がドイツの首都で行われてきている。

プーチン大統領が1月8日トルコに来訪、1年のうちでも最重要レベルの会談に臨む予定。

シーナム・ジェンギス

シリアに関しては、同国の内戦、シリア人の帰国に向けた活動、イスラム国の兵士たちの出身国への強制送還、およびシリア北部のクルド人からの脅威、といった課題への対処にトルコは追われてきた。また、米国のドナルド・トランプ大統領が米国はこの地域から部隊を撤退させると言った後、トルコはシリア北部で10月9日、「Operation Peace Spring(平和の春作戦)」と呼ばれる、長く警告されてきた作戦を開始した。

EUはシリアでの行動に対応してトルコに対する制裁を求め、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はトルコの軍事行動について話し合うためエルドアン大統領とのソチでの会談を要請し、またトランプ大統領のエルドアン大統領に対するスキャンダラスな手紙も注目を集めた。さらに、トルコ政府によるロシアのS-400防衛システムの購入、およびトルコのNATOとの緊張関係は、過ぎ去りつつある2019年の最重要事件の一角を占めるもので、いずれも今後しばらくの間重要なトピックであり続けるものと思われる。

では、2020年には何がトルコを待っているのか?シリアの内戦、東地中海地域で継続する紛争、トルコ軍のリビアへの展開の可能性および西側との緊張関係、これらはすべて継続することとなる。

1月8日には、1年のうちでも最重要レベルの会談のため、プーチン大統領がトルコを訪問する。ロシアのリーダーは、トルコの大統領にもてなされ、近隣諸国の他の首脳とともに、黒海を渡ってロシアとトルコを結ぶパイプライン、「TurkStream(トルコストリーム)」天然ガスパイプライン・プロジェクトのイスタンブールでの発足式に出席する。このプロジェクトは、近年政治的、軍事的、経済的に協力を強化しているトルコとロシアによる戦略的な投資と見られている。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、慌ただしい1月に待ち受けているもう一人の最重要レベルの来訪客だ。トルコとドイツの関係およびEUとトルコ外交の両方が近年浮き沈みを見せている中でのメルケル首相の今回の訪問は、諸課題について議論する機会を双方に与えるものとなる。真っ先に扱うべきことは、難民問題とイスラム国に参加した欧州市民の本国送還だ。

トルコと米国の関係については、来年は何らかの変化があるものと思われるが、米国には大統領選挙が控えており、トルコは引き続き独自の外交政策課題を追求することになるだろう。来年も外交政策および安全保障政策がトルコの中心的課題であり続けることは疑いない。2019年に得たトルコの外交・軍事的利益がこれから迎える年にどのように展開されていくか、注視していきたい。

  • シーナム・ジェンギス(Sinem Cengiz)は、トルコの対中東関係を専門とするトルコの政治アナリスト。 ツイッター:@SinemCngz

 

 

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