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IMFがレバノンに10億ドル貸付。しかし「資金が無駄遣いされる可能性」が

 レバノンの首都ベイルートの荒廃した港の全体像。2021年9月14日撮影。(AFP)
レバノンの首都ベイルートの荒廃した港の全体像。2021年9月14日撮影。(AFP)
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16 Sep 2021 04:09:32 GMT9
16 Sep 2021 04:09:32 GMT9
  • 資金はレバノン中央銀行に預金され、国内のキャッシュカード計画の始動に使われることになっている
  • IMF貸付金の悪用の可能性を政治家が警告「これはミカティ政権に対する最初のテストだ。資金は慎重に使わねばならない」

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノンは切迫した財政危機に苦しんでおり、国際通貨基金(IMF)からの無利子資金注入は助けになるが、レバノンがその資金をどのように使用するのかに関しては懸念の声が多い。

IMFはレバノン財務省に、レバノンは約11億ドルの特別引出権(SDR)を受け取ることを伝えた。8億6000万ドルは2021年度の、2億7500万ドルは2019年度分となる。この資金はレバノン中央銀行(BDL)の口座に入ることとなる。

レバノンを過去2年間に渡って荒廃させている財政・経済危機への対処のため、レバノンはこの配分を頼りとしている。この資金は国内のキャッシュカード計画の始動にも使われる。燃料補助金の完全な打ち切りが決定される中、これによりレバノンの70万世帯が恩恵を受ける。キャッシュカードへの給付には年間5億6600万ドルが必要となる。

金融専門家のワリド・アブ・スレイマン氏によると、SDRは規制されておらず、条件も付けられておらず、無利子であるという。この資金は通常、危機的状況の場合に与えられる。コロナウイルスのためレバノンはこうしたSDRの対象国だったとスレイマン氏は言う。

スレイマン氏はアラブニュースに次のように語った。「リスクのある点としては、この配分はレバノン中央銀行が代表して国が取り扱うということです。政府はレバノン中央銀行と協力して資金を使うことができるのです。つまり、資金が無駄遣いされる可能性があるということです」

スレイマン氏はそのことを、レバノンがEDL(レバノン電力)から2億2500万ドルの貸付を受けたが1ヶ月未満で資金が使い果たされたときのことと比較した。そのとき、レバノン国民は電力が使用できない状態となった。

「この金額は政府ではなく、レバノン中央銀行が受け取ることになるのです」スレイマン氏はそう語る。「これはレバノン国民に収益をもたらすようなプロジェクトに使われるべきです。なぜなら、この借金は国民の資金から返済されるからです」

レバノンのドル準備高はほとんど枯渇している。レバノン中央銀行は8月、燃料の輸入や補助金用の新規の融資枠をこれ以上設けることができなくなったと支配層に伝えた。

キャッシュカードのプラットフォームの登録手続きは水曜日に開始されることになっていた。しかし、レバノンのメディアは「技術的問題」によりプラットフォームの起動が遅れた可能性があると報じ、「カードへの給付金がIMFの貸付金から出されることは保証されていない」と付け加えた。

これは財政難のレバノンでまたしても起こった財政上の失態に対する、ありがちな回答だ。水曜、IMFの配分が悪用される可能性を政治家が警告した。

ヒズボラの国会議員ハッサン・ファドラッラー氏は「必要とされているのは、全ての支出に対する法的な道筋です」と語った。「施行されている法律で定義されている規制に沿った政府の決定対象にもすべきです」

ナジーブ・ミカティ首相が率いる新政権は依然としてハッサン・ディアブ政権からの引き継ぎ作業や、木曜日に内閣が発表する閣僚声明の作成に忙しい。新政権が信任票を得られるかどうかはこの声明にかかっている。

一方、国際連合人道問題調整事務所は先週、レバノンの人口の80%以上が貧困レベル以下に陥っており、推定50%だった去年よりも高い割合となっていると述べた。

レバノン国民はレバノン通貨が闇市場で90%以上もの価値を失ったことで家計のやりくりに苦しんでいる。

IMFの貸付金の利用法に関する法的な道筋の必要性に関し、スレイマン氏は次のように語る。「ドルとの為替レート安定や補助金のような問題に関して法的な道筋は必要ありません。国会は既にキャッシュカードを承認しており、内閣が5億6000万ドル以上の借金をすることを許可しています。つまり、政府は資金が規制されないことを知っていて、IMFの貸付金から利益を得ることができるということです」

しかし、例えば発電所の建設に資金が使われる場合、法的な道筋が必要になるだろう、とスレイマン氏は言う。

経済専門家のエリー・ヤショイ氏によると、IMFの配分は政権樹立とは無関係だという。

ヤショイ氏は「これはミカティ政権に対する最初のテストなのです。したがって、明確な計画とともに慎重に資金を使わねばなりません」と語った。

「レバノン中央銀行はこの配分を自分のものだと考えるべきではありません。この配分はレバノンという国家に属するものであり、政府はそれを国庫に入れ、2022年度の予算に入れる必要があります。この金額をキャッシュカードへの資金給付や、いかなる商品の輸入や補助金にも費やすべきではありません」

レバノンのファランヘ党は次のように警鐘を鳴らす。「現在の政治階層が新たなプロジェクトや選挙の支援を通して貸付金を悪用する可能性があります。支援を口実として、疑惑のあるプロジェクトやカードで支援金を分配するのです」

ファランヘ党によると、ミカティ政権の構成は「同じ支配階級によってコントロールされている限り、そして彼らが優先するのがレバノン国民ではない限り、レバノンを危機から引き上げることができるような改革を行う能力はありません。制度の回復を保証するロードマップは、IMFとの交渉から始まります」

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