
ジョー・バイデン氏が、今月中東を訪問し湾岸諸国やアラブ地域の指導者たちと会談するのは、要求を行ったり、ロシア・ウクライナ危機への協力を求めたり、原油価格の上昇を抑えたり、市場にさらに石油を供給したり、米国主導の新しい地域協定を求めたりするためだけだと考えているなら、誤りである。
また、米国大統領や彼の政権が、この地域の政治的・経済的打算がパンデミックやウクライナ戦争以前と同様であると考えているならば、それも誤りである。
バイデン氏は7月13日から16日の間この地域を訪れ、アラブ世界のオブザーバーやメディアの注目の的となるであろう。私たちはあらゆる分析や見解を聞くことになる。その中には論理的なものもあれば、思考や論理、状況の変化の限界を超えるようなものもあるだろう。
以下の文章では、待望の民主党大統領の地域訪問や、同大統領からアラブの指導者らへの要求、そして彼らから同大統領への要求について冷静な分析を試みる。
アラブと米国の関係が、もはや以前のようなものではないことは、既に確かだ。アラブ側は、戦略的同盟国からこれまで手の届かなかった利益を得るために、多くの手札を使うことができる場を見出すことができた。逆に言えば、これまではその同盟国はアラブに対してそのような利益を提供することに消極的であった。そのため、アラブ側が受け取る以上に与えるという不平等な関係が常に存在していた。
2021年1月に大統領に就任したバイデン氏は、これまで同地域の訪問を控えてきた。特に多くのアラブ・湾岸諸国の指導者らが他の大国と新しく多様なパートナーシップを築きたいと表明したことを受け、彼は今、アラブが国際的な均衡状態の重要な要素であると断言している。
私は、アラブが米国政府との最近の危機に対応したやり方を高く評価している。彼らが昔からの同盟国に合わせて、国際的な同盟国を探したのは、自国の安全と安定を維持したいという願望に基づいていた。彼らは、それをアメリカに対する懲罰的な手段とは認識していなかった。
確かなのは、ロシア・ウクライナ戦争に対するアラブの姿勢、特に国際市場からロシア産石油がなくなる分の補填を湾岸諸国が拒否したことは、アラブに対する立場を再考するようにという、アメリカへの明確なメッセージであるということだ。特に、イランとその同盟国の力を地域に解き放った2015年のイランとの核合意の影響に関しては、なおさらである。また、アラブ・イスラエル紛争もアラブを動揺させる問題であったかもしれない。
アラブ、主に湾岸諸国は、政治的な平穏と安定、経済的な繁栄の局面を享受しなければならない。湾岸諸国はこれを享受し、湾岸戦争後の数十年間の努力の成果を得なければならない。湾岸戦争が米国政府にとってアラブとのアンバランスな関係を築く契機となったように、ウクライナ戦争はアラブにとって米国とのバランスのとれた関係を確保する契機となるかもしれない。
バイデン氏は、この地域訪問で、異なる立場に直面することになる。この立場は2つのことに起因している。1つは、アラブの手段の違いであり、米国が固定的な戦略的同盟国であることを認めつつ、バランスのとれた関係を確立する必要性と、他の国際的大国とパートナーシップを結ぶ可能性に基づくものである。2つ目は、近年の国際舞台における変化により、アラブ諸国が強い立場に置かれるようになったことである。
ドナルド・トランプ氏の大統領時代に明確に示されたエジプトとアメリカの友好関係は、バイデン氏がホワイトハウスに来て以来、心配と懸念によって損なわれている。彼の姿勢は、6月30日革命後の国家に対するバラク・オバマ氏の立場と似ているように思えるが、それは不安で始まり、承認と無条件支援で終わった。
バイデン氏は、いわゆる「アラブの春」の時期に、オバマ政権がテロリストであるムスリム同胞団を支援したことの負の影響に直面すべきだ、と私は見ている。このような立場から、米国は、客観的であれ、このような考え方や方向性を拒否するエジプト国民の性質に関連するものであれ、制約やその他の配慮を一切排除した論理を採用したのである。
また私は、エチオピアが一方的に活動し続ける大エチオピア・ルネサンスダムの危機にも取り組むべきだと考えている。例えば、この問題に関して、トランプ氏の姿勢は明確だった。自国にとって都合が良いと判断したやり方で水資源を保全するというエジプトの権利を支持さえした。
私は、バイデン氏とは、人権、援助、相互協力のあり方の理解など、他の問題にも取り組み、議論することが重要であり、特にこれがアラブの強い姿勢に支えられているのであれば、なおさらであると考えている。
バイデン氏のこの地域への訪問が、エジプトと米国の歴史的関係の深さを裏付けるものであることは、周知のとおりだ。何十年にもわたる両者の利害関係のリストは長く、簡単に取り消したり無視したりすることはできないからである。しかし、エジプトは、一般的なアラブ諸国と同様に、重要な手札を持っているため、この関係は何らかの変化を遂げるかもしれない。つまり、利益の論理は、確実に柔軟性の余地を残しながら、双方にとって基本的なものになるだろう。
今回の訪問の結果、エジプトと米国の関係の将来的な姿が明確になるのは間違いない。バイデン氏が異なる基盤で協力することを望むのであれば、それは歓迎すべきことだ。しかし、もし彼が、以前から固定されている基盤だけに頼るのであれば、それは確実に誤りである。この時代、排他的な同盟は存在せず、その権力に関わらず、どのような相手にも配慮がなされることはない。世の中は変化しており、権力もどんどん変化している。人生は続く、当然のように。