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独占インタビュー:トランプの元外交特別代表ジェイソン・グリーンブラット氏:「イスラエル-パレスチナ交渉の可能性は残っている」

米大統領選の勝利から1カ月後の2016年12月、トランプ氏はニューヨーク出身の弁護士兼ビジネスマンで、イスラエルに関するアドバイザーを務めていたグリーンブラット氏を「外交交渉特別代表」に任命。(AFP)
米大統領選の勝利から1カ月後の2016年12月、トランプ氏はニューヨーク出身の弁護士兼ビジネスマンで、イスラエルに関するアドバイザーを務めていたグリーンブラット氏を「外交交渉特別代表」に任命。(AFP)
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28 May 2020 11:05:48 GMT9
28 May 2020 11:05:48 GMT9

レイ・ハナニア

シカゴ:ドナルド・トランプ米大統領の中東和平構想策定で中心的役割を果たしたジェイソン・グリーンブラット氏は、パレスチナ側が和平案の拒否を取りやめてイスラエルとの交渉に合意すれば、平和実現の可能性はまだ残っていると述べた。

ホワイトハウスの中東外交交渉特別代表を務めたグリーンブラット氏はArab Newsとの独占インタビューの中に応じ、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が早ければ7月1日に実行するとしたヨルダン渓谷の併合計画も、交渉次第で延期または阻止することも可能だと話す。

トランプ政権の重要顧問は辞任しているが、グリーンブラット氏はパレスチナのマフムード・アッバース大統領がトランプの和平案を拒否するという決断を取り下げ、交渉を再開するなら、まだ間に合うという。

[caption id="attachment_15540" align="alignnone" width="479"] パレスチナの農家のための下水処理設備および水道へのアクセス改善プロジェクトのローンチに出席する米外交交渉特別代表ジェイソン・グリーンブラット氏。2017年10月15日(AFP/File Photo)[/caption]

トランプ大統領、ジャレッド・クシュナー上級顧問、そして在イスラエル米国大使のデイビッド・フリードマン氏を良く知るグリーンブラット氏は、「ホワイトハウスとの和平合意交渉の扉はまだ開いている」と話す。

一方、早ければ7月1日にも実行される併合をもって、その扉は閉ざされるかもしれないと警告する。パレスチナ側がこの機を逃し、「併合が決行されればそれまでだ」と。

「しかし、彼ら(トランプ、フリードマン、クシュナー)も私同様、紛争の解決だけでなくパレスチナ人の支援に尽力しています。そして彼らは、もしアッバース大統領かサイブ・エレカト氏が交渉を始める態勢にあるとの知らせを受ければ、すぐに話し合いの席に着くでしょう。」

トランプは米大統領選の勝利から1カ月後の2016年12月、ニューヨーク出身の弁護士そしてビジネスマンで、イスラエルに関するアドバイザーを務めていたグリーンブラット氏を「外交交渉特別代表」に任命した。

グリーンブラット氏はイスラエル・パレスチナ和平案の起草を任された。3年近くイスラエル、パレスチナと議論を重ねた後2020年1月28日、トランプ大統領に和平案を提出した。同案はすぐに「世紀の機会」と呼ばれるようになった。

[caption id="attachment_15541" align="alignnone" width="451"] イスラエル占領地のヨルダン川西岸ラマラ近くにあるユダヤ人入植地ギバットゼーブの建築現場、2020年月13日撮影。(AFP)[/caption]

一方、和平案の詳細が明るみに出ると、パレスチナ側の希望は怒りへと変わり、2019年6月にバーレーンで開催された経済ワークショップへの参加を拒否したBut as details leaked out, Palestinian

ワークショップはトランプ氏の娘婿でもあるクシュナー氏が開催したものだ。世界中からビジネスリーダーらが集合し、和平交渉に臨んだ場合パレスチナに500ドル億以上の経済支援を約束した。

アッバース大統領とパレスチナのリーダー全員は和平案を拒否。「千回でも言う。『世紀の機会』には『ノー、ノー、そしてノーだ』」と断言した。

アッバース大統領はさらに、ホワイトハウスの構想は「実現しない」としたうえで、「私たちはそれを歴史のごみ箱に捨てる」とし、和平案を「世紀の平手打ち」として一蹴した。

グリーンブラット氏の和平案には、パレスチナ・イスラエル問題で初めて、ヨルダン川西岸の7割およびオスロ合意で定められたA地区とB地区全域およびC地区の一部を含むパレスチナ人国家の境界線を明確に示す地図が含まれた。

同案では、Kafr Akabの東エルサレム、Abu DisおよびShafatに隣接する場所をパレスチナ国家の首都とし、またイスラエルが同国内のKafr Kara、Arara、Baka al-Gharbiya、Umm el Fahmなどから成る、「三角地帯」と呼ばれるアラブ系イスラエル人居住区を新パレスチナ国家に譲渡するという可能性もちらつかせた。

https://youtu.be/Ch0fV7MdbiY

イスラエルはまた、ガザのエジプト国境近くに位置するNegevの土地も手放すことになる。

グリーンブラット氏は、和平案が確定したわけではないと主張する。

「パレスチナのリーダーがせめて交渉の場につき、何か変えられることはないかという可能性を探ることすらしないというのは、非常に残念です。多くの時間を注ぎ、善意を持って交渉」した末に和平合意が達成されないというのであれば理解できます。もしもこの案が受け入れられず、イスラエル側のオファーも認められないというのであれば、それは仕方ありません。」とグリーンブラット氏は語る。

「彼らが憤慨しているのは分かります。リーダーが落胆していることも。そして和平案がいつも期待通りの物でないということも。実際のところ、この和平案のためにイスラエル側からも多くの批判を受けています。」

「しかし、状況の改善に向けた交渉を拒否し、これが自分たちの条件で、それ以外は一切受け入れられないと言っているだけでは和平合意に達することは不可能であり、そうすれば結局イスラエルが繁栄し、残念ながらパレスチナはさらに後退することになります。私にとって、それは悲劇です。」

[caption id="attachment_15542" align="alignnone" width="461"] 米国によるイスラエル・パレスチナ和平案に対する抗議デモでパレスチナ国旗を掲げ、ドナルド・トランプ米大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の肖像を燃やすデモ参加者ら。(AFP/File Photo)[/caption]

グリーンブラット氏の和平案には、イスラエルによるヨルダン渓谷併合とすべての主要入植地およびそれらを囲む緩衝地帯の保持が含まれているが、パレスチナ国家の境界線内にある飛び地となっている15か所の小入植地は対象外だ。

また同氏は、テルアビブからエルサレムへの米大使館移転、エルサレムをイスラエルの首都として承認したこと、またワシントンDCのPLO代表部閉鎖といった政策の変更を利用してパレスチナを交渉するよう仕向けようとしたということはないと否定した。

これらの動きはトランプ氏が大統領選候補として公約していたことで、和平交渉に関係なく実施される計画だったという。

「私たちはただ単に交渉に参加させるためにアメやインセンティブを与えるというやり方はしたくありませんでした。それはすでに試され、失敗に終わっているからです」と同氏は話す。

「和平案がアメなのです。善意を持ってそれを読み、自分たちなりの提案を戻せばよいのです。そうしたくないのであれば、自分で責任を取らなければなりません。もし国連がイスラエルを押さえつけるような取引を届けてくれると本当に思っているのであれば、そのようなことは起こりませんし、大きな誤解です。」

[caption id="attachment_15543" align="alignnone" width="375"] パレスチナの農家のための下水処理設備および水道へのアクセス改善プロジェクトのローンチに出席する米外交交渉特別代表ジェイソン・グリーンブラット氏。2017年10月15日(AFP/File Photo)[/caption]

パレスチナ側および和平案に批判的な人々は、トランプ和平案の真の目的は、イスラエルからしてパレスチナが拒否することが予想できた案を提示することで、イスラエルに大規模併合の正当性を与えることだと断言している。

グリーンブラット氏はこのような意見を否定し、和平案は現状に代わる唯一の現実的な選択肢を与えるものだと主張する。

「和平案をこのような内容にした理由の1つは、つまりイスラエルに対し、パレスチナが交渉に応じなければこの土地を取ってもよいが、パレスチナ人の権益も守るため、彼らのための土地も境界線を引いて確保し、交渉成立までに4年の猶予を与えたのだ、と言っているのです。」

「私たちの結論は、この和平案にも反映されていますが、時間はどんどん過ぎるということです。私たちはこれ以上パレスチナ自治政府に、イスラエルの進展に対する拒否権を持ち続けさせることはできません。これ以上、パレスチナ自治政府がイスラエルの進展に対して拒否権を持たせたくないのですが、これは私たちの手には負えません。」

「しかし、少なくとも私たちは彼らの利益を守ろうと努力しました。そして私たちがパレスチナのリーダーに自身の政府をどうするかを考えるという当然のこと以外に求めるのは、交渉の場につくことだけです。」

和平案の政治的な開示が否定的に捉えられたことは別として、パレスチナは変更や調整を提案できる直接交渉の機会を逃したとグリーンブラット氏は指摘する。

[caption id="attachment_15544" align="alignnone" width="472"] ヨルダン川西岸ラマラの本部で開かれた指導者会議で演説するパレスチナのマフムード・アッバース大統領。2020年5月19日(AFP)[/caption]

「最終的に、人々が何を求め、何を目指し、何を達成するかは同じではありません。私たちは、パレスチナの指導者が過去数十年にわたって国民に様々なことを約束し、彼らが与えられるべきだと考える、この紛争の解決策を求めているということは認めます。」.

「彼らが求めているのは実現可能なことではなく、私たちからすれば権利に基づいていません。」

「両者が交渉の場につかなければなりません。なぜならこれは米国、国連、EU、ロシアが解決してくれるものではないからです。」

「合意は誰にも行えません(パレスチナとイスラエル以外)。パレスチナの指導者は、まず自国の政治を立て直す必要があります。そうでなければ話し合うことは何もありません。」

「(バーレーンのワークショップは)パレスチナ政府がパレスチナ人のための努力を台無しにしようとした例の1つです。500億ドルの小切手を渡し、『このお金を持って行きなさい』などと言う人は誰もいません。それは非常に失礼(なことである)だけでなく、(また)完全に非現実的です。」

[caption id="attachment_15545" align="alignnone" width="468"] イスラエル占領地のヨルダン川西岸ラマラ近くにあるユダヤ人入植地ギバットゼーブ景観。2020年5月13日(AFP)[/caption]

「私たちは、もしこの紛争から脱する方法を見つけられれば、これほど多額の資本注入を得て、素晴らしい新国家を作ることができますよ、と言いたかったのです。」

「和平合意に達すれば、パレスチナ自治政府は全世界の資金や支援を得て、イスラエルと同じくらいユニークで、うまく行けば素晴らしい国を建てる近道を見つけられるのです。残念ながら、彼らはパレスチナ人の参加を阻止し、会議を台無しにしようとしました。」

「非常に大きな好機を逃しました。」

グリーンブラット氏は、先の総選挙で15議席を獲得したイスラエルのパレスチナ人指導者について、「助けにはならない」として信頼していないという。

政府樹立を目指してネタニヤフ首相のライバルであるベニー・ガンツ氏と交渉を始めた「アラブ・ジョイント・リスト連合」だが、結局ガンツ氏がネタニヤフ氏と完全シオニストの新連立政権を組むことになり、追い出される形となった。

現在汚職の罪に問われているネタニヤフ氏は、新連立政権下で18か月間首相を務め、その後ガンツ氏が同じく18か月首相の座を引き継ぐ。

「これが現実です。これが実際に和平案を受け入れた政府なのです。」とグリーンブラット氏は話す。

「ベニー・ガンツとビビ・ネタニヤフが二人とも和平案を支持し、パレスチナ側との交渉に臨もうとしています。パレスチナはこれを話し合いの機会として歓迎するべきであり、すべてを投げ出すのは間違っています。」

平和はまだ実現できるとグリーンブラット氏は主張する。

「遺憾、もしくは腹立たしさという感情があったとしても、米国は平和の実現に尽くすつもりです。トランプ大統領というのは平和を実現させることのできるリーダーなのです。」

「イスラエル政府、ビビ・ネタニヤフ氏のことを私はよく知っていますが、彼がイスラエルの安全保障、そして和平合意の達成に必要な条件を確保できれば、和平合意は可能だと思います。」

「しかしそのためには、アッバースに力強いリーダーシップが求められます。妥協も必要となります。私は彼に挑戦することを強く勧めます。歴史上でも非常にユニークな時代において、大きな好機を逃すことになります。」

グリーンブラット氏は和平案が「二国家解決」を取り入れたものではないとしたうえで、彼の提案では新たな概念を追求しており、72年間にわたって平和を実現できなかったという現実に訴えるものだと説明する。

「私は『二国家解決』という言葉は使いません。それは単に、このたった5文字の言葉がこれほど複雑なプロセスを表現することは不可能だからです。」

「私の言葉を使うとすれば、これは両国ができる全ての妥協を基に60~80ページにまとめられた、現実的なパレスチナ国家を支援するものです。」

「最終的に私が見たいのは、安全で安定したイスラエルの隣に存在する、安全で安定したパレスチナ国家の繁栄です。しかし、そのような安全で安定したパレスチナ国家には条件が伴います。」

「条件を満たせば、問題はありません。条件を満たさなかった場合、それこそ条件を確立しなければならない理由となります。」

「私は、パレスチナ国家が最終的にイスラエルの脅威となり、イスラエルが国民の安全を確保したことにより国連や他国から非難されるという状況は望んでいません。」

グリーンブラット氏は、「一方で、パレスチナ人に標準以下の生活をしてもらうのも不公平です。私たちの和平案がそうさせるとは思いません。むしろ、指導者がルールに従ってうまくやれば、パレスチナの人々に大きなチャンスを与えられると考えています。」という。

和平案がアメなのです。善意を持ってそれを読み、自分たちなりの提案を戻せばよいのです。そうしたくないのであれば、自分で責任を取らなければなりません。

グリーンブラット氏はパレスチナに交渉を再開するよう求め、拒否し続けることはパレスチナ人を無国家という未来に陥れることになると警告する。

「この対談はとても重要です。多くの誤った情報が出回っていますから。」と彼は言う。

「この和平案を台無しにしようとしたり、またはパレスチナ-イスラエルやイスラエル人とアラブ人の関係を悪化させたりするような政治的な働きかけが多くあります。これらの全ては、単に人々をさらに引き離し、生活を悪化させるだけです。」

「私は、一般の人々やメディアとのこのような対談が増えればよいと思います。話し続けるのです。会話というのは難しく、ときに痛みも伴います。しかしイスラエル人とパレスチナ人、そしてもちろんイスラエル人とアラブ人という社会を再びつなげなければ、平和を実現する可能性は弱まるだけです。」

「すべての人とつながり、どれほど難しくても腹を割って話し合うことで、紛争解決のチャンスが広がります。」

グリーンブラット氏は自身のビジネスに従事するとして、2019年9月にホワイトハウスを去り、世界的なベンチャーキャピタルのプラットフォームであるOurCrowdの中東との関係構築を担うパートナーとなった。

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