
長年実現が待たれていたムハンマド・ビン・サルマン皇太子による水曜日のトルコ訪問は、新型コロナウイルスパンデミック発生以来初の湾岸諸国外歴訪の一部となった。また、来月行われるジェッダ・サミットに参加予定のエジプトとヨルダンにも訪問した。
皇太子のトルコ訪問は、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領による4月のサウジアラビアへの関係修復を目的とした訪問を受けてのものである。両国の緊張した関係を修復するための、数年ぶりのハイレベル相互訪問となる。エルドアン氏の言葉を借りれば、この訪問は「兄弟国である2国間の協力の新時代を始めるという共通の意志の現れ」であった。
エルドアン氏は大統領府で皇太子を公式に歓迎、式典後に1対1および代表団レベルの会談が行われた。会談では、二国間関係をより高いレベルに引き上げる方法について話し合われた。
トルコとサウジアラビアの関係を注視する研究者として、私はしばしばこの地域における2つの大国の複雑な関係をジェットコースターに喩えて説明する。両国の関係は、特にこの20年間、何度も浮き沈みを繰り返してきた。両者の関係の性質に関して、私は「その場限りの関係」という言葉を使う。
サウジアラビアとトルコの関係を詳しく調べると、地域的、国際的な要因が重なり、地域のパワーバランスに関わる展開になると、両国を協力の方向に向かわせることがわかる。2000年代初頭に起きたパワーバランスの変化では、トルコとサウジアラビアの両国の国内事情はさておき、互いに積極的にアプローチが行われ、対話というさまざまな手段で意見の相違を調整することが可能であった。しかし、地域開発の原動力のほとんどがイデオロギー的あるいは国家独自の視点に由来するものであった場合、国内的な要因が両者の関係を抑制することが見られた。この点では、2010年以降の中東の発展が最も良い例であった。
地政学的な観点からは、トルコとサウジアラビアの間の強固な戦略的・制度的関係を阻む限界が、過去10年間に目に見えて現れていた。しかし、トルコとサウジアラビアの間に緊張をもたらした問題のほとんどが部分的に消滅し、両国関係が新しい時代に向かっている今、その関係を一過性なものにとどめず、長期的な相互利益のために制度化する必要がある。そのためには、両国は外交政策上の相違に対処するための協力的なロードマップを打ち出す必要がある。強固で制度化されたロードマップは、両国の関係における将来の課題に対して、より堅固に立ち向かえる可能性が高い。
アンカラとリヤドの関係は、特にこの20年間、何度も浮き沈みを繰り返してきた。
シネム・センギス
経済的手段、安全保障分野での協力、そして最も重要なこととして、「パブリック・ディプロマシー(広報文化外交)」がサウジアラビアとトルコの関係を強固にする重要な要素になり得るだろう。社会、文化、メディアの分野での協力も、和解のプロセスを強化するために極めて重要であり、双方に長期的な利益をもたらすだろう。水曜日の会談が、この地域における重要な2国間の、そうした長期的、制度的な関係への道を開くことを希望する。
サウジアラビアがリヤドで開催する2030年万国博覧会の誘致をトルコが支持することを確認したエルドアン氏の発言は、この点で重要であり、両国が経済圏を越えて文化・社会圏にまでパートナーシップを拡大しつつあるように見えることを示している。
このような和解において、経済的要因が注目されるが、地政学的、地域的な安全保障の状況がより推進力となっていると思われる。地域全般、特に湾岸の安全保障と安定に対するこの2国の関心は、ウィン・ウィンを基本に発展させることができる共通の基盤である。トルコとサウジアラビアが互いに現実的な理解と期待を深めることに成功すれば、さらなる協力に必要な相互信頼への道が開かれるであろう。
一方、皇太子の中東地域歴訪は、バイデン米国大統領が来月サウジアラビアを訪問し、露・ウクライナ戦争による石油危機の中で同国との関係修復を目指すことに先立って行われたものである。米国の政策は、トルコ・サウジアラビア関係において特異な位置を占めている。トルコもサウジアラビアも、アフガニスタンやウクライナでパートナーを守れなかった西側の同盟国を、もはや信頼していない。
中東諸国は、新型コロナウイルスによるパンデミック後の状況とウクライナ戦争の両方による国内経済問題とともに、深刻なエネルギー危機と食糧危機に直面している。これらの危機は、中東諸国間の他の争点を取るに足らないものにしている。今は、外交問題よりも国内問題が重視される時代なのである。
この1年、トルコはイスラエル、エジプト、UAEといった地域大国との関係を修復するための外交に乗り出しており、中東関係においてより現実主義的な時代が到来している。したがって、トルコとサウジアラビアとの関係改善は、相互の利益の維持に焦点を当てることになるだろう。両国は、一方がエネルギー分野に特化し、他方は防衛産業と食糧生産に重点を置いており、経済は相互補完的である。