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中国がイスラエル・パレスチナ紛争に変化をもたらすには

2023年6月14日、北京での歓迎式典に出席したパレスチナ自治政府のアッバース大統領と中国の習近平国家主席。(AFP)
2023年6月14日、北京での歓迎式典に出席したパレスチナ自治政府のアッバース大統領と中国の習近平国家主席。(AFP)
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15 Aug 2023 10:08:38 GMT9
15 Aug 2023 10:08:38 GMT9

中国が中東紛争の仲裁役として重要な役割を果たす可能性はある。実際、既にそうなってきているのだ。しかし、イスラエルによるパレスチナ占領の場合、仲裁はほとんど意味をなさない。

中国が4月にサウジアラビアとイランの和解をどうにか実現させる以前から、中国外交は並外れた成熟ぶりを見せていた。長年、中国は世界情勢において部外者であり、経済成長や地域経済統合で満足していると思われてきた。

ドナルド・トランプ前米大統領は2018年、この強大なアジア国家に対して前代未聞の貿易戦争を仕掛けたことで、中国の世界進出を余儀なくさせた、いやむしろ拍車をかけた。トランプ氏の計画は逆効果に終わった。米国は、中国を米国の命令に屈服させることに失敗しただけでなく、貪欲な外交として知られるようになった、自己主張の強い中国の外交姿勢を刺激した。

米国、あるいは欧米の視点から見れば、この新戦術は敵対的で攻撃的なものと認識された。しかし、中国から見れば、この政策は、歴代の米国政権が西側の同盟国と共に中国に対して仕掛けた容赦ない攻撃により必要とされたものである。

ロシア・ウクライナ戦争は、国際紛争および外交における中国の役割を際立たせている。3月に発表された中国による12項目の和平提案は、西側諸国に印象づけることはできず、ロシアも表面的に歓迎しただけだったが、重要な変化を浮き彫りにした。中国が潜在的な仲裁者としての入念な政治的立場を構築する必要性を発見したという事実は、中国がもはや国際舞台で脇役を演じることに満足していないことを物語っている。

中国の外交は、特に欧米のメディアや政界では、本気なのか、善意なのかさえ不明だが、多くの人々から見込みがないものとみなされていた。

中国はもはや国際舞台で脇役を務めることには満足していない

ラムジー・バロード

しかし、そのわずか3週間後、中国が仲介したイランとサウジアラビアの合意が発表されたのである。米国をはじめとするこの地域における主要な政治的有力者たちは、意表を突かれたようだった。グローバルサウスの多くのジャーナリストたちが、中国の成功談を中東で紛争を起こしやすく行き詰まりがちな米国の外交と比較した。

中国はこの成功に後押しされ、イスラエルとパレスチナの仲裁を申し出るなど、新たな外交領域に踏み込んだ。パレスチナ人は中国の貢献を歓迎したが、イスラエル人は冷淡だった。

中国政府は、パレスチナ人とイスラエル人の双方を真の和平交渉に参加させるのが不可能に近いことは認識している。パレスチナは米国の支配から逃れるか、せめて均衡を保とうと必死だが、イスラエルにとっては、最大の政治的支援者であり、資金提供者であり、軍事的後援者である米国を切り捨てることは得策ではない。

中国とイスラエルは近年、比較的強力な経済的、そして中国にとっては戦略的関係を築いてきたが、イスラエルにとっての中国の地政学的価値は米国のそれとはまるで比較にならない。また、特に中国は歴史的にパレスチナ人の自由を求める闘いを支援してきたのだから、地政学的な移行期にある今、イスラエルが中国に政治的な影響力を供与したとしてもあまり意味がないだろう。

何十年もの間、中国は国連においてパレスチナ解放機構、そして後にパレスチナ国家の主要な支持者として、イスラエルの占領を終結させることに関する国際法の尊重と遵守を主張してきた。当然のことながら、中国は1965年にパレスチナ解放機構(PLO)の政治的地位を、1988年にはパレスチナ国家を承認した。そして中国は現在、パレスチナの国連への正式加盟を推進している。

中国の立場は、過去数十年間における中国の南半球における戦略的同盟関係の基礎となっていた。しかし、1978年に始まった中国の経済成長と欧米中心の経済システムへの統合は、グローバルサウスにおける中国の貿易と政治的関係性を次第に弱体化させていった。

しかしこのプロセスは、米国の貿易戦争や西側諸国が中国の「一帯一路」構想への参加を躊躇していることだけでなく、米国主導の西側諸国によるロシア制裁のせいで、好転しつつある。欧米によるロシアに対する経済戦争は、中国にとって、欧米の市場や金融システムに全面的に依存することは不可能だということを、切実に思い起こさせるものだ。

パレスチナ人は、政治的な分立や派閥ではなく、一つの統一戦線として自分たちの大義を示さねばならない

ラムジー・バロード

欧米中心の経済システムからの中国の緩やかな脱却は、外交政策におけるまったく新しい取り組みと結びついており、欧米では貪欲な外交、グローバルサウスではより穏やかで優しいアプローチとなっている。

当時の秦剛外相が4月にパレスチナイスラエルの外相に電話で仲介を申し出る以前から、中国は既に4つの提案として知られる和平構想を発表していた。この提案は、中国が貿易相手国としての役割から、国際舞台における政治的有力者としての役割へと移行する用意があることを浮き彫りにした。

中国にとって、これは単に威信だけの問題ではない。個々のイスラム諸国やアラブ諸国は、イスラエルと共に、野心的な一帯一路(BRI)計画の重要な当事者である。

ここ数カ月、「誠実な平和の仲介者」を自称する米国がほぼ不在の状況で、とりわけ平和の仲介役としての中国への関心は飛躍的に高まっている。

中国はまた、対立するパレスチナ人グループ間の仲裁にも意欲を見せている。これもまた、パレスチナ政治への中国の姿勢における先触れとなるものだ。しかし、それは容易なことではないだろう。

パレスチナ自治政府の財政的な健全性、そして政治的な将来性は、米国をはじめとする西側諸国に大きく依存している。リヤード・マーリキー外相をはじめとするパレスチナの高官たちは、パレスチナ自治政府が米国に「失望」していることを理由に「中国に寝返る」と脅しをかけているが、そのような転換は、米国が許さないとしても、イスラエル自体が許すだろう。

マフムード・アッバース大統領が6月に北京を訪問し、パレスチナ自治政府が運営するメディアは地球を揺るがすような出来事だと宣伝したが、ゲームチェンジャーにはならないだろう。たしかに、パレスチナに対する中国の関心が高まっていることは明らかになったが、それを受けてパレスチナ指導部側が実質的な行動を起こす可能性は低い。

パレスチナ人が中国を必要としているのは、グローバルサウスにおける他の強力なプレーヤーを必要としているからであって、パレスチナ人が切実に必要としているのは仲裁ではないのだ。仲裁は軍事占領を終わらせたり、アパルトヘイト体制を解体させたりするものではない。むしろパレスチナ人には連帯が必要なのである。

世界の地政学的地図が大きく変化し、グローバルサウスの重要性が高まっている今、パレスチナ人は欧米の覇権主義から脱却し、アジア、アフリカ、南米、そしてその他の国々におけるパレスチナの真の戦略的縦深性と再びつながるまたとないチャンスを手にしている。

このチャンスを活かすためには、パレスチナ人は政治的な分立や派閥ではなく、一つの統一戦線として自分たちの大義を示さねばならない。その時初めて、新興大国はパレスチナを、大きく変化する世界における重大な地政学的な資産とみなすことができるようになる。

  • ラムジー・バロード氏は、20年以上にわたって中東について執筆してきた。国際的に活躍するコラムニスト、メディアコンサルタント、数冊の本の著者であり、PalestineChronicle.comの創設者である。ツイッター: @ RamzyBaroud
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