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イラン政権の石油収入と軍事的冒険主義の関連性

イランの首都テヘラン南部にある製油所で歩くイランの石油労働者。(AP/File)
イランの首都テヘラン南部にある製油所で歩くイランの石油労働者。(AP/File)
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22 Aug 2022 07:08:37 GMT9
Majid Rafizadeh
22 Aug 2022 07:08:37 GMT9

イランへの制裁、特にエネルギー部門への制裁が解除されれば、同政権の石油・天然ガス収入は大幅に増加し、中東の安定、平和、安全保障に深刻な影響を与えることになる。

イランの石油産業に対する制裁がなければ、イラン政権は輸出量を制裁前の水準まで引き上げ、およそ4倍の売上高を上げることができるようになる。そうすれば、イラン政府には数十億ドルの追加収入が生まれるだろう。これまでも、2015年の核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」の成立後、厳しい制裁が解除され、イランは世界経済に復帰した。イランの石油・ガス産業は再スタートを切り、同政権は石油輸出量を日量100万バレルから約400万バレルに増加させた。

イラン政権にとって、石油収入は極めて重要である。イランの天然ガスの埋蔵量は世界第2位であり、原油の可採埋蔵量はサウジアラビア、カナダ、ベネズエラに次いで4位だ。

石油の販売は、政府の総収入の60%近くを占め、輸出額の80%以上を占めている。実際イランの指導者には、同国が石油輸出に大きく依存していることをほのめかす者もいる。ハッサン・ローハニ前大統領は2019年、「他の収入もあるが、国を維持できる唯一の収入はオイルマネーだ 」と認めている。

しかし制裁解除はまた、イラン政権がエネルギー分野や他の産業への外国投資を呼び込むためのきっかけにもなることを強調しておく必要がある。例えば2015年の核合意後、イランは世界最大級の航空、石油、ガス企業との間で主要な契約を結ぶことに成功した。エネルギー企業のトタルエナジーズは、イラン国営石油会社と 「世界最大のガス田であるサウスパースのフェーズ11の開発に関する協定」を締結した。

また、シェルはイランの石油大手と「協力の可能性がある分野をさらに模索する」 という仮契約を結んだ。さらにイラン政権は、ボーイング社と歴史的な契約を結び、1970年代以来初めて米国の航空会社とビジネス協定を締結した。イランはまた、ヨーロッパのメーカーであるエアバス社から飛行機を購入する交渉も開始した。

制裁解除は、イラン政権の収入を大幅に増加させるだけでなく、イランの指導者が潜在的な経済・ビジネス協定を通じて西側諸国との関係を改善するのに一役買うことになるだろう。その結果、今後生じ得る西側からの圧力や、米国が再び核合意から手を引こうとする可能性に対し、イラン政権に対抗力と緩衝材を与えることになる。というのも欧米やアジアの政府は、制裁および高まる政治的緊張の時代に逆戻りすることで、イランへの投資を台無しにするようなことは避けたいはずなのだ。

石油と海外投資によりイラン政権の収入が増えれば、イランと周辺地域の国々との間の緊張が高まる可能性はより高くなる。

マジッド・ラフィザデ教授

一方、地政学的な観点から言えば、石油と海外投資による収入が増加することで、イランの神権的な体制に対し、軍事的冒険主義と周辺地域における覇権を得ようとする野望をより一層追求するために必要な、財政的救済と世界からのお墨付きを与えることになる。

増収分の主な受益者は、ハメネイ最高指導者、イスラム革命防衛隊(IRGC)、そして何より海外でイラン政権の革命的原則を推進するための国外活動を行うIRGCの精鋭部隊(ゴドス軍)である可能性が濃厚だ。

イラン経済と金融システムのかなりの部分は、IRGCと最高指導者の事務所が所有し、管理していることは特筆に値する。IRGC単独でイランのGDPの3分の1から半分を占めている。また、北東部の都市マシュハドにあるアースターン・ゴドス・ラザヴィーなどの経済拠点や宗教法人も保有している。つまり、フーシ、ヒズボラ、イラクやアサド政権下のシリアのシーア派民兵といった国家・非国家主体が、制裁緩和による次の主要な受益者となるのである。

IRGCとゴドス軍は他国への干渉を続け、周辺地域でその力を誇示している。イラン政権の石油と海外投資による新たな収入は、イランと周辺地域国々との間の緊張を高め、さらに地域を不安定にし、混乱を招き、紛争、そしておそらく人道的悲劇につながる可能性が高い。

イラン政権に対する制裁が解除され、石油収入の増加と国際経済への復帰が可能になれば、イランの強硬派と超保守派が優勢になり、イラン政権は、地域政策と外交政策の中核的な柱を根本的に変更する圧力を感じなくなるだろう。そうなれば、イランの最高指導者と革命防衛隊はハードパワーを拡大し、国家の富を軍事的冒険主義に利用し、政権への反対勢力を弾圧することができるようになる。

  • マジッド・ラフィザデ教授は、ハーバード大卒で、イラン系アメリカ人の政治学者。

ツイッター:@Dr_Rafizadeh

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