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米国とイランは新たな核合意を受け入れるか

IAEAのラファエル・グロッシ事務局長と会談するイランのホセイン・アミラブドラヒアン外相。2022年3月5日、イランのテヘラン。(AFP)
IAEAのラファエル・グロッシ事務局長と会談するイランのホセイン・アミラブドラヒアン外相。2022年3月5日、イランのテヘラン。(AFP)
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10 Aug 2022 08:08:26 GMT9
10 Aug 2022 08:08:26 GMT9

ロシアによるウクライナ侵攻、中国と台湾の睨み合い、医療や経済の危機、イスラエル国家とパレスチナの「イスラム聖戦」運動の交戦などで世界的な緊張が高まっており、イラン核合意協議の影が薄くなっている。

「包括的共同行動計画(JCPOA)」の復活はまだ検討中なのか。この問題はもはや旬なニュースではないかもしれないが、イラン体制と米国政権は間違いなくまだ2015年の合意の復活に向けて努力している。先週木曜日、イランとの核協議を再開するという突然の知らせが世界の全ての交渉当事者に届いた。

実はウィーンでは、イランの核問題担当首席交渉官のアリ・バゲリ・カニ氏とEU欧州対外行動庁のエンリケ・モラ事務次長の会談によって、イランと米国の間接協議が既に始まっていた。モラ事務次長は再び、バゲリ・カニ氏と米国のロバート・マレー・イラン担当特使の間の仲介役となった。

EUのジョセップ・ボレル外交政策上級代表は、フィナンシャル・タイムズに先月下旬に掲載された論説において、JCPOA復活に向けた新たな枠組みを提示したことを明らかにした。

BBCの報道が事実であれば、それはイランと米国の指導者が待ち望んだハッピーエンドと言えるかもしれない。BBCは匿名のEU高官の話として、イスラム革命防衛隊(IRGC)を米国の「外国テロ組織」の公式ブラックリストから削除することを求めるイランの要求が議題から外され「将来的に」検討されることになったと伝えた。また、この高官はBBCに対し、米国は将来の大統領が新たな合意から離脱することはないと保証する意向であると明らかにした。

しかし、イラン政府が認識しなければならないのは、米国が国民によって大統領が選ばれる民主主義国家であることだ。つまり、以前の大統領が結んだ合意を将来の大統領が取り消すことを禁止できる法律はないのだ。

賢明なイランはこの事実を十分に認識しているが、このならず者国家に対する制裁が解除されれば何十億ドルもの大金を受け取ることができるのだから、将来的に何が起こるかは問題ではないのだ。民主党が政権にある限りは、彼らにとって酷い事は起こらない。

一方で、イランはIRGCの力によって地域最大の勢力になることができるだろう。そうなれば、米国のいくつかの主要な同盟国におけるただでさえ脆弱な安全保障が不安定化することになる。

先週土曜日のテヘランでの会談において、IRGCトップのホセイン・サラミ少将はパレスチナ「イスラム聖戦」のジアド・ナカハレ事務総長に対し、イランは最後まで同組織を支援することを約束すると伝えた。また、「全ての反シオニスト」勢力が「エルサレムを解放しパレスチナの人々の権利を守るために合同編隊を組んで現場にいる」と述べた。

イラン体制は米国政府に対し、ウィーンにおける今から数時間が決定的なものになり得ることを認識すべきだとシグナルを送り続けていた。

ダリア・アル・アキディ

バイデン大統領は、米国国内での自分の不安定な立場に直接関わる理由がなかったとしたら、イラン体制による戦略的脅威の全てに目をつぶることはなかっただろう。

マレー特使は、ウィーンに向けて出発する前に、協議の再開の準備をしているとツイートした。「我々の期待は限定的だが、米国はEUの努力を歓迎し、合意に至るための誠実な試みの用意ができている。イランにも同じ用意があるかどうかは間もなく明らかになるだろう」とツイートでは述べていた。

一方、イラン体制は米国政府に対し、ウィーンにおける今から数時間が決定的なものになり得ることを認識すべきだと様々なチャンネルを通してシグナルを送り続けていた。

テヘラン・タイムズは、合意の安定はそのバランスにかかっているという匿名のイラン外交官の言葉を伝えた。「信頼には信頼で応える。セーフガード関連の疑惑は政治的な圧力により作り出され継続されてきたものであって、本来政治的な問題だ。それがイランに対する将来的な嫌がらせの口実となってはならない」とその外交官は述べている。

イランはバイデン大統領に対し期限を与えたことで、中間選挙前に内圧を高めた形となった。一方、バイデン政権は左と右からの挑戦に直面している。マレー特使のチームがイランの要求を黙認するようなことがあれば、この地域において地獄の門が開くだろう。その結果、バイデン大統領の同盟者の多くが被害者となり、イランとその代理勢力が最大の勝者となってしまうのだ。

  • ダリア・アル・アキディ氏は、安全保障政策センターのシニアフェロー。ツイッター:@DaliaAlAqidi
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