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米国、イスラエル支持により新たな孤立感

イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスの紛争が継続する中、ガザ地区中部のデイル・アルバラの病院で、イスラエル軍の空爆によって死亡した親族の覆いに包まれた遺体の傍で悲嘆に暮れるパレスチナ人男性。2023年12月20日。(AFP)
イスラエルとパレスチナの武装組織ハマスの紛争が継続する中、ガザ地区中部のデイル・アルバラの病院で、イスラエル軍の空爆によって死亡した親族の覆いに包まれた遺体の傍で悲嘆に暮れるパレスチナ人男性。2023年12月20日。(AFP)
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24 Dec 2023 06:12:47 GMT9
24 Dec 2023 06:12:47 GMT9
  • ソーシャルメディアによってありのままのガザ地区の情景がアラブ諸国の市民たちに伝えられ、米政権の「全面的なイスラエル偏重とパレスチナ人の人権の否定」が白日の下に曝されることになったとマンキス・ダガー氏は述べた

ワシントン:ジョー・バイデン大統領が、「アメリカ・イズ・バック」と宣言し米政権を担当し始めてから3年が経過したが、ハマスとの戦争を行っているイスラエルを支持していることにより、米国の国際的なイメージは悪化している。

12月22日、苦心を重ねた交渉の末、苦境に立たされたガザ地区への人道支援に関する国連安全保障理事会決議を可決させた米国は、最近の孤立状態からの脱却へ一歩前進した。戦闘停止を求めるこれまでの2回の要求に対して、拒否権を発動した後の米国の動きだった。

しかし、米国は、議案を支持した最も緊密な同盟国である英国やフランス、日本からは、依然として距離を置いたままだった。決議案の採決に、米国は棄権し、ロシアは参加した。

イスラエル軍が 2023年12月22日に配布したこの資料写真には、イスラエルとパレスチナの組織ハマスの戦闘が続く最中、ガザ地区で作戦行動を展開するイスラエル軍の兵士が写っている。(AFP)

一週間前の国連本会議で、米国はオーストリアとチェコ共和国という欧州の2ヶ国のみと共に、ハマスによる10月7日のイスラエル襲撃に端を発した戦争に対する拘束力を有しない停戦要請に反対票を投じた。米国のアジアにおける同盟国で反対票を投じた国は無かった。

欧州の政策立案者の大半は、米国と言えば、現在でも、ロシアの侵攻に対抗するウクライナへのバイデン米大統領の強固な支援をまず脳裏に浮かべると、ロンドンの王立国際問題研究所で米国・南北米大陸プログラムのディレクターを務めるレスリー・ビンジャムリ氏は述べた。

「現在、世界の他の地域では、米国はイスラエル人を大切にし、ウクライナ人を大切にするものの、褐色の人々についてはどうでも良いと思っている国なのだと思われているというわけです。残念ですが、そのようなナラティブが広まってしまっているのです」と、ビンジャムリ氏は語った。

イスラエルを手放しで支持した前任者のドナルド・トランプ氏とは異なり、バイデン米大統領は、米政権が兵器や軍需物資の提供支援と外交的支持を継続しているにも関わらず、ベンヤミン・ネタニヤフ首相とイスラエル政権がガザ地区の民間人を保護出来ていないことへの不満を公然と表明している。

バイデン政権の関係者によると、水面下での圧力が実を結び、ガザ地区への燃料の搬入や同地区内でのインターネットへのアクセスの復旧、境界上の検問所の再開についてイスラエルが譲歩したという。

しかし、ガザ地区の人々の苦境を伝える画像や映像が拡散する中、バイデン大統領がネタニヤフ首相を「親密に抱きしめ、その後同首相に静かに強く圧力をかけている」という物語が「効果的だったのは1週間程度」に過ぎなかったとビンジャムリ氏は述べた。

ギャラップ・インターナショナルの中東担当ディレクターであるマンキス・ダガー氏によると、11月にアラブ6ヶ国の一般市民を対象として行った調査では、米国がこの戦争において積極的に役割を果たしたと確信していたのは7%だけだったという。

20年前のイラク侵攻以来、アラブ世界におけるワシントンの評判は著しく低下しているが、最近までは15~30%が米国に対して依然として好意的だったと、イラクでアルムスタキラ研究グループを設立したダガー氏は述べた。

ダガー氏は、米国という「トレードマーク」は、「民主主義や人権、言論の自由といった特に知識人と中産階級にとって素晴らしい価値を持った多くの事物」を意味していたのだと語った。しかし、「ガザ地区の戦争で、よく言われるように、最後の一葉が落ちました」とダガー氏は言った。

ソーシャルメディアによってありのままのガザ地区の情景がアラブ諸国の市民たちに伝えられ、米政権の「全面的なイスラエル偏重とパレスチナ人の人権の否定」が白日の下に曝されることになったとダガー氏は語った。

ダガー氏の見解によると、世論調査の結果が示すところでは、現在のアラブ世論の主な受益者は、中国やロシア、そして最も際立っているのがイランであるという。イランは、アラブ世界とは歴史的に緊張関係にあるものの、中東地域において独自の方向性を持つ同国政府はハマスを支持している。

米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、国際世論に対して、怒りの焦点をハマスに置くことを呼びかけた。イスラエルの統計に基づくAFPの集計では、ハマスの戦闘員がイスラエルに侵入した10月7日、約1140人が殺害され、他に250人が拉致され人質となっている。

イスラエルは、空域と地上における容赦のない作戦で対抗し、ハマス当局の発表によると2万人以上(その大半は女性と子供)のパレスチナ人が死亡しているという。

ブリンケン米国国務長官は、米国はガザ地区への支援を実現するために「他のどの国よりも多くのことを実行しました」と述べた。

12月20日、ブリンケン米国国務長官は、記者たちに対して、各国政府は「米国との協力を望んでいます。特定の問題においては米国に同意しない可能性のある国であっても米国と協力したいと考えているのです。この危機において米国のリーダーシップが求められています」と述べた。

中国は地域外交を強化しているが、バイデン米政権は、イランの支援を受けたイエメンの反政府勢力フーシ派による商船への攻撃を阻止する方向でイラン政府への影響力を行使することを中国政府に求めることで、中国の虚勢を露にしようとした。

中国は中東地域においては安全保障のための手段は持っていないのに等しいが、米国は空母を派遣し、重要度の高い航路の保護のために複数国家で連携を行うことで、フーシ派の攻撃に対応してみせた。

ワシントンに本拠を置く中東研究所のブライアン・カトゥリス副所長(政策担当)は、バイデン政権は国民の怒りを明らかに認識しているが、ハマスの脅威に対処する「象徴的」な停戦の呼びかけよりも「実際的な」解決策を優先していると述べた。

米国の外交政策を非難する数多くのアラブ諸国は、「米国が提供する安全保障の傘によって部分的に守られている国々」なのだとカトゥリス副所長は語った。

「アラブ世界から発せられる声明の多くには、少なからず統合失調的な部分があることに私は気付きました。彼らは米国とは相容れない、他方彼らは米国無しでは存続出来ないというわけです」

AFP

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