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制裁に対するロシアの最後通告が欧州に圧力をかける

2022年9月5日、ドイツへの天然ガス供給を停止するとのロシアの発表を受け、ユーロは0.99ドルを割り込んだ。(AFP)
2022年9月5日、ドイツへの天然ガス供給を停止するとのロシアの発表を受け、ユーロは0.99ドルを割り込んだ。(AFP)
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09 Sep 2022 10:09:01 GMT9
09 Sep 2022 10:09:01 GMT9

ロシア政府は今週、欧州に対して最後通告を行った。欧州が制裁を解除すればロシアは再び天然ガスを供給するというのだ。これはどの程度現実的な提案だろうか。そして、ウクライナ侵攻にどのような影響を及ぼす可能性があるのだろうか。

ロシアのエネルギー供給会社ガスプロムは先週金曜日、パイプラインのタービンに「異常」があるとして、ノルドストリーム1を通した西への天然ガス供給の停止を無期限に継続すると宣言した。これに対し、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、EUにおいてロシア産天然ガスに制限を課す時がきたと発表し、同委員会は近日中に具体案を用意すると明言した。

同日、G7加盟国(米国、イギリス、カナダ、日本、イタリア、フランス、ドイツ)の財務相らは、ロシア産エネルギーの価格に上限を設定する意向を宣言した。それに向け、ロシア産石油の価格に上限を設定する「幅広い国際的な連合」を作りたいとしている。米財務省は、ロシアからの石油供給に制限を導入すれば原油価格の急騰を解消できると見ているが、ドイツはロシア産天然ガスへの価格上限設定に反対している。

ドイツは、エネルギー危機を念頭に、エネルギー会社の増収分に対する課税などの「より挑発的でない措置」を中心としたアプローチにすべきだという考えだ。セルビアのアレクサンダル・ヴチッチ大統領は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領との共同記者会見において、今度の欧州の冬は寒くなり、その次の冬は「北極」になると予測した。誰も解決策を見出そうとしておらず、誰もが妥協ではなく敵の敗北を期待しているからだという。

欧州は非常に複雑な立場にある。一方では、代わりとなる天然ガス供給国はない。エネルギー資源の豊富な湾岸協力理事会(GCC)加盟国を含む他のエネルギー供給国との交渉は続けられているが、既存の契約や物流の制約があるため、今度の秋冬に間に合うように欧州へ天然ガスを提供してもらうことは不可能だ。もう一方では、制裁は依然として効果的な経済手段であり、欧州の立場からは解除するわけにはいかない。ウクライナにおけるロシアの行動を受け入れることを意味するからだ。

欧州による制裁は、ロシア経済に打撃を与えつつも、欧州経済にも(もしかしたらはるかに大規模な)損害をもたらしている

ディアナ・ガリーヴァ博士

このシナリオは、ロシアが掌握する様々な領土でロシアによる住民投票を「容認」することにつながるかもしれない。8月末現在、ロシア軍はドネツク、ザポリージャ、ヘルソン、ルハンシク、ハルキウ、ムィコラーイウの各州の全域または一部を占拠し続けている。2014年にクリミアで行われた住民投票は、これら全ての地域で起こる可能性があることの例として見ることができる。さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、水曜日の東方経済フォーラムの総会で質問に答え、ウクライナ政府は2014年の「クーデター」に基づいているため「非合法」であると発言した。このことは、ロシアと欧州諸国との対話の重要な条件が、ウクライナの現政権の交代であることを示唆している。

ロシアからの最後通告に従わなければ、欧州ではエネルギー価格の高騰どころかエネルギー不足まで起こるだろう。この対立の結果として、一般市民や企業が困難に直面している。例えば、イギリスではエネルギー危機の深刻化によりパブが大量閉鎖の危機にあり、他の中小企業もエネルギー価格の高騰により倒産しつつある。ドイツでは、原子力発電所2基の廃炉が延期され、650億ユーロ(650億ドル)の家計支援パッケージが提供される。欧州による制裁は、ロシア経済に打撃を与えつつも、欧州経済にも(もしかしたらはるかに大規模な)損害をもたらしている。

双方が妥協点を見出していない現状がもたらす結果についてのヴチッチ大統領の予想が最も正確なようだ。そして、欧州は最後通告を受け入れないだろう。

ウクライナはロシアと欧州の関係のバロメーターとなっており、妥協点を探ることはロシアのさらなる動きどころか欧州での別の「特別軍事作戦」を許すことを意味するかもしれない。一方でロシアは、自国軍は「国連憲章を完全に遵守して」ドネツク・ルガンスク両人民共和国を支援しているとの立場を強調している。

言い換えれば、圧力があったとしてもこの行き詰まりはすぐには解消されそうにない。問題は、欧州がいつまでこの困難に対処できるか、そしてロシア以外でエネルギー資源の豊富なGCC諸国などがどれほど早く欧州への支援を提供できるかだ。

  • ディアナ・ガリーヴァ博士はオックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジのアカデミック・ビジターだった(2019~2022年)。『カタール:レンテッド・パワーの実践者(ラウトレッジ/2022年)』、『ロシアとGCC :タタールスタンのパラディプロマシーの事例(IBタウリス・ブルームズベリー/2023年)』の2冊の著書がある。また、『ブレグジット後の欧州と英国:イランとGCC諸国に対する政策課題(パルグレイブマクミラン/2021年)』の共同編集者でもある。ツイッター: @diana_galeeva
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